Theoretical Sociology

太郎丸博のブログです。研究ノートや雑感などを掲載しています。(このページは太郎丸が自主的に運営しています。京都大学の公式ページではありません。)
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制度理解型の数理社会学は、社会科学の共通言語たりうるか

最近は年とったせいか、学会に行ってもあまり刺激を感じないが、思い起こすに、盛山先生にしろ、今田先生にしろ、僕ぐらいの年齢のときにも、かなりアグレッシブだったような気がする。そこにあったのは、理想的な研究がなされないことに対する怒りであると同時に、希望でもある。学界の重鎮が若い院生をいじめるのもいかがなものかと思うが、そういう怒りを失っては書く意欲も失われるし、何より社会学という学問の沈滞につながる。そういうわけで、今回は下記の講演について。

武藤正義,2006,「共通言語としての数理社会学」数理社会学会賞の受賞記念講演、第42回数理社会学会大会(明治学院大学)

数理社会学には、アローの民主制の不可能性定理やセンのリベラル・パラドックスのように、複数の諸制度の論理的な整合性を問う分野がある。例えばセンは、リベラリズムとパレート原理が論理的に両立不可能であると主張する。これは実際の政治制度を記述したわけでも説明したわけでもないが、リベラリズムという思想やそれに沿った政治制度の理解に役立つことは疑うべくもない。ちなみに、このような議論は轟亮によってずいぶん前に「規範社会学の構想」といったタイトルで『年報人間科学』に発表されている(1995〜1999ぐらいの間だったと思う)。

さて、武藤氏はアローやセンのような研究を制度理解型の数理社会学と呼ぶ(ネーミングとしては轟氏の規範社会学のほうがわかりやすいように思える)。そしてこれが社会学の共通言語である(であるべき/となるだろう?)というのが講演の趣旨なのだが、ちゃんと聞いていなかったせいか、にわかには肯定しがたい主張である。

共通言語というのは、今や社会学者は共通の言葉を失い、お互いにコミュニケーションすることなく孤立している現状を憂える土場学や盛山和夫の主張を受けている。つまり、制度理解型の数理社会学が社会学者どおしのコミュニケーションを促す共有知となりうる(なるべき?)であるというのが武藤氏の主張である。

共通言語の持つべき特徴は、

  1. すべての社会学者が知っている(知りうる)
  2. それぞれ異なる専門に共通する一般的な問題や認識の枠組みを提供する
ということではないかと私は思う。ところが制度理解型の研究というのは、社会学ではむしろマイノリティである。すべての社会学者がそれを知るようになるとは、正直考えられない。もちろん可能性としては否定しないが、現実的なシナリオは私には思い浮かばない。また、異なる専門分野に共通する一般的な認識の枠組み(概念)や問題を提供しているかどうかも怪しい。武藤氏は、そのような共通言語の例として、「相互行為、効率、自由、平等、友愛」といった概念をあげているが、このような諸概念と自分の研究の関連が判らないという社会学者も少なくあるまい。例えば、「自由」という概念をキーワードとして用いている社会学者はある程度いるかもしれないが、武藤氏の言う「自由」は、ゲームにおいて戦略が複数ある(選択の余地がある)ということだろう。しかし、このような「自由」は自由ではない、という社会学者もいるだろう。このような対立を単なるすれ違いに終わらせないのが、「共通言語」に期待される役割なのだが、果たしてゲーム理論にそのような力があるかどうかは疑問である。

確かにゲーム理論は経済学を越えて、政治学、生物学、社会学、心理学へと広まり、越境的な研究を数多く生んできた。そういう意味では、確かにゲーム理論は共通言語である。しかし、社会学者の間のディスコミュニケーションは、存在論や認識論、学問論にかかわるもので、もっと根が深い。例えば、構築主義やエスノメソドロジーを研究する人がゲーム理論を共通言語として認めるとは思えない。

実際の言語のダイナミクスを考えればわかるが、エスペラント語は世界の共通言語とはなりえず、英語が現代の事実上の共通語である。その前はフランス語やスペイン語が外交に用いられたわけだが、このような共通語の変遷は、その言語を公用語とする政体の軍事力・政治力・経済力と密接に関連していると考えるのが普通だろう(私は言語に関しては素人なので間違っているかもしれない)。

だとすれば、社会学者に共通言語がある(あるいは今後うまれる)とすれば、それは多くの社会学者をいやおうなく適応させる強い(それは研究としての魅であるだけでなく政治でもあるような)を持ったものでなければなるまい。例えば、そのような共通言語を習得し、踏まえていなければ、論文を投稿しても掲載されないとか、本も出版できないとか、就職できない、といったものでなければ、共通言語とはなりえないであろう。アメリカでこのような共通言語にいちばん近いのは、統計学なのかもしれない。

私自身も社会学の共通言語を待望する者の内の1人であるが、英語の覇権の確立と平行して多くのマイナーな言語が消滅していったように、社会学の共通言語の確立は、現在乱立するマイナーな社会学理論を踏み潰していくことなしには成しえないだろう。

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心理学は、心と呼ばれる様々な働きである心的過程と、それに行動を科学的に探求する学問です。科学的経験主義立場から....
うつ病症状メンタルトレーニング-うつ病症状の克服- | 2006/10/07 3:06 PM
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- | 2007/03/26 11:32 AM
ゲーム理論ゲーム理論(ゲームりろん)とは、複数の主体の存在する状況下での意思決定について研究する、20世紀半ばに確立された数学の一分野であり、「理論」の名を冠してはいるが単一の理論ではなく通常学問の分野や研究のアプローチだとされる。経済学、オペレーショ
経済学のことを知ろう | 2007/10/03 10:41 AM
 

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