Theoretical Sociology

太郎丸博のブログです。研究ノートや雑感などを掲載しています。(このページは太郎丸が自主的に運営しています。京都大学の公式ページではありません。)
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権力はセクシー?
下記の論文をゼミで読んだ。
John Levi Martin, 2005, "Is Power Sexy?," American Journal of Sociology 111(2): 408-446.
内容は今ひとつすっきりしないものだったが、いくつか印象に残ったことがある。

以下はまず要約。性的魅力と権力の関係は、ラディカル・フェミニズムのように精神分析に影響を受けたフェミニズムの議論ではしばしば論じられてきた。しかし、Martinによれば、この種のフェミニズムの議論は日常的な実感以上のものにもとづいていない。そこで、1974年にアメリカ都市部の小規模コミューンのネットワーク・データを使い、権力のある男性(あるいは女性)が "sexy" とみなされているかどうかが分析される。著者は2者関係の権力 (power) と、コンミューンの中での地位 (status) を区別する。コミューン全体の中では、高い地位にあっても、ある相手に対しては、power を持っていないということがありうるというわけである。分析してみると、ある男性が女性に対して power を持っている場合、女性は男性を sexy と感じやすい。しかし、男性がコミューンの中で高い地位を持っていても、そのことは男性の sexy さを高めない。一方、コミューンの中で高い地位にある女性のほうが、男性からは sexy とみなされやすい。2者関係における権力は女性の sexy さとは関係ない。著者によれば、男性はpowerがあるからsexyなのではなく、女性からsexyとみなされることで、男はその女性に対してpowerがあるという錯覚に陥っている可能性があるという。一方、必ずしも弱い、庇護すべき(つまり、男性がその女性に対してpowerを持っている)女性が sexy というわけではなく、コミューンの中で高い地位にあるとみなされている女性のほうが sexy であるというのも、ありそうな話ではある。

読んでいると、1970年代のアメリカで"sexy"という言葉がどういう意味を持ったのか、という点に興味が行った。最近では男性をsexyと形容することも、テレビの中などではしばしばなされているが、1970年代のアメリカでどの程度そういう観念があったのか、そしてその意味はどのようなものなのか、質的な調査などの結果から知りたいと思った。現在イメージするsexyとずれている可能性はある。同性の者をsexy と評価しているケースもけっこうあるようである。また、「私の好みじゃないけど、普通こういう人をsexyっていうよね」という意味でsexyと答えている場合と、「この人は(私にとって性的に)魅力的です」という意味でsexyと答えている場合がおそらく混じってしまっていると思われる。意識の研究はこれだからメンドーだよな、と改めて思った。

このデータではsexyと感じるかどうかだけでなく、相手と「寝るか」も尋ねられていて、これには、2者関係のpowerではなく、コミューンの中での地位が効いている。つまり、地位の高い男性ほど女性と「寝ている」という結果になっている。

分析結果は、社会生物学や交換理論の予測に対する反証となっているが、分析結果全体をうまく説明するようなストーリーがないため、全般に何が言いたいのかはっきりせず、ピンボケという感じになってしまっている。しかし、こういった研究が必要なのは明らかであるにもかかわらず、アメリカでも稀だというのは、やや驚きである。フェミニズムとポストモダニズムの不幸な結婚は、アメリカでもあるのかな、という印象を持った。セクシュアリティの研究者は、「実証主義的に地道にデータなんか集めなくてもいいのよ、そんなものではなにもわからないんだから。」とアメリカでも思っているのだろうか。

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