Theoretical Sociology

太郎丸博のブログです。研究ノートや雑感などを掲載しています。(このページは太郎丸が自主的に運営しています。京都大学の公式ページではありません。)
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搾取される若者たち? バイク便ライダーのエスノグラフィ
搾取される若者たち―バイク便ライダーは見た! 献本していただいたし、謝辞にもなぜか私の名前があったので、下記の本を読んだ感想を書いてみよう。
阿部真大,2006,『搾取される若者たち―バイク便ライダーは見た!』集英社新書.
本書の議論の中心は、バイク便ライダーのように危険で不安定でしんどい職業に、どうして若者がハマるのか、という点にある。まあ、一社でのフィールドワークであそこまで断言してしまっていいのか、とか、本当にそんな因果関係があるのか、といった点に関しては疑問は残るが、単純に資料として価値があるし、少なくとも彼が勤めていた経験からはそう考えられるのだろうし、新書だし、細かいところは読者が批判的に読めばよいので、まあいいか、という感じである。ちょっと軽いが、若者の労働に関心がある方にはお勧めである。

私が気になるのは、タイトルである。搾取される若者たち。正直言ってこれがジェネレーション・ギャップというものか、という感じである。この本のいう「搾取」とは、バイク便ライダーが身体的な苦痛や様々なしんどさに見合う保障や収入を与えられていないことや、いちじるしく危険な行為を「強いられている」ということなのだろう。しかし、これは搾取なのか。マルクス主義階級論をかじったことのある者ならば、これほどナイーブに「搾取」という言葉は使えまい。

社会学としてのマルクス主義は事実上ほとんど解体してしまった。その間接的な影響力は今もあるが、労働価値説や史的唯物論を大上段から擁護する議論は消え去った。マルクス主義で搾取といえば、剰余価値の収奪のことである。しかし、労働価値説が否定されてしまったので、剰余価値も無意味な概念となってしまった。それゆえ「搾取」も無意味化した。

「搾取」とは、本来、労働の対価として与えられるべき様々な保障や報酬が与えられていないことをさす言葉だろう。それゆえ、「本来、労働の対価として与えられるべき保障や報酬」がはっきりしないと、何が搾取なのかもはっきりしない。このあたりは分析的マルクス主義者たちが、規範的な議論へとシフトしていった軌跡を見ているとよくわかる。お気楽な経済学者ならば、「バイク便ライダーは搾取されていない。搾取されていると当事者が思うならば、バイク便ライダーをやめて転職するだろうし、そのような若者が増えれば、バイク便ライダーは人手不足になって賃金や労働条件も改善されるだろう。それにもかかわらず現状の賃金や労働条件で契約するバイク便ライダーが後を絶たないのは、阿部氏が言うほどバイク便ライダーは悲惨ではないし、好きなバイクに乗ることで様々な心理的報酬を得ることで満足しているのだ」と言い張るだろう。つまり、近代経済学的に考えれば、奴隷労働や様々な規制がない状況で、「自由に」労働契約が結ばれている以上、搾取など存在しえない。最近のホワイトカラーエグゼンプションもこの流れにある。

著者の阿部氏にとって、バイク便ライダーが搾取されていることはほとんど議論の余地のない自明なことであり、むしろ不思議なのは、なぜそんな悲惨な仕事を好むのか、というところにある。しかし、上記のような近代経済学者にも、企業の経営者にも、そしておそらくは大半のバイク便ライダーたちにも、阿部氏の言葉は届くまい。「バイク便ライダーは搾取されている」という命題は、自明でもなんでもなく、高度に政治的で、理論的・経験的検討の必要な問題なのである。

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