Theoretical Sociology

太郎丸博のブログです。研究ノートや雑感などを掲載しています。(このページは太郎丸が自主的に運営しています。京都大学の公式ページではありません。)
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Weberの階級分析における「搾取」的状況
Erik Olin Wright, 2002, "The Shadow of Exploitation in Weber's Class Analysis," American Sociological Review, 67:832-53.

太郎丸ゼミ(20050207)
報告:小浜 雅史


 Weberの階級分析の特徴のひとつに、搾取という概念が見当たらないことがあげられる。Marxの場合は、階級について扱う際に搾取問題に端を発する概念の構築を特徴とする一方で、Weberはライフ・チャンスの問題をもとにして階級概念について論じている。このことを考慮すると、Weberが搾取についての問題を無視してきたというのではなく、むしろ彼の視座はMarxと同じく、資本主義における所有関係の本質と雇用者が直面する問題との密接なつながりにあったのである。ただ、Weberはこの種の問題を搾取という概念を用いて理論化したり、労働力の絞り取られていく状況を階級関係の顕著な特質としなかったのであった。彼はこのような問題を資本主義の経済関係の合理性と現実との緊張関係から生じる技術的な非効率性の一例として捉えていたのであった。  


Weberの業績における階級分析の位置
 彼の一連の業績のなかで、階級は周辺的な問題に過ぎない。というのも、 峽从僂伴匆顱廚鬚澆討盂級についてあまり理論化しておらず、また古代社会の奴隷制にかんする論考などの代表されるWeberの初期の著作ではMarxの焼き直しのためWeber社会学全体のなかで階級分析におけるインパクトが希薄であり、さらにWeberの関心事は社会秩序としてある資本主義の起源・発達・その派生的問題についての分析にある、からである。とはいえ、彼の著作「プロテスタンティズムの倫理と資本主義の精神」では、単に資本主義が世界のダイナミックな力となったということだけではなく、様々な階級に属する人々の指向性のなかに資本主義の精神が刻み込まれてると示されることから、資本主義社会における階級についての問題は、彼にとっては無関係ではないのである。  「経済と社会」のなかで、Weberは階級と身分と政党との区別を、社会的相互作用の領域とそれぞれが主観的アイデンティティや集合行動をひきおこすか否かという点から、行っている(表1)。

 (表1) 「経済と社会」におけるWeberの階級概念の位置

 

 

物理的財

主観的アイデンティティ

集合行動

階級

経済的領域

×

×

身分

コミュナルな領域

×

政党

政治的領域





 このようにWeberは階級と身分との違いを共通のアイデンティティの有無として捉えているが、行為者の動機といった側面が両者の違いと必ずしもいえないと筆者はみている。むしろ、両者には生活の物理的・象徴的状況における不平等を形成するメカニズムに根本的な違いがあるとみなすのである。表2は階級概念と(Weber社会学において重要なテーマとなる)社会的関係の合理化との関係を、社会的権力の資源と社会的関係の合理化の度合いからみたものである。それによると階級は、物理的資源を獲得し用いる手段を統制する高い合理性をそなえもつ社会的関係といえる。

(表2) Weberの合理化に関する分析からみた階級概念の位置

社会的権力の資源

合理的な社会関係

非合理的な社会関係

社会的名誉

実力者の威信

習律的な身分団体

生活の物理的状況

階級

消費団体

権威

官僚制

世襲制





WeberとMarxの階級概念の共通点
・ 階級概念は、ヒエラルキーによる計量的な等級づけではなく、社会的行為者間の相互作用の中から生まれるものである、とみている点。
・ 資産の所有は資本主義における階級分化の根源であるとしている点。
⇒Marxにとっては、階級は生産手段との関係のなかで定義されている。Weberは、労働者にとって市場の相互作用は社会的関係の抑圧的構造を隠蔽した現実と考えている。つまり、資産をもたない労働者が生産手段から分離させられ、資本家へ従順になるように至るともみることができ、これはMarxにも共通する。
・ 階級を、客観的に定義された身分と組織化された社会的行為者という集合と区別している点。 ⇒それぞれの使い方は異なるが、Weberは身分という点から記述する際に「階級的状況」という表現をし、一方Marxは「即時的階級」という表現をする。また、集団という点からでは、Weberは「階級を意識した組織」と表現し、一方Marxは「対峙的階級」という表現をする。両者の用語の表現は異なるが、基本的な考えは類似している。それは構造上定義づけられた階級には、組織化された闘争の形態をうむ傾向をもっており、この両者を概念上区別する必要があったからである。
・ 物理的利害を階級の状況が社会的行為に影響を与えるメカニズムに中枢と捉えている点。
⇒つまり、両者は所有関係により定義された階級の立場が物理的利害に影響を与え、その物理的利害が実際の行動に表面化すると捉えているのである。
・ 階級と身分との関係性について類似の見解をもつ点。
⇒例えば、身分団体が資本主義市場の妨げとなるという見解、身分団体が階級形成にとってかわるアイデンティティ基盤をつくるとするもの、そして資本主義市場が身分団体のもつ影響力を侵食している、という考えが共通しているが、両者とも資本主義により身分団体は衰退し階級が顕著になると考えている。


WeberとMarxの階級概念の決定的な差異
 両者の違いは、階級にかんする所有関係と関わる因果メカニズムにみられる。つまりWeberにとっては、階級により合理的な経済的相互作用(とりわけ市場)のなかで人々のライフ・チャンスがどのように決定づけられているかというのが問題となり、一方Marxにとっては階級によりライフ・チャンスと搾取とがどのように決定されているのかにあるのだ。
 Weberは、市場での合理的な交換をもとにして(互酬的関係)、様々な経済的資源を得ることが人々に経済的なチャンスや不利益をもたらし、ひいてはそれが人々の物理的利害を形成するような状況をライフ・チャンスとみてこれが階級をうむものとした。
 Marxの階級概念においても、ライフ・チャンスは重要性をもつがそれと同じくらい重要なものとして搾取のプロセスがあることに注目している。ライフ・チャンスと搾取の両者が物理的な不平等をつくっていると彼はみていたのである。搾取とは、資本主義のなかで生産をもとにした労働者と資本家との相互作用的関係(監視・支配・従順)において労働者が作り上げた剰余労働を資本化が専有することを意味している。  


Weberにみる搾取的状況
 確かにWeberは搾取の点から階級について論じてはいないが、Marx同様に労働の搾取的状況は描いている。それが労働の動機と経済の技術的効率性の問題である。かれは、「プロテスタンティズムの倫理と資本主義の精神」のなかで、技術的な問題の解決するためには、労働を最大限度にしようとするプロテスタントたちの天職倫理にもとづく一連の態度を労働者が身につけることによってのみ可能であることをいう。
 労働についての中心的問題は、合理化の限界にある。労働者が自らの職務を専有していても所有者が労働による産物を専有していると、技術的合理性は労働を制限しようとするもの・伝統・慣習・契約によって阻まれる。生産というなかで労働者の行う労働を技術的にもっとも効率的なものとするには、労働者を生産手段から引き離すだけでなく労働者の職務・労働プロセスへのあらゆる制御装置をなくす必要がある。Weberにとってはこのような労働の専有は階級関係の問題というよりむしろ経済体制における合理性の程度と形態の問題であったといえる。    


副次的問題
 ここで筆者は二つの問題についてみている。まずひとつは、階級概念と搾取とを結びつけることで階級闘争への理解にどのような変化をもたらすのか、ということである。これについて筆者は、搾取概念によって、階級闘争は単に利益分配のことをさし示すようになるのではなく、搾取する階級が搾取される階級に依存している状況が描き出されるようになり、そしてまたこのような依存的状況があるため搾取される階級の側に搾取に抵抗する力を持ち階級関係を有機的なものにさせる状況が描き出される、という。
 そして二つ目は、搾取がある特定の規範的関係を伴ってどのように階級分析を導入しているか、ということである。これについて、WeberもMarxも階級間の物理的利害と結びついた規範的関係をもとにして階級分析を行っているが、Weberの場合は、とりわけ技術的効率性と合理化に焦点があり、経済的合理性の問題である労働をもとにして階級分析が導入されており、一方Marxの場合には、労働者の利害を中心にして階級分析がなされているといえる。

相続と不平等:理論的探究と経験的証拠
2005/2/7 担当:長松奈美江

Szydlik, Marc, 2004,
"Inheritance and Inequality: theoretical reasoning and Empirical Evidence",
European Sociological Review, 20(1): 31-45.

