Theoretical Sociology

太郎丸博のブログです。研究ノートや雑感などを掲載しています。(このページは太郎丸が自主的に運営しています。京都大学の公式ページではありません。)
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書評の書き方
私が編集した『フリーターとニートの社会学』の書評が某誌に掲載されたので読んでみたががっかりだった。まあ、書いてあることはだいたい正しいのだが、「はずれくじを引いた」「こんな書評書いて何の意味があるんだろう?」というのが私の正直な感想である。

書評では、「1章では....、2章では....、3章では、.....」といった調子で最後の章まで各章の簡単な内容紹介がなされ、その後、著者の文句が並ぶ。第1に、調査データの詳細が掲載されておらず、詳細が掲載されている調査の報告書を参照するよう述べられていないこと(調査報告書のURLは掲載されており、書評者はちゃんと報告書にたどり着いているのだが)。第2にサンプルが高学歴に偏っており、そのことが分析結果をゆがめている可能性があること。第3に、章ごとに「フリーター」や「ニート」の定義が異なっていること。最後におざなりなフォローが入って終わりである。

おそらく、書評者の印象としては、驚くような結果は多くなく、驚くような結果もあったが、それはあまり認めたくない事実だったのだろう。学歴の偏りを強調するのは、分析結果を認めたくないからだろう。ちなみに学歴の効果はコントロールしているので、高学歴が多くても分析結果にはほとんど影響はないはずである。書評者はそれを知っていながら、あえて「クロス表がゆがむ」などと文句をつけるのである。クロス表は、関連する変数をすべてコントロールできない場合が多いので、理想的なサンプルがえられたとしても、2変数間の直接的な関連をとらえられないという意味で、多かれ少なかれ歪んでいる。クロス表が歪んでいるかもしれないからこそ、回帰分析などの統計手法を用いるのである。それを知りつつ難癖をつけるのは、結果を認めたくないという心理が働いていると邪推される。

書評に書いてあるような指摘は、例えば投稿論文の審査結果のコメントとしてはよいだろう。万が一改訂版を作る機会があれば、コメントに沿って書き直そうと思う。しかし、これは書評としては最低の部類に入る。報告書への参照があるかどうかなど、大半の読者にとってはどうでもよいことである。学歴のゆがみも、上記のように大きな問題とは思われないし、書評者もそれを知っている。すなわち、どうでもいい重箱の隅をつつくような書評だということである。

3つのコメントの中で一番ましなコメントは、最後のフリーター概念の揺らぎについてである。本の中でも書いたように、概念の定義に揺らぎがあるのは、別にかまわないと思っている。書評者はそれが気に入らないようだが、なぜだめなのか、書いてあることが曖昧でよくわからない。確かに学術用語の意味に揺らぎがあると、コミュニケーションに支障をきたす。そういう意味では問題なのだが、現時点で無理やり定義を決めても生産性は低いだろう。書評者は、この問題をフリーターやニートの多様性の問題と重ねて論じているが、これは問題を混同している。フリーターやニートが多様でも、総称としてフリーターやニートという概念は使えるかもしれないからである。例えば、ひとくちに男性とか女性といっても、その内実はかなり多様である。だからといって男性とか女性といった概念に意味がないということにはならない。

ついでに言っておくと、本を紹介するときに「1章では....、2章では....、3章では、.....」といった単調な文章を並べるのは、書評としては最低のやり方である。そんなものを読んでも面白くもなんともない。読者がこの問題の専門家でなければ、各章の細かな内容など知りたいとは思わないだろうし、読者が専門家なら自分で読んで各章の内容を確かめるだろう。書評者としては、私情を交えず客観的に内容を紹介しようとしているのだろうが、読者が知りたいのは、重要なポイントであり、重要なポイントの選択には主観的な評価が混入する。そういう書評のほうがいい書評だと思う。私なら「1章では....、2章では....、」といった紹介が始まった時点で、もうその書評は読まない。

いい書評というのは、その本が扱っている問題の地平を読者に伝え、それに対する著者たちのアプローチを伝えるものだと思う。同じ地平で論争しても仕方がない(こちらにはこうしてブログに書くぐらいしか反論の余地もないのだし)。学術誌の書評の場合、書評の依頼を受けた後にその本を読み始めることがあるので、「読んでみました。気に入りませんでした。」ということはある。しかし、それをそのまま書くのでは物書きとしては情けない。その本の持つポテンシャリティを最大限に引き出すぐらいのつもりで書評は書きたいものである。新聞の書評の場合、紙幅が非常に限られているので、なかなか難しいと思うが、学術誌の書評は長く書けるんだから、それぐらいの気概で書くべきである。そうでないと、「読んでみました。気に入りませんでした(あるいは気に入りました)。」風のつまらない書評になってしまう。書評とは一般読者のための読み物である。論文とは違う。しかし、それゆえに論文では追求できないような問題を追求することもできるのである。

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ブログで【書評】を書くのが難しい。そもそも、書評ってなんだ?読書感想文とどうちがうんだ?ということで、Googleで検索して、参考になった情報をまとめてみた。書評の書き方→シ....
Marketing on the Edge | 2009/10/01 1:49 AM
 

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