Introduction

相続の3つの側面
 1) 相続は世代間の関係性に影響を及ぼす
 2) 相続、遺贈は幅広い経済的帰結を生む(ビジネスの継承など)
 3) 相続は、現在と将来の社会的不平等に大きな影響を及ぼし続ける

しかし、相続の問題はこれまであまり研究されてこなかった ← データ制約上の問題
この論文の問い=どの程度まで、社会的不平等は相続によって再生産され、増加させられるのか?(p. 32)
社会階層の3つの次元(regime, gender, social class)に注目

A Theoretical Model of Intergenerational Solidarity (世代間の連帯の理論モデル)

Figure 1
□連帯の3つの次元
 1) functional、2) affectual、3) associational
□連帯の4つのconditional factors
 1) opportunity structure
 2) need structure
 3) family structure … 社会化、family norm
 4) cultural-contextual structures … 社会、経済、税金システムなど

Data

The German Ageing Survey (1996)
 サンプル=4034人(40-85歳)、1/3がEast Germany、2/3がWest
 質問項目=自分やパートナーが相続を受けたか(過去+将来)、誰から/どのくらい(金額)

Empirical Analyses

Figure 2
71%が両親から/37%が義理の両親から

Figure 3
回答者の55%が相続を受ける(12,800 eurosは全体の1/3、51,000 eurosは1/6)
ジェンダー差は顕著でないが、体制や学歴の差は、相続する額が多くなるほど顕著

Table 1(相続の可能性:過去/将来)& Table 2(相続の規模:過去/将来)
 Opportunity Structures (両親がまだ生きているか)
相続の可能性と規模の両方に影響、父親のほうが重要
 Need Structures (相続を必要としているか/潜在的な遺言者が助けを必要としているか)
□University卒は、より大きな可能性と規模の相続を受け取る(past & future)
□不動産所有者/相続の経験者/家庭での手伝いをする者の方が、将来のより大きな可能性と規模の相続を予測する(help, careは可能性のみ)
→ 経済的に恵まれた社会階級が、過去と将来におけるより大きな相続を受け取る
 Family Structure (キョウダイ/子どもの存在)
□3人以上のキョウダイがいる者は、より少ない可能性と規模の相続(past & future)
□子どもがいるほど、過去に相続を受けた可能性を持つ(将来には影響なし)
 Cultural-Contextual Structure
□ジェンダー差はほとんどない
□若い世代ほどより多くの相続の可能性を持つ(好況による可能性)
□東ドイツのほうが、より低い可能性と規模の相続
□東西ドイツの別々のモデル:同じようなパターンを示すが、classとageによる差異が西ドイツのほうが顕著

Conclusion

□相続は不利disadvantagesへの補償をもたらすことはなく、むしろ、親世代の社会的不平等は子世代の社会的不平等をもたらす。そしてこれは、東西両方のドイツでみられる傾向である
→ 相続は、社会的不平等における重要な要因
□東西ドイツの間の不平等は、近い将来は増加し続ける
□男女の間の相続の差はさらに平等になる(キョウダイ数の減少、価値観や態度の変化)

人種、ジェンダー、職場権力
2005.01.17 理論社会学演習
報告:井出草平
James R. Elliott(Tulane University)
Ryan A. Smith(The City University of New York)
AMERICAN SOCIOLOGICAL REVIEW, 2004, VOL. 69 (365-386)


 職場における権力についての論文。女性やマイノリティーは白人男性に比べて昇進する際に不平等がある。また高い地位になればなるほど不平等は大きくなるのではないか? 具体的な不平等の状態を調べる。
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イングランドとウェールズにおける社会関係資本と社会的排除(1972-1999)

理論社会学演習 20041213 報告:米田幸弘

Social Capital and social exclusion in England and Wales(1972-1999)

Yaojun Li, Mike Savage and Andrew Pickles

British Journal of Sociology Vol. No. 54 Issue No. 4 (December 2003)

要約

 社会関係資本の近年の研究は、自発的な組織のメンバーシップにおける趨勢を探究してきた。しかしながら、1970年代以降のUKでは、強力な証拠があまり無く、組織への参加によって社会的な境界が埋まるのか、それとも境界がより強まるのかの分析も無い。本稿では1972年のSMIと1992年と1999年のBHPSのデータを使用し、1972年以降のイングランドとウェールズにおける組織参加の趨勢を探究する。われわれは、30年にわたるイギリスの社会関係資本形成による社会的排除のメカニズムに関心がある。市民参加や異なる種類のアソシエーション的なメンバーシップにたいする社会文化的要因の効果を明らかにするために、二項モデルと多項モデルを使用し、Putnam(2000)による社会関係資本水準の全体的低下という命題と、Hall(1999)による、中産階級の社会関係資本水準の向上および労働者階級の社会関係資本水準の低下という命題を検証する。結果として、重要な社会的文化的な差異とジェンダーによる差異が示された。中産階級においては組織参加が相対的に安定しており、労働者階級においては社会関係資本へのアクセスが急激に低下していた。われわれは、この両方の命題の説明を試みる。

1 はじめに

 多くの社会科学者は、社会関係資本は排除や社会的不平等の様式をつくりだすと論じている。本稿の目的は、社会関係資本への批判的アプローチのための土台を提供することである。我々は、自発的なアソシエーションのメンバーシップが、社会階級やジェンダーの境界とどのように関わっているのか、1970年代以降の社会変動が社会関係資本の配分にどのように影響しているのかを示す。

2 社会関係資本の批判的概念の構築  

 Making Democracy Work(1993)においてPutnamは、自発的なアソシエーションの存在が、北イタリアが南イタリアよりも民主的なバイタリティを有していることの説明になるという議論をおこなった。Putnamは社会関係資本をこう定義する。「相互利益のための協調や協力を促進するようなネットワークや規範、社会的信頼といった社会的組織の特性」(1996: 67)。続く研究Bowling Alone(2000)では、USAに関心をひろげ、インフォーマルなネットワークを含む社会関係資本の定義を使用した。自発的なアソシエーション的メンバーシップやインフォーマルな社交的活動についてのサーベイデータを用い、アメリカ人の生活には関わりあいの解消へとむかう全体的な趨勢があることを主張した。

 Putnamの経験的な研究はひとつのモデルを提供しているが、重要な概念的問題がある。最も重要なのは、社会関係資本が、結びつけるものであると同様に、隔てるものでもありうるという可能性に注意を払っていないことである。ここでブルデューの視点はとりわけ重要である。コールマンや他の理論家と違い、ブルデューは、社会関係資本が一般化された信頼を促進する手段ではなく、特定の社会集団が排他性を維持するための手段であることを強調した。Hall(1999)はUKにおける社会関係資本の研究において、アソシエーション的メンバーシップの階級的差異に注目した。加えて、市民的な組織参加が階級とジェンダーの境界とどの程度関わっているかを明らかにした数多くの文献が存在する(Perry et al. 1992)  

 経験的に判断を下す確固たる方法を欠いているため、社会関係資本が結びつける傾向をもつのか隔てる傾向をもつのかを評価することはむつかしい。本稿では、社会関係資本の様式が、ある階級に特殊なものなのか、それとも階級をこえて広がっているのかを考えることによって、社会関係資本が排他的であるか否かを評価するという方法をとる。さらに、異なる種類のアソシエーション的メンバーシップにたいして、階級的地位や教育資格、社会移動や友人ネットワークが与える影響を検討することによって、社会関係資本形成が社会的排除とかかわる過程を追求する。

3 データと方法  

 2つのデータセットを使用する。1972年のSocial Mobility Inquiry(SMI)と1992年と1999年のBritish Household Panel Survey(BHPS)である。SMIは10,309人の男性サンプルである。BHPSは1990年代にはじまったパネル調査であり約5,000世帯の家族と約10,000人の個人に毎年調査している。どちらのデータも、回答者の社会移動の経路、教育資格、友人との結びつき、アソシエーション的な関わりあいを聞いている。回答者の社会移動の経路は、現在の階級、教育過程を終えた労働市場参入時の階級(初職時階級)、両親の階級の3点で測る。回答者の友人の階級は残念なことに、サービス階級と非サービス階級の2段階しかわからない。教育資格は、専門資格、A/Oレベル、職業資格もしくは資格なしの3段階である。分析は記述統計とロジットモデルを使用する。

4 イングランドとウェールズ(1272-1999)における社会関係資本の社会的差異の分析 ・4-1 社会関係資本形成における階級差とジェンダー差(1992-1999)  

 Table 気ら、社会階級が異なれば異なる市民組織に属する傾向があるというHallの議論は支持される。Table 気房┐気譴疹攀鬚蓮2つの大きなタイプのアソシエーションがあることを示唆する。ひとつは「労働者階級が支配的な」もしくは「労働的な」タイプの関わりあいとしての労働組合や労働者のクラブであり、もうひとつは「サービス階級が支配的な」もしくは「市民的な」タイプの関わりあいとしてのその他すべての組織である。

 ここから、メンバーシップの種類として、「両方に参加」、「労働組織に参加」、「市民組織に参加」、「いずれにも参加していない」という4つの分類をつくり、社会文化的な属性との関連をみる(Table 競僖優襭院法女性は男性よりもあらゆる種類の市民的関わりあいが弱い傾向がある。45%の女性が1992年と1999年において「いずれにも参加していない」型である。男性の場合は92年と99年とでそれぞれ32%と36%である。男性の非参加率の上昇は、「労働組織に参加」型が低下したことによるものである。労働者階級の男性は、サービス階級の男性よりも、「労働組織に参加」型にあてはまる割合が約18ポイント高い。サービス階級の男性は、労働者階級の男性よりも「市民組織に参加」型が約25ポイント、「両方に参加」型が約7ポイント高い。教育とメンバーシップの関係パターンは、階級とメンバーシップの関係に似ている。Table 兇料澗療な印象は、メンバーシップの類型において社会文化的な集団同士で重要な差異があるということである。より恵まれない集団ほど、市民的参加にかかわりを持たず、それゆえ社会関係資本形成のフォーマルな回路へのアクセスが奪われているのである。  

 Table 靴蓮⊆匆駟顕重属性の市民参加への効果を示している。モデル1は、主要効果のみ、モデル2はジェンダーと階級、教育の交互作用効果を含む。モデル3は社会文化的属性と経年との交互作用効果を含むが、有意な効果はみられない。女性は男性よりも市民的アソシエーションにより参加しない傾向にある。市民的関わりあいは99年よりも92年のほうが低い。サービス階級で、高い教育資格か中間の教育資格をもち、サービス階級の家庭でサービス階級の友人を持つ人のほうが市民的アソシエーションに所属する傾向がある。

 メンバーシップの類型は4つあるので、「いずれにも参加していない」を省いた多元ロジットモデルを使用する(Table 検法「労働組織に参加」型のメンバーシップは、1992年から1999年にかけて有意に低下している。女性は男性よりも、「労働組織に参加」「両方に参加」型に属する者が少ないが、「市民組織に参加」型はそうではない。これは、女性のほうが就業してない場合が多いためであり、たとえ働いている場合でも、労働組合が未発達なサービス部門に就業する傾向があるからであろう。高い教育資格をもつ人、サービス階級に友人を持つ人のほうが、「両方に参加」「市民組織に参加」に属する傾向がある。世代間および世代内移動の効果については、「市民組織に参加」型によりあらわれている。労働生活において(世代内)下降移動していると市民組織へ参加する傾向があり、上昇移動していると参加しない傾向がある。労働生活における上昇移動は、両方の組織への参加を低下させる。これらのパターンが示唆するのは、「両方の組織に参加」「市民組織に参加」型は、より恵まれた集団を拠点(home)としているということである。

・4.2 男性の社会関係資本の趨勢(1972-1999)  社会関係資本の趨勢については2つの視点がある。ひとつは、アメリカにかんしてPutnam(1995, 1996, 2000)が展開した社会関係資本の全般的低下という命題である。これがイギリスにも適用できるかどうか興味のあるところである。二つ目の命題は、イギリス社会を対象としたHall(1999)によるもので、社会関係資本の全体的な水準は維持されているが、階級によって違いがあると主張する。教育改革やサービス階級の増大、政府の政策のため、社会関係資本は低下していない。中間階級においては社会関係資本水準が向上しているのにたいし、労働者階級の社会関係資本水準は低下しているとHallは述べる。

 以下では、これらの命題をテストする。Table 垢1972年の男性における階級や教育とメンバーシップの関連を示している。これをTable 兇1999年データと比較すると、市民参加における階級差の趨勢は、PutnamやHallの仮説が予測しなかった方向があらわれている。たとえば、1972年から1999年のあいだに、サービス階級は市民的参加が12ポイント低下しているし、労働者階級は16ポイント低下している。教育と市民参加の関係も似たような方向を示している。  

 PutnamとHallの命題のさらなる検証のために、統計的モデルを推し進めよう。Table 困六毀瓜臆辰離瓮鵐弌璽轡奪廚鰺渋するロジスティック回帰モデルを示している。モデル1と2は、1972年と1999年を分けたパターンを示している。モデル3では、2つのデータを結合し、ダミー変数を使った経年効果を含んでいる。モデル4では、さらに経年と階級、高い教育資格、世代間上昇移動とのあいだの交互作用効果を含んでいる。Table 垢任蓮1972年でさえ、労働者階級がサービス階級よりも市民的かかわりあいが低い傾向にあった。しかし、やや驚いたことに、Table 困離皀妊1では、他の要因を考慮すると、階級の効果は全体として有意でないし、実際には労働者階級にくらべて中間階級が負の有意な効果を持っていた。高い教育資格のみが市民参加に有意な効果を持っていたのである。モデル2に移ると、サービス階級の効果が1972年に有意でなかったものが1999年には有意になっている。モデル3では、他の条件が同じなら、1999年における全体としての市民参加は、1972年よりも有意に低いことが示されている。社会構造の変化からすれば、市民参加の水準の増加を引き起こすと予測されるが、そのような増加は見出されなかった。Hallの予測は我々のデータでは支持されない。モデル4では、サービス階級の効果において有意に正の変化があり、世代間上昇移動の効果において有意な負の変化がみられるが、これらの有意な交互作用効果はそれ自体では重要な変化を示唆していない。

 要するに、1972年から1999年のあいだのアソシエーション的なメンバーシップの分析は、Putnamの示唆した全般的低下でもHallの予期した中産階級の組織参加の上昇とそれにたいする労働階級の組織参加の低下でもない。我々の結果は、そうではなく、サービス階級における組織参加の「たえざる流動性」と、移動効果による減少をともなった労働者階級の組織参加の急激な低下を示している。

5 議論

 イングランドとウェールズにおけるアソシエーション的なメンバーシップのパターンと趨勢を探究してきた。メンバーの階級構成と階級的アイデンティティによって、労働と市民のアソシエーションとに分かれていることが示された。男性も女性もともに、高い社会文化的地位の人ほうが市民的アソシエーションに参加する傾向がある。同じ階級であれば女性よりは男性のほうがよりフォーマルな市民的アソシエーションに参加する傾向がみられる。

 ここ30年のイギリス社会の長期的趨勢は、労働者階級の社会関係資本水準が低下しているのにたいし、サービス階級の組織参加は比較的変化しておらず、「絶えざる流動性」という命題がより正確な状況をあらわしている。  

 これらの変化は、部分的にはサービス階級の増加という良く知られた構造変動とかかわるが、我々はより広い歴史社会的な文脈に位置づけて議論する。1970年代においては、2つの種類の社会関係資本を区別することができるように思われる。2つはそれぞれ異なる階級において強固である。労働組合や労働者のクラブは労働者階級と関わりあっており、他の種類の市民的な関わりあいは中産階級の間でより普通に見出せるものである。中産階級の市民的な関わりあいは「趨勢なき変動」だが、労働者階級の市民的関わりあいは階級規模の変化から予測される以上の低下を示していた。これは、戦後における労働者階級のアイデンティティの形骸化とみなすSavage(2000)の議論とかかわる。Hall(1999)の主張は、完全には支持されないにしても、イギリス社会は「一般的に成功した生活を送り、より関わりあいをもった高度に活動的な市民たちと、政治におけるアソシエーション的な関わりが非常に限られた市民たちとに分裂している」(Hall 1999: 455)という言明は正しく、その傾向が増大していることが見出されたのである。

院ゼミ発表“Working part-time: achieving a successful ‘work-life’ balance?”
Tracey Warren“Working part-time: achieving a successful ‘work-life’ balance?”
BJS 2004 vol55 issue1
「パートタイム労働:仕事と生活のよいバランスを獲得できているのか?」
報告者:阪口祐介 2004/12/13

Introduction(p99〜)
多くの論調では、女性はパートタイム雇用によって、子供の養育や家事をすることができ、加えて、外で働き賃金を得ることも可能になるという。本稿ではこうした労働と家庭のレトリックを越えて、労働と生活をつなぎ合わせた議論を行う。特に、女性の余暇の過ごし方と経済的な状況に注目する。

Working part-time: work-family balancing(p100〜)
 多くの議論では、女性はパートタイム労働をすることで労働と家庭のバランスを獲得できているとされる。労働市場にかかわることで同時に家事の単調さが薄れるというのだ(Myrdal and Klein’s 1956)。一方、女性がパートタイム労働を選ぶのは自発的なものであるか、そこには社会的な不平等あるのではないかという論争は存在する。これに対し、パートタイム雇用が客観的に低い職であることは、逆に低い地位であるがゆえに、家事と仕事の両方からストレスと責任を軽減するとの意見がある(Ginn and Sandall 1997)。より低いレベルの職業であるからこそ、家庭と仕事のバランスを保つことを可能にしているということである。

Work-life balancing: multiple life domains(p102〜)
 いくつかの研究では、家庭と仕事という二領域だけでなく、より多様な生活の領域が探求されている。本稿では、仕事が家事に適合するという唯一の関心を超えて、余暇と経済的な影響に注目する。

Leisure domain
 余暇は人々の生活の質に非常に好ましい重要な影響をもたらすことが報告されており、余暇を仕事と生活のバランスの議論に組み込むことで、日々の生活の総合的な理解が可能になるという議論がある(Such 2001)。

Financial resources domain
 財政的な要素は、生活基準、住宅、教育、福祉などと繋がっており、生活において非常に重要なものであるとされている。また、余暇活動にもお金がかかるわけで、財は女性の仕事と生活のバランスにとって不可欠なものである。
 ここでは女性のパートタイム労働とフルタイム労働を分析することが重要であると思われる。両者の違いは生活とのバランスに大きな影響を与えるのではないだろうか。低賃金であることで、将来的な安心感を失い、ヴァルネラブルな財政的地位に置かれ、長期的には年金の貯蓄の可能性を減退させるかもしれない。
Data sources and considerations(p104〜)
 データはイギリス家庭パネル調査(BHPS)に基づいており、18から59歳の女性労働者の3500サンプルを用いた。専門(経営、会社専門)/事務/マニュアルと、職種を高、中、低のレベルに分割した。
 注意しておくこととして、ここでは「満足についての質問」が使用されるが、主観的な経験を測定することが困難であるという議論はある。さらに、女性のパートタイム雇用者が量的な調査で答える満足は彼女らの実際を反映していないという議論もある。そして、本稿でもそうであるように、生活への満足度は満足に偏るという問題もある。

Work-life balancing: the leisure domain (p106〜)
 ここでは余暇の領域に注目して、女性の労働と生活のバランスについての分析を行う。
 図1(p107)では、余暇生活の使用、時間、社会生活に満足をしている領域で、全体的な生活の満足度が高いことがわかる。これは世帯収入、仕事、健康、家、配偶者(パートナー)という領域より高い。つまり、余暇生活は全般的な生活にとって重要な要素であるのだ。
 ではこの余暇生活の満足度がパートタイム/フルタイム、子の有無といった女性のグループごとにどのような違いがみられるのだろうか。
 図2から4(p108)を見ると、わずかな差を除いてパートタイム/フルタイム、職業レベルごとに、余暇の満足度の違いは見られない。しかし、子供がいて、フルタイムにつくものはとりわけ余暇時間の量の満足度が低い(図2参照)。子供の有無によるこの影響はパートタイムにもあてはまるが、フルタイムでは顕著である。子供を持つと余暇も養育と同時にこなさなければならないということが議論されている。図3、4から、子供を持つと、余暇の使用、社会生活の満足度が低くなっていることがわかる。
 ただ、パートタイム労働者にとって、余暇の時間の満足度がわずかに高いが、より広い領域を映し出す社会生活の満足度では差がなくなっていることは注意が必要である。


Work-life balancing: the financial domain (p110〜)
 ここでは、財に注目して、労働と生活のバランスについての分析を行う。
 財の程度を測るとき、短期的な指標と、長期的な指標を作成する必要がある。そこで、時間給、家庭収入(世帯月収と配偶者月収)、貯蓄、持ち家、年金加入or計画、を指標とした(前の二つが短期)。また、主観的な指標として、日々の家計のやりくりが困難であるかいなかへの回答を指標とした。表2(a)(b)(p111,112)にそれぞれ示されている。
 表2(a)からわかるように、時間給、世帯月収、持ち家率、年金において、パートタイムの方がフルタイムより低い。また、主観的にもパートタイムの財政的な厳しさが見られる(表2b)。さらに、低いレベルの仕事では、財政的により苦しいことがわかる(表2ab)。パートタイムのマニュアルでは、時間給、世帯月収、生活困難度(主観的指標)、貯蓄、持ち家率、年金の領域で最も財政的に厳しいことがわかる。特に貯蓄や持ち家率、年金については長期的な期間で影響が生じる、つまり、年老いたときの生活への厳しい状況が予想されることを意味する。
Work-life balancing: inter-linking leisure and financial domains(p113〜)
 これまで余暇と財が労働生活のバランスに影響を与えることをみてきたが、次は両者をつなぎ合わせてみる。余暇の満足度を従属変数、財を独立変数としてロジスティック回帰モデルに投入した。
 表3(p114)から財政的にうまくいっている人たち(主観的指標)は困難な人たちの2倍以上、余暇に満足をしていることがわかる(オッズ比が0.5であるから)。また、子供を持つことは余暇の満足を下げる強い影響をもっていること、同じ時間を続けることを好まない(hours preferences)人たちは余暇の満足が低いことがわかる。さらに、パートタイムであること、マニュアルであることは余暇の時間においてのみ満足度が高くなるが、マニュアルであることは社会生活への満足を低くさせている。
 最後に、財、余暇、仕事を独立変数として、女性の生活全般への満足度への影響をみる。残念ながら「労働と生活のバランスがとれているか」ということはたずねられておらず、生活全般への満足が直接この指標となるわけではないが、それでも、女性が生活全般をどのように認知するかを概観するために有効だと思われる。
 表4(p116)からわかるように、余暇の満足度の重要性が再確認された。余暇の満足が高いと全体的な生活への満足が大きく増える。特に社会生活へ満足するものはそうでないものに比べて4倍、生活全般に満足している。そして、財政が困難であるほど、生活全般満足度は低いこともわかる。
 非常に興味深いのは、パートナーがいると、特に子供がいると生活全般満足度が非常に高いことである。パートナーがいることは余暇の時間や使用への満足に目立った影響はないが、社会生活や生活全般への満足には重要な影響をもたらす。また、表3で見たように子供がいることは余暇や社会生活への満足を低くするが、女性の生活の満足と強く結びついているのである。女性はよき家族、自分の役割から、余暇の満足は失うが、その他の領域で満足を得ていると思われる。

Conclusion (p117〜)
 本稿では、パートタイムが仕事と家庭のバランスをとるという議論に疑問を呈し、労働と生活のバランスという視点から、広い議論を展開してきた。そこでは、余暇と財の影響が注目され、より低い仕事のパートタイムで財政的に厳しく、社会生活への満足度が低いことなどさまざまな結果が示された。このように、労働と生活の体系は二つの次元だけではなく、多次元、かつ、それぞれの次元が絡まりあうものとしてみていく必要がある。私たちは、労働と生活の均衡の複雑さを理解し、今後、さらに全体的な体系をつかむために、今回示した余暇や財以外の他の領域も視野に入れてゆくことが望まれる。
イギリス社会学における女と男の経歴
理論社会学演習   報告:藤田智博 6 Dec 2004

Jennifer Platt, “Women’s and men’s careers in British sociology”
ジェニファー・プラット、「イギリス社会学における女と男の経歴」

<はじめに>p187-189
 学究生活における女性の地位に関する論文は多い。それらのほとんどは、研究職女性の割合がその分野での女子学生の割合ほどには高くないこと、また女性の割合は学者の身分が上がるにしたがって減少すること、を議論の出発点にしている。が、それらのデータは時代遅れなだけでなく、一時点のみを扱っている。
あるいは、女性の職経験を自伝的な素材などから調査したものもあり、それらは、かなりの成功を手にした女性ですら不利や差別を感じていたことを明かしている。が、そこで報告された事例は代表性があるサンプルとはいえず、また、男性側の経験が報告されてはいない。さらに、個人的な経験と経歴の関係に対して注意が払われていない。
 したがって本論考は、歴史的な枠組み、及び(職歴に影響すると思われる)個人的な諸事情という観点から、第二次世界大戦以来のイギリス社会学における男女の経歴を比較し、それらの相違(あるいは相似)を理解しようというものである。
 戦後、一般的に大学が拡大し、50年代には、社会科学も拡大した。社会学において、それ以前の学卒者もポストも大変少なかったため、とりわけ上級のポストにおいて、候補者不足は著しいものだった。60年代の初期までには、学卒間もない若年層が新しく受け入れられたが、依然としてポストは埋められないままだった。社会学は学生の間でブームになり、大学は拡大し、数少ない潜在的な候補者から(困難を伴いながらも)人員を新たに補充していた。70年代までには社会学者の卵は余るようになっていた(ウィリアムスとブラックストーンによれば72年が転換点)。白書は学生数の減少を予測し、深刻な予算の削減が73-4年にかけて、さらなる削減が80年代前半に行われた。サッチャー政権下で社会科学は失墜させられ、その頃までには大学専門職は収縮したようだった。ゆえに、優れた資格を有する候補者ですら新しい機会はほとんどなかった。これら一連の出来事の結果、社会学分野で年齢構造が圧縮された(若年、壮年が欠如)。80年代から職員を兼ねた学生の割合の減少が目立ち、90年代以降、新しい任命が再開したものの以前ほどの水準には及ばず、さらにRAE に応じて研究が強調されるようになった。
歴史的変動はまた、昇進に対しても影響を与えており、初期の段階では、上級のポストが若い人たちによって占められていたため、後年に就職した人の昇進の障害になった。


<方法>p190-192
〜サンプル〜
 計画は、研究経歴の始まり時点で、男女を対等に比べられるような条件下に置くことである。社会学学科で教員の経験を有する人のみを研究対象にした。対象とする社会学学科を6つに制限し、それらに所属していた人のみをサンプルにした。十分なデータを得るために、歴史のある大きな学科を選択した。これらの基準を潜在的に満たすもののうち、女性に対する待遇の水準がばらつくように学科を選択した。さらに、古い大学と60年代後半創立の新しい大学の双方の学科を含んでいるよう、また地理的なばらつきがあるようサンプルは選択された。
 少なくとも90年代まで、対象とした学科には十分には女性がいなかったものの、それぞれの女性に対して、男性の対照者が探された。対照者の主な選定基準は、使用したリストからわかる日付、学科への任命の地位、学位の種類とした。
〜データ源〜
 使用したデータは、文書とインタビューである。主な文書は、CUYB(イギリス大学年報)であり、対象とした学科の全ての成員の数、ジェンダー、地位、資格を確かめるために用いたが、しばしば地域的な素材も補足として使用した。
 可能な限り多く、特定した男女のペアをインタビューした。
 インタビューは、どのように社会学の道に進むようになったのかをたずねることから始め、それからその後の彼/女らの経歴を年代順に追っていった。

<1950年〜2000年の雇用の傾向>p192-194
上で概観したように労働市場は変動している。60年代以前に研究職に就いた人たちは積極的に雇われていた。60年代後半から70年代初め、多くの任命が、今日の基準からすれば大した公的資格のない(PhDなし、MA未遂など)人々になされていた(p192のインタビューも参照)。今日の若い世代では非常勤から常勤講師までは長く、研究経歴の始まりはしばしば曖昧にされている。
 新規雇用の機会は新しい就職口の数次第である。離職率は、現今のグループの年齢によって異なる。新規雇用における大きな変動があっても、在職集団の特徴に実際の差異が現れるには何年もかかる。新規雇用が何年にも渡ってなされていないとき、年齢構造は歪められ、引退率も異なってくる。このことはまた、潜在的な新規雇用率やすでに在職している人の昇進機会にも影響を与える。
 任命率やそれらの構成のされ方は、学科の特徴や新しく学科のメンバーになった人の経験の質に影響する(p193の、60年代に新設の大学に加わった女性のインタビュー、90年代に新しく任命された女性のインタビュー参照)。
 人口の統計的な軌跡は表機銑靴房┐気譴討い襦新しい任命の数の推移は表兇房┐気譴討り、表靴砲茲譴弌∈濘Υ間の平均は、70年代以来著しく高まっている。
<女、男、学科>p194-197
 表犬鉢垢蓮日付を固定した場合の社会学学科におけるジェンダー構造を示している。男女の割合は、90年代に女性の割合が急増しているもことを除けば一定している。(表困發修譴鯲付けているので参照)。
 任命期間のジェンダーでの比較はというと、平均年数には小さな違いしかない(職の長さの分布は表擦鮖仮)。期間の長さはまた去就によっても影響されるが、学科を離れる主な理由は表爾房┐気譴討り、大学関連の別の仕事のために学科を去るというのが主な理由として挙げられる。仕事を去る理由として、ジェンダーの視点からもっとも顕著な差があるのは家族の理由である。例えば、パートナーのために学科を去った女性のケースが6つあるのに対して、男性のケースはゼロである。

<昇進>p197-201
昇進という点からみた経歴についてはどうだろうか。78年の、ハーシュとモーガンの分析によれば、昇進の機会が71年時の基準で維持されれば、昇進に要する平均年齢は上がる、つまり昇進見込みは減退していくということだった。
後年に任命され、昇進できず、それに時間がかかる人たちは相対的な価値剥奪を経験している(p197のインタビューも参照)。
では、昇進をジェンダーの点から見た場合、男女の相対的地位はどうなっているのだろうか。60年代と70年代に任命された年代層を対象にした。表修蓮単一の学科内における昇進を示しており、男性はわずかながら早く昇進している。単一の学科だけでなく他学科を含めた昇進を考慮すると(表召虜能蕕裡殴テゴリを参照)、2,000年までに大学の上級のポストに就いた男女の差はそれほどない。また、単一の学科内で昇進した人に限った場合で、60年代層と70年代層を比較すると、昇進が制限された70年代層ではジェンダーによる差が大きくなっている。
サンプルに含まれたほとんど誰もが、かれらの経歴があらかじめ計画されていたものではなかったと述べた一方で、90年代層は、経歴は計画の関心事になっている。仕事と生活のバランス配分に関して、出世志向的でないサブグループは、60年代のやや政治化した年代層であり、この層は積極的に政治的な活動に関わっていた(p200のインタビュー参照)。また別の、中年の成員による比較的大きなグループは、出世志向、研究志向であったようである。彼らの人生経験は、全体としての大学における変化の形態と軌を一にしていた。最後に、出世志向の若年もサブグループとして認められる(p201インタビュー参照)。 

<家族とパートナーシップ>p201-205
 女性が職業生活でうまくいかないことやそれを去る理由といったら、主婦役割や子育てに対して仕事が優先されないことであったが、女性の一般的な仕事の形態は変化し、結婚し子供もいる女性が仕事をするのは例外ではなくなっている。この研究のサンプルに含まれた多くの女性も子供を持ちながら仕事を続けている。
 50年代や60年代の(大学の)労働市場の状態によると、彼女らは簡単に仕事復帰できたのだが、それは教師の需要がその程度だったからである。もう少し後になると、それほど簡単にはいかなくなるものの、この年代層は、子育てに影響しないような職業生活を開拓することが可能であり、その点でより若い年代ほどのストレスはないようである(p202の60年代に職についた女性、70年代に結婚し子供を持った女性のインタビューを参照)。
 70年代の風向きの変化は、幾人かの個人生活にも影響を与えた。ある女性は大学内で結婚し、子供を持ったのをきっかけに研究の仕事をあきらめ、子供が学校に通うようになってから、非常勤から経歴を再開した。さらに若い年代には子供を欲しくない人たちもいた(P203の中程のインタビュー参照)。また、子供を持ちながらなんとかやっていこうという女性もおり、彼女の場合、大学が託児所を提供しているとはいえ困難がないわけではなく(p203中程下のインタビューを参照)、シングルマザーの別の女性は、犠牲を払いながらも経歴を優先したために、母親失格だと感じている(p203-204のインタビュー参照)。
 子育ての荷を負ったのは女性だけではなく、協力的な新しい男性の好ましい例もある(p204-205の3つのインタビュー参照)。

<結論>p205-206  (本文の結論はまとまりが悪いため冒頭の要約で代用)
 イギリスの社会学における1950年以来の男女の経歴を比較したところ、しばしば指摘されるほどには男女の経歴は異なっていなかった。女性の経歴においては家族の事情がより顕著であるものの、最終的な到達点では男性とそれほど差はなかったのである。しかし、雇用される女性の割合は時期によって異なっており、両性の経験は歴史的な要因に強く影響されている。歴史的な要因が課す制限内で、個々人はすべて同じ選択をしているわけではなく、そのこともまた経歴に影響していると言える。
Davis-Mooreの階層理論:社会的に構築された古典のライフコース
Robert C. Hauhart, 2003,
“The Davis-Moore Theory of Stratification: The Life Course of a Socially Constructed Classic”,
The American Sociologist, 34(4): 5-24.

2004/11/29
報告 長松奈美江


はじめに

Davis and Moore, 1945, “Some Principles of Stratification”, ASR:
社会的不平等の普遍的必要性を説明する階層の機能理論
1953年のTumin論文〜1970年代:論争→1980年代後半は終結

この論文の目的=論争の歴史を追い、この論文が長年注目されてきたこと(longevity and vitality)を説明

略伝(A Biographical Sketch)

○Kingsley Davis(1908-1997):P. SorokinとT. Parsonsによる指導
○Wilbert E. Moore(1914-1987):T. Parsonsによる指導
※ Davisのほうが、Parsonsにより近い知的あるいは大学組織上のつながりを持つ

1945年論文のとき:両者ともPrinceton University

歴史的文脈における"Some Principles"論争(The "Some Principles" Debate in Historical Context)

1953年のTumin論文→論争
○オリジナル論文への広い注目と、published responsesを招く
○30以上の論文とコメント(3分の2近くがASRかAJS)
○海外の論者からの反応

論争する価値のあるものという認識
アメリカの基礎的な社会学のテキストやシラバスで取り上げられる
…批判のコメントの大部分がネガティブだということを加味すると、印象的

⇒ なぜこの論文が広く普及し、論争を巻き起こし、社会学のなかで深く定着したのか?

社会学の古典を定義する(Defining a Sociological Classic)

Davis-Moore thesisが階層の"classic statement"、もしくは"influential" theoryという同意の存在、階層理論の内部におけるspecial nicheを得る
<背景>
1960年代の社会学の危機
構造‐機能主義と批判的社会理論への分極化、多中心主義的polycentricな構造
※ 社会学における3つのパラダイム
=構造‐機能主義、闘争理論、シンボリック相互作用論

Davis-Moore理論 ⇒ 機能理論の典型(a positive exemplar)
:negative classicとして定義されずに、社会学理論内部において公認された地位を維持

<"Some Principles" の再考("Some Principles" Revisited)>
Davis-Moore論文:機能主義の第一人者であるParsonsに続くもの

ParsonsとDavisによる社会理論における階層の根本的な重要性
⇒ 階層システムを基礎付けるachievementは、solidarityを促進する社会の他のシステム内部にどのように適合するか?

○ 階層の普遍的必要性の説明
階層=motivational sheme
… 地位に社会の成員を分配し、彼らにその地位に結びつく必要な任務を遂行するように説得するために、機能的に必要(functionally necessary)である

批判的反応(Some Principles: The Critical Response)

Tumin(1953)の批判:最初で最も有名
希少な資源の不平等分配が不可欠であり、機能的にpositiveであるということを批判

応答の交換(An Exchange of Replies)

Davis-Moore-Tumin exchange … 高度に抽象的、分析的、経験的ではない

<The 1950s>
Simpson, Buckley, Wrong, Davis, Levyなど
特に、WrongのDavis-Moore理論の位置づけ:現状を弁護し、正当化するもの

Davis-Moore論争:機能主義者を、マルクス主義的な闘争的・批判的な学派の支持者に対峙させる理論的な分岐
+ 世代的な分離(若い社会学者における機能主義への魅力の低下)

<The 1960s>
コメントの増加+経験的テスト
□Huaco、Wesolowskiなど:理論的
□Stinchcombe、Lopreato and Lewis、Harris:Lopreato and Lewisなど:経験的

2つの分岐
 /靴靴っ蠑歸分析と批判
◆〃亳嚇テスト
… これらの間に意味のあるつながりはほとんどない

<The 1970s>
いくつかの論文は議論を広げ、さまざまな経験的評価を適用
Bershady(1970)、Land(パス解析の使用)、Collins(教育資格についての分析)、Abrahamson(1973)(二つの経験的テスト)、Kemper(1976)、Grandjean and Bean(1975)、Broom and Cushing(アメリカ企業の役員報酬の分析)

<The 1980s>
Davis-Moore理論への関心の減少
Milner(1987):不平等を説明するさまざまな理論をまとめる

<The 1990s>
Milner以来、Davis-Moore理論を発展させるものはない

学問領域におけるコンセンサス(The Discipline's Consensus)

<The Theory>
Davis-Moore理論:一般的に、理論としては不十分なものとみなされている
:概念的な曖昧性、術語の不適切性、非歴史性、不確かな想定、文化的な限界、これらの問題に依存した因果説明

<The Empirical Assessment>
経験的な検証 … 彼らの理論のさまざまな評価
□Lopreato and Lewis、Harris、Collins、Broom and Cushing …不支持
□Land、Abrahamson …支持

<Introductory Textbooks>
◆ 1950年代 … 議論はあまりない
◆ 1960年代 … 保留つきであっても評価はrespectfulでpositive
◆ 1970年代 … 批判的で論争的
◆ 1980年代 … 機能主義的見解のclassic statementとしての評価
◆ 1990年代 … 同様のアプローチ

■ 結論(Conclusion)

この論争:社会学において著名なもの。しかし、その遺産は疑わしい価値しか持たないし、科学の進展に対してほとんど何ももたらさない

○ 社会学の教科書 … Davis-Moore理論を影響力のある古典的な定式化として位置づける ⇔ オリジナルの理論の内容やメリットについての議論はわずか
○ 専門的領域 … 専門的なアメリカ社会学において、都合のよい歴史的注釈

Davis-Moore理論のおもしろさとは?
1950〜70年代の社会学において、社会的不平等という事実に関するうんざりする厄介な問いを呼び出したこと
オルタナティブな理論のなさ ⇒ Davis-Moore理論がなかなか消えない理由
社会資本と職業を見つけること:仲介は重要か?
Social Capital and Finding a Job : Do Contacts Matter?
Ted Mouw
American Sociological Review,2003.Vol.68(Dec.868-898)

2004/Nov.22
報告者 保寿宣子

社会資本は、労働市場の成果に作用するか?よい職業を得るには、「誰を知っているか」が重要であると言われている。社会資本におけるネットワーク理論が言うのは、よく結びついている労働者たちは、彼らの社会的紐帯を通して職業に関する情報と影響を与え合い利益を得る、というものである。多くの研究が、社会資本の性質と報酬さらには仕事への威信との明白な関係を発見しているが、労働市場の成果における社会的ネットワークの因果関係については殆ど知られていない。4つのデータセットを用いて労働市場での社会資本の役割の発見を再評価する。因果関係のテストが提案されるのは、次の主張を前提にする場合である。もし社会資本の変数が職業の成果に対して因果関係のある結果を持つならば、社会資本を高い水準で持つ労働者は、他の要素と同じく仕事を見つけるために仲介を使うであろう。結果として、既存の論文に見られる社会資本の効果のほとんどは、労働市場の成果について友人の性質という因果関係のある結果よりも、似た人間同士が友人になるという傾向を反映している。

諸個人のコネクションや紐帯は、無視していいのか、それとも重要なものなのか。今までの研究では両方の主張が出されている。「社会資本」モデルでは、コネクションを使うか使わないかではなく、よいコネクションがどういうものか、それによって手に入る社会的資源の質と量が重要視される。ここで論者は、職業仲介(job contacts)と社会資本の役割についての経験的な証拠を提示しようとする。友人関係の作為的な獲得が意味するのは、労働市場の社会資本の研究の結果から推察される因果関係を注意深く扱わなければならない、ということである。社会資本の変数と労働市場の成果の間にあるポジティブなつながりが、因果関係を持つかどうか、作為的な友情の作る偽者の効果なのかを、明らかにしようとする。特定の社会資本の変数が職業の機会に対して因果関係を持つかどうかを調べるには、これらの変数が仕事を見つけるために仲介を使う確率を増やすかどうかを調べることになる。

・Literature Review
既存研究を三つのカテゴリ(仲介の使用の直接的効果、singlefirm studies、社会資本モデル)に分類して検証する。

直接的効果―幾つかの研究で賃金に対しての効果が見られたが、それも怪しい。
single-firm studies―構造の内部ではコネを持つことは有利に働く。コネを持つことは重要だが、よい職業と収入の不平等さの全体の配分に効果があるわけではない。

Sequential search model(Montgomery1992)
よいコネクションを持つことの労働市場での成果への影響を見るためには、仲介を使うことと賃金との直接的な関係を見るのではなく、労働市場の成果と社会的ネットワークの構成と仕組みの間の関係を見なければならない。

社会資本モデル―社会資本に注目することは、仕事を探している人のもつ社会的ネットワークの性質に注目することである。社会的ネットワーク資源は、職業威信・収入・賃金などの労働社会の成果とポジティブに相互関係を持っている。職業について結ばれた社会的紐帯の数は、付き合いを持った雇用者の数と同じで、応答者の失業期間の長さに対して直接的に効果を持っている。

・Social homophily and Causality
よくつながり合った社会的ネットワークを持つ人は、労働市場でも上手くやっていく。しかし、これは似たような人間同士が友達になるという傾向から導かれる結果ではないのか。
友情の形成過程と社会的ネットワークの選択性の程度−もしくは明らかでない能力ではなく社会資本と相互に関係している

有効な変数−についての推測なしに、労働市場の成果に対しての社会資本の本当の効果を見積もることは難しい。友人の選択と友人の影響の間を分けることにおいてのhomophilyから生じる問題は、仲間効果の研究で長く意識されてきた。

社会的homophilyから導かれる選択バイアスの問題のために、社会資本モデルの結果の解釈は注意を必要とする。論者は労働市場にける社会資本の因果関係についての間接的なテストを試み、「ネットワーク社会資本」によって、他人との紐帯と繋がりのなかに社会資本が存在することを示そうとする。
もし、よいコネクションを持つことが本当に有益であるならば、よくつながり合った個人は、よくつながり合っていない他の個人よりも、その繋がりを通して彼らの職業を手に入れようとするはずである。反対に、因果関係よりもhomophilyを反映する教育や職業威信のようなネットワーク社会資本が頻繁に使われれば、「よくつながりあっていること」で職を得ているとはいえない。

命題1:賃金に対して因果関係を持つネットワーク社会資本にとって、必要ではあるが十分ではない条件は、社会資本変数(a)が賃金に対して、(b)が繋がりを通して職を得る確率に対して、ポジティブな効果を持つことである。

連続調査モデル(the sequential search model)
労働者は続けざまに求人申し出を受け取り、他の仕事を受け取る前に、受けるかやめるかを決めなければならない。「予約賃金(reservation wage)」よりも賃金の申し出が高ければ、労働者は承諾して、収入を最大化する。
拡張調査モデル(the extensive seach model)
労働者は職を問い合わせ、申し出が来るのを待つ。全ての申し出を受け取ってから、一番高い賃金のところを選択する。

諸個人は、職業調査にあたって二つの方法(formal search, informal search)を使う。
また二つの要素(一つの申し出を受ける確率、申し出に対しての賃金配分)が中心にある。

三つの要素(明らかな人的資源、ネットワークの社会資本、「偽者の」社会資本)の区別が重要である。

命題1a:Psc, μsc, 擬似のPsc,もしくは擬似のμscが増加すると、賃金の増加が見込まれる。

命題1b:Psc,もしくはμscが増加すると、職を見つけるために仲介を使う確率が増加する。対称的に、擬似のPsc,もしくは擬似のμscが増加すると、職を得るために仲介を使う確率は不確かな効果(一般的には小さな効果)を持つことになる。

・Theories and Empirical test図1のフローチャートに即して、A〜Oまでの論点について検証する。

A)職業仲介を使うことは、社会資本のレベルに対して内在的であるか?
上に見てきたような職探しモデルの直観を受け入れるかどうか。もし労働者が「予約賃金」を置くこともしくは最もよい申し出を選ぶことによって、賃金や収入を最大化しようとするならば、命題1は仲介によって職を得る確率は労働市場の社会資本における労働者のレベルに依存することになる、結果として、仲介は社会資本のレベルに対して内在的になる。

B)職業仲介を使うことは、社会資本のレベルに対して外在的である。だから職業成果における仲介の効果の直接的なテストが必要である。

C)職業仲介を使うことの効果は、仲介する人の性質に依存するか?
職業仲介を使うことはいつでも有益であるか。ステータスの高い仲介人の場合、よい仕事を得られる。仲介の利点は、仲介人の社会的地位に左右される。

D)仲介を使うことは、一般的に有益である。
仲介の一番の利点は、効果よりも職についての開かれた情報にある。情報はそれを与えてくれる人の性質とは関係なく役に立つものである。

E)仲介の効果についての横断的分析(表2,3)
賃金・失業期間・職業への満足感に対しての仲介の効果の分析
表2→仲介の使用が労働市場の成果に対して影響を与える証拠はない。
表3→仲介の使用は、失業期間の長さに対しては影響を与える。
仲介を使うと、早く職を見つけたり、よりよい支払いの職を得る助けにはならない。

F)低賃金の職がインフォーマルな方法を経由した雇用で行われる傾向のために、労働市場の成果における仲介の効果は下向きのバイアスをかけられてしまうのか?
人的資本を明らかにすることによって十分にコントロールされていないブルーカラーや低賃金の職業の側面があるならば、職業仲介の使用の本当の効果は、バイアスによって下向きにされてしまう。

G)仲介の効果についての長期的な分析(表4)
同じ人間の場合、仲介を使った方が使わない時よりも良い結果になるのか?
積極的な調査をしないで職を見つける労働者は、友人や知人との社会的な相互行為によって見つける。これが本当ならば、仲介は重要である。一方で、熱心に探さない労働者は、現在の職業に満足しているからという説明もある。よりよいつながりを持つ労働者は、探さなくてもよりよい職業を見つけ、高い賃金を得ることができるのだろうか?

H)ステータスの高い仲介人は有益であるが、低い仲介人はそうではない。
本質的には、仲介を使うことは有益であるとはいえないが、ステータスの高い仲介人の場合、望ましい職業を提供してくれる。

I)外在的な社会資本モデル(表5)
仲介人のステータスは、応答者の労働市場の成果に影響を与えるか?
仲介者と応答者の間に流れる同じ職業上の情報の影響は、社会的資源の視点において人工物である。ステータスの高い仲介人を使う応答者は、同じ職業の仲介人を持つ応答者よりも威信の高い職業に就くということはない。
仲介人の高いステータスの効果はあるにしても、その効果が因果を持つか、社会的なhomophilyの結果の選択によるものかはわからない。

J)結果として、仲介を使うことと賃金の間の直接的な関係は不確かである。
もしも仕事を得るために仲介を使うことが社会資本の水準において内在的であることを受け入れるならば、仲介を使うことと賃金の水準の直接的な関係は間違ったものとなる。調査理論モデルによって社会資本と労働市場の成果の関係を説明することになる。

K)社会資本と調査理論モデルの係わり合い
社会資本の水準が高いほど、よい賃金・短い職探しになる。
仲介を使うことと、もしも諸個人が悪い職業の申し出を拒否することによって彼らのかせぎを最大化するならば、職業仲介の本当の効果を覆い隠す賃金の関係を見る。その代わりに、労働市場の成果における社会的ネットワークの性質のもつ効果を見る必要がある。

L)内在的な社会資本モデル(表6,8)
社会的なネットワーク資源は、労働市場の成果に影響を与えるか?
以前の職業を仲介を使うことによって得た割合は、賃金とネガティブな関係を持つ。同じ職業にある友人の割合は、ネットワークを持つ人間の失業や福祉のステータスと同様に、賃金に対して効果はない。幾つかの社会資本の変数は、労働市場の成果に対して相互関係にある。

M)homophilyの問題
応答者の賃金と友人の性質との間の明らかな関係は、因果関係にはない。反対の因果関係と明らかでない変数の影響する選択を反映する。
ネットワークの構成員の教育の平均値は、応答者の賃金にポジティブな効果を持つように思われる。それはネットワークの社会資本の因果的な効果というよりも逆の因果関係や選択による効果の反映であると思われる(表6モデル3、表8モデル3)。

N)因果関係のテスト(表7,8)
もし社会資本が賃金に対して原因となる効果を持つならば、高い水準の社会資本を持つ諸個人は他のものと同じように仲介をより用いるだろう。
以前の職業を仲介を使うことで見つけた場合、仕事を見つけるために仲介を使うことが多い。職業を見つけることについて個人に特定の何かがある。また、仲介を使うことは応答者の3-digit occupationにおける職業の割合によって影響される。
ネットワークの社会資本は、職業ネットワークを通して得られる情報や影響に直接には伝達されない非ネットワークの社会資本のポジティブな効果を上げる。
教育の平均値、雇用水準、社会的ネットワークの構成員の職業上のステータスなどの社会資本は、労働市場の成果に因果的な効果を持たない。持ったとしても、仲介ネットワークの情報や影響を経由しない。

O)ネットワークデータを持つ外在的社会資本モデル(表6,8)
もし仲介が外在的であるという理由でもってNにおける因果関係のテストを否定するならば、社会資本の変数の因果的な効果はただ職を見つけるために仲介が使われた時にだけ働くことになる。仲介の使用による社会資本の相互効果を使うことをテストする。


・Discussion and Conclusion
職を探している人の職業仲介の使用が社会資本の水準に依存しない「直接効果」モデルと「外在的社会資本」モデルは、不十分なものだった(表2〜5)。
内部に仲介者を持つ応募者が外部に持つ者よりも採用されやすいとするsingle-firmに関する最近の研究は刺激的ではあるが、社会全体に当てはめる前に仲介を使うことが個別の労働者を代表するサンプルに対して及ぼす影響を明らかにしなければならない。仲介の利点は、賃金の違いを分析することではわからない。なぜならば、よくつながりあった労働者は彼らの「予約賃金」を上昇させ、そのために受け入れられた職業の申し出の賃金というのは全て高額であり、仲介を経由して見つけられたかどうかは気にされない。
調査モデルの鍵となる視線は、よりよくつながり合う労働者が仕事を見つけるために仲介を使う、ということである。職探しの間に、仲介によって情報や影響が供給され、繋がりを持った労働者は、持たない者よりもよりよい申し出を受け取ることができるからである。社会資本の大きさは賃金に対して効果を持つが、それらは仲介を使う確率に対しての効果と同じものではない。賃金との関係性は擬似的なものか、ネットワークを通して伝達されない社会資本の形をとる。
命題1は必要ではあるが十分な因果関係の条件を持たない。仲介を使う確率と賃金への因果的な効果の間の関係は職探しモデルのパラメーターに依存する。
教育やネットワークの構成員の雇用ステータスといった従来の社会資本の変数は、賃金に対して因果的な効果を持たなかった。
社会的ネットワークによって伝達される情報や影響の作る実際のメカニズムに焦点を当てる必要がある。

仕事の価値観はどこから生じるか
2004年11月08日 理論社会学演習 
報告者:米田幸弘

仕事の価値観はどこから生じるか
――家庭と学校教育、認知能力、ジェンダー――
("Where Job Values Come from: Family and Schooling Background, Cognitive Ability, and Gender,")

CHARLES N. HALABY
American Sociological Review 68 April: 251-278

・1960年代以来、仕事と職業の社会学的研究には2つの伝統がある。
  |楼銘成モデル――仕事の価値観を階層研究の中心に持ってくる際は、仕事の望ましさについての尺度を計量的に構築するか、階層移動パターンを説明するために仕事の価値観を用いることが目的とされてきた。
 ◆]働の社会心理学――社会的出自(経歴)と成人の仕事の価値観との関係をあつかってきた。しかし、社会的出自(経歴)のパラメータ化が不完全なものであり、社会的出自(経歴)が仕事の価値に与える長期的な影響を正確に評価するまでには至っていない。

・本稿では、この2つの研究の流れを部分的に統合する。
・過去の研究では、社会的出自が、大人になってからの職業特性についての判断へとつながる長期的な関係がはっきりとは明らかにされてこなかった。Mortimer and Lorence(1979)、Lindsey and Knox(1984)、Johnson(2002)などはプロスペクティブな研究だが、仕事の価値観にたいして社会的出自(経歴)が果たす長期的な効果を明らかにするにはスパンが短すぎる(高校や大学を出てから7〜12年後)。そこで本稿では、人生の後半における仕事の価値観にたいする社会的出自の効果に適用できるような理論と証拠を提示する。

・理論は2つの部分で構成される。
 1)職業特性を分類するための枠組み――先行研究では、「内的」性質 ⇔ 「外的」利益という枠組みが通常用いられてきた。しかしこの枠組みは、社会的出自との関係において有意味ではないし、成人の地位達成を理解するための分析枠組みにもつながらない。そこで本稿では、Miller and Swanson(1958)の「企業家的」対「官僚的」という図式を採用する。
 2)社会的出自(経歴)が、職業特性への志向を規定する価値にどのように作用するのかを説明するモデル――中核的アイデアとなるのは、仕事についての(企業家/官僚的)価値観が、将来の幸福を確保するために採られる戦略に反映する、というものである。これは、Miller and Swanson(1958)の枠組みをポートフォリオ理論の平均‐分散モデルと結びつけたものであり、リターンの分散(=リスクの高さ)にたいして、リターンの平均率(=収入)をどのくらい重視するかによって具体化されるモデルである。まず、企業家的/官僚的特性は、経済的幸福における価値や幸福を高めるためのリスクの高さにたいする期待のトレードオフの関係に対応する。次に個人は、家族の出自や学校経歴、認知能力、ジェンダーによって、(企業家的か官僚的かという)異なるトレードオフの関係を形成する。

・実証研究は地位達成パラダイムに依拠する。ウィスコンシン大学のパネル調査を利用。

THEORETICAL FRAMEWORK
・職業特性の具体化にあたってはJenks et al.(1988)が有用である。48の職業特性のなかから、労働者の仕事についての主観的評価に重要な効果を持つ14の特性を明らかにしている。本稿では、14特性のうち6つを省き、8つの特性を採用する。収入、職業訓練、仕事の保障(失業のリスク)、仕事の多様性、仕事で汚れないこと、仕事の自律性(厳格な管理からの自由)、仕事の開始と終了(出社と帰宅)にかんする自由裁量、休暇vacationである。理論的争点に合わせるため、休暇vacationを年金(恩給?)pensionで代用し、9つ目の特性として職業評価esteem(他の人が高く評価する職業であるか)を加える。

・「企業家的志向 対 官僚的志向」というMiller and Swansonの図式は、以下のような含みをもつ。企業家的志向は自己充足と労働のコントロール(自律性)を重視することに加えて、収入最大化のためのリスク操作や「成功」のために努力する野心を含んでいる。官僚的志向は安定性と雇用の保証の重視に加えて、低リスクや雇用者との安定的関係、仕事の保障、職業訓練、恩給を好む傾向がある(⇒ Table 1)。

企業家的職業特性    官僚的職業特性
・収入の高さ         ・仕事の保障(失業のリスク)
・仕事の自律性        ・職業訓練の機会
・仕事の多様性        ・年金
・職業評価          ・(仕事で汚れないこと)
・仕事の開始と終了
(出社と帰宅)にかんする自由裁量

・企業家的か官僚的か、という対比で職業特性の志向を順位づけることによって、何が得られるだろうか?
 1)社会的出自(経歴)によって、企業家的/官僚的な職業特性にたいする志向がどのように形成されるのか、という新たに説明すべき論点が生じる。
 2)社会的出自(経歴)やジェンダー、認知能力などの要因がどのように職業特性を構造化するのかについての筋のとおった見通しが、Miller and Swansonの図式によって与えられるのかという論点が生じる。

・地位達成パラダイムは、社会的出自や個人属性から成人の地位達成への効果の伝達に、個人の価値観や志向がどう介在するのかについて目を向けてこなかった。地位達成モデルは、主体が仕事や職業に何を望んでいるかについては何も語らない。このギャップを埋めるための第一歩として、本稿では、地位達成過程において中核となる外生変数と媒介変数が価値志向の差異を産みだすことを示す。この価値志向の差異は、最終的には企業家的職業特性と官僚的職業特性の優先順位として表されるものである(⇒ Figure 1)。Figure 1は、企業家的能力とリスク回避とが、あらゆる独立変数から仕事の価値観への効果を媒介することを示している。


ANALYTICAL APPROACH

・分析に用いられる従属変数は、回答者の職業特性にたいする優先順位である。このようなデータを分析するための好ましい手法は、順位ロジット回帰rank-order logit regressionモデルであろう。これまで仕事の価値観の研究には用いられてこなかった手法である。分析戦略としては、地位達成研究を支配していたアプローチに良く似たものになる。

・ここでの予測は、全ての年齢において、恵まれた出自をもつ者は、恵まれない出自の者に比べてより企業家的志向が強く、官僚的志向が弱いというものである。たとえ全体としては年齢とともに官僚的志向を強めていくとしても、このように言える。


DESCRIPTION AND DATA MEASUREMENT
・データ: ウィスコンシン長期縦断調査(WLS)からのものである。1957年にとられたウィスコンシン高校の卒業生男女10,317人のランダムサンプルにもとづく。1972年と1992-93年には再び回答者に電話でインタビューが行なわれ、とりわけ社会的出自(経歴)や学校教育、仕事について聞いた。1993年には、8500人近い電話回答者のなかから約6900人にたいして、仕事の特性の優先順位をきいた郵送調査によって完了した。社会的、家族的出自や高校のデータは、回答者がおよそ18歳だった1957年からとり、学校教育の終了年は1975年、仕事の価値観のデータは回答者がおよそ53歳になった1993年からとった。
 WLSの長所は、_搬欧箜惺散軌蕕諒竸瑤箸靴討呂瓩辰燭砲覆ぜ榲戮あること、⊃燭縫廛蹈好撻ティブなデザインであること、8什瀑いているか否かにかかわらず、回答者全員に仕事の価値を聞いていること、ぃ吋魁璽曄璽箸諒析に限られているため、年齢にたいする厳密なコントロールがなされていること、である。
 WLSの欠点としては、マイノリティと地域的な差異がほとんど含まれないことと、高校卒業生であるため回答者に教育年数が12年未満の者が存在していないことである。

・変数の尺度(Table 2): 標準的なものを用いるが、2つの例外がある。 嵒禧軌蘿数」と「母教育年数」を足し合わせた。「周囲(=両親・先生・友人)からの進学奨励」の3変数を足し合わせた。∋纏の価値観は、先行研究かと異なり、順位尺度を用いた。基準特性である「高収入」との比較で重要性を評価してもらう方法で回答してもらった(ずっと重要、やや重要、高収入と同じ程度、やや重要度が低い、ずっと重要性が低い)。

ANALYSIS AND FINDING
理論的予測では、全ての外生変数は企業家的特性と正の関連を持つことが期待される。
・ジェンダー: ワルドχ2乗=288であり、係数は予測を裏付ける評価となっている。企業家的職業特性の全ての係数は官僚的なそれを上回っており、男性のほうが企業家的職業特性への志向を強く表明している(⇒ Table 3、1列目)。Table 4は個々の職業特性同士の比較が示されている。Cleanlinessを除外した15のオッズ比のうち12が有意に1以下である(⇒ Table 4、1行目)。
・認知能力: 全体としての検定でχ2乗=647であり、ジェンダーよりも強い効果となっている。企業家的職業特性の全ての係数は官僚的なそれを上回っており、認知能力が高い人ほど企業家的職業への強い志向をもつ。Table 4、2行目のオッズ比はすべて統計的に有意であり、認知能力が2つの志向の差に与える力の大きさを示している。
・家庭の社会経済的出自: Table 3の第2パネルに結果が示されている。χ2統計量は4指標のうち3つが職業の志向に強い全体的効果を持っている。例外は世帯年収である。係数のパターンは予測どおりとなっている。Table 4(3〜5行目)は世帯年収を除く3指標の45のオッズ比は全て予測どおりの方向を示しており、うち37が有意である。(・・・)
・高校のクラス順位と大学進路: 家族や個人、兄弟の変数をコントロールしても全体として有意な効果を持っていた(⇒ Table 5)。高校で勉学ができた者のほうが、企業家的な職業特性を志向している。Table 6もTable 4と同様に職業特性同士の比較が示されている。Table 6の1行目が示すように、クラス順位については、Cleanlinessを除外した15のオッズ比のうち13について予測どおり(=オッズ比が1以下)であり、10が有意であった。同様に、高校で大学進学コースをとっていた者のほうが、そうでない者よりも企業家的な職業特性を志向する。Table 6の2行目は、15のオッズ比すべてが予測どおりの方向(=オッズ比が1以下)を示し、うち10が有意であることを示している。
・周囲(=両親・先生・友人)からの進学奨励: Table 5の第2パネルは、十分に有意であることを示している。高校時代に周囲から大学進学を奨励されていた人のほうが、企業家的な仕事の価値観を表明する傾向にある。Table 6の3行目は、15のオッズ比すべてが予測どおりの方向(=オッズ比が1以下)を示し、うち12が有意である。とりわけ他の特性よりも職業評価への志向を強める。
・教育と職業のアスピレーション: Table 5の3番目のパネルに示されたとおり、どちらも仕事の価値観に有意な効果をもたらす。青年期に高いアスピレーションを持つほど、企業家的な職業特性への志向を強める。しかし教育のアスピレーションのほうがはるかに重要である。Table 6の3行目に示された教育アスピレーションの全てのオッズ比は予測どおり(=1以下)で、うち9が有意である。とりわけ職業評価への志向を強めることが示されている。4行目の職業アスピレーションは全てが予測どおりの方向だが、有意なのは6つだけである。
・教育年数: モデルの最後の変数であり、Table 5の一番下のパネルに示されている。学校教育は、もっとも強い関連を仕事の価値観にたいしてもっている。教育年数が長いほど企業家的特性への志向を強める。Table 6は15のオッズ比すべてが予測どおりの方向でかつ有意であることを示している。とりわけ仕事の開始と終了(出社と帰宅)にかんする自由裁量と職業評価への志向を強める。 (・・・)

・「内的‐外的」軸か、「企業家的‐官僚的」軸か
Table 7の左半分:収入と職業評価=外的利益という帰無仮説をたてたモデル
     右半分:収入と職業評価=企業家的特性という帰無仮説をたてたモデル
⇒ 右半分のほうが有意な変数が少ない(=仮説が棄却される率が低い)
⇒ 収入と職業評価は、内的‐外的軸より企業家的‐官僚的軸で捉える方が適切
・「企業家的‐官僚的」の軸の被説明力: Table 8における自由度1のモデルのカイ2乗値の占める割合が高い ⇒ 「企業家的‐官僚的」の軸の被説明力が高いことを示している。

DISCUSSION AND CONCLUSION
・本稿では、なぜ社会的出自(経歴)における違いが、望ましい仕事とは何かについての異なった信念体系を生むのかを説明する理論を提示した。企業家的志向と官僚的志向のどちらを採用するかは、企業家的な能力とリスクにたいする態度によって決まる。これらは家庭の出自や学校教育、ジェンダー、認知能力によって形成されるのである。
 1)仕事の価値観における違いのもっともおおきな原因は認知能力とジェンダー、学校教育年数である。認知能力の高さは、官僚的志向よりも企業家的志向を増大させる。男性のほうが女性よりも企業家的志向を強く表明する。教育達成の影響はそこまで強力ではないものの、理論と整合的であり、教育年数の長さが企業家的志向を強めている。
 2)他に特筆すべきパターンとしては、まず親の社会経済的地位や教育の高さが、(その子供の)人生の後半における仕事の企業家的志向を高める強い効果をもつことである。
 3)次に、学校教育にかんする知見は、地位達成過程に果たす役割に興味深い側面を付け加える。それは、教育アスピレーションや教育年数が高い職業評価への志向を生むことである。

・以上の個別の知見をこえ、本研究は仕事の価値にたいする社会的出自(経歴)やジェンダー、認知能力の効果についての新しい構造を明らかにした。標準的な「内的‐外的」図式を修正し、仕事の価値観に社会が与える効果についての伝統的見解に挑戦したのである。高収入と職業評価はこれまで、仕事の保障や付加給付のような「外的」特性であり、教育程度や社会階級が低い人の心に訴えるものとされてきた(Kohn and Schooler 1969)。しかしここで示された証拠は、収入と職業評価にたいする志向が、家庭の出自や認知能力、ジェンダー等の有利さがもたらすものであるという点で、自律性や多様性のような「内的」特性への志向と位置を同じくするものであった。この最後の知見は、この研究を過去の研究と異なる様々な方法に照らし、注意深く受けとめられるべきである。

・残された問いとして、仕事の価値観があらわれるプロセスが、ライフサイクルをつうじてどのように分布しているのかという問題がある。また、社会的出自(経歴)が人生の後半における仕事の価値観に直接影響しているのか、それとも職業条件を経由して間接的に仕事の価値観を形成しているのかという問題も決着のつかないまま残されている。

用語
・ロジスティック回帰分析: 従属変数が、「あり」「なし」のような2値変数の場合、連続変数と正規分布の仮定が満たされず、線形重回帰を適用することは不適切とされ、ロジスティック回帰モデルが使用される。ロジスティック回帰では、独立変数ごとにオッズ比を計算する。
・オッズ比: ある事象の起こる確率と起こらない確率の比が、任意の独立変数の変化によってどれだけ変化するかを表したもの。説明変数の値が変化しても事象の発生確率がほとんど変化しない場合、オッズ比は限りなく1に近づく。
・Wald統計量: モデルの有意性検定に使用。回帰係数を標準誤差で除して2乗したもの。χ2分布に従う。ロジスティックモデルの中のp値はWald統計量から求める。
・Duncan's SEI――SEI scores were originally calculated by Otis Dudley Duncan based on NORC's 1947 North-Hatt prestige study and the 1950 U.S. Census. Duncan regressed prestige scores for 45 occupational titles on education and income to produce weights that would predict prestige.
国際標準教育分類 (ISCED)
前々回の授業の時に口走っていたことに関連する投稿です。
高等教育卒業者:女性の割合、5年連続で日本最低 OECD調査

このニュースは高等教育卒業者に占める女性の割合が5年連続で最低になったというものです。それに対して文科省は「日本では女性が短大に進学するケースが多いが、OECDの定義では短大卒が高等教育卒業者に含まれないため」と反論しています。

OECDの定義では短大は高等教育に含まれないようです。

OECDの定義とは何かを調べてみたところ、授業で読んだ論文と同じくISCEDであるようです。
参考リンク:Education at a Glance OECD Indicators 2004 Annex 3: Sources, methods and technical notes(PDF)

ですので、論文580ページあたりで日本は教育の性別分離が激しい的なことが書いてあったと思いますが、そのような数字が出ているのはユネスコの分類法を使ってるからなのではないかと思われます。

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