Theoretical Sociology

太郎丸博のブログです。研究ノートや雑感などを掲載しています。(このページは太郎丸が自主的に運営しています。京都大学の公式ページではありません。)
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『不安定雇用という虚像―パート・フリーター・派遣の実像』を批判する

挑戦的なタイトルだが読む価値なし。この本の内容は著者たちが行った調査をもとに、1パート, 2 フリーター, 3 派遣 の労働条件や満足度などについて報告するもので、調査報告書のような本である。特に理論や仮説を提示するわけでもなく、データの解説が続くので決して面白い読み物とはいえないが、ざっと見た感じでは変な調査結果が出ているとは思えない。派遣についてきちんとまとめている点には好感が持てる。

私が気に入らないのはこの本のタイトルである。『不安定雇用という虚像―パート・フリーター・派遣の実像』というからには、パート・フリーター・派遣は安定した職だということを証明するのかと思ったが、そうはなっていない。一般に「非正規雇用が不安定だ」という場合、「正規雇用に比べると不安定だ」といっているわけだが、この本は両者を比較していない。パート・フリーター・派遣にはかなり多様な人々が含まれているというのは著者たちの言うとおりであり、それはこの本からも学べる点である。しかし、「パート・フリーター・派遣は安定している」とは言えない。実際、著者たちもそんなことは言っていない。そもそも雇用が「安定している」とはどういうことなのかすら論じられていない。それゆえ、勤続年数とか満足度とかが示されても、だから「安定している」といえるわけもなく、無味乾燥な記述が続くだけである。羊頭狗肉というのはこの文脈では適切ではないが、いずれにせよ看板に偽りがある。出版業界ではでたらめなタイトルを付けるのがまかり通っているが、やっぱりやりすぎだろう。

また、パート・フリーター・派遣には多様な人々が含まれている以上、やはり不安定な雇用状況で働く人々も含まれているのである。逆に正規雇用といっても不安定な状況で働いている人は(著者たちが暗に主張しているように)存在する。問題はそのような不安定な人々の割合が多いのは、正規雇用と非正規雇用のどちらか、ということだろう。もしも同程度ならば、非正規雇用だけを特別に援助するような政策は適切でなかろう。しかし、著者たちはそんな難しい問題は避けて通るのである。

「自発」的なパート労働者がかなりたくさんおり、仕事満足度も高いことは以前からよく知られていたことであるが、そのような先行研究への参照はまったく存在せず、しかも「自発」性の意味についても昔から批判があるが、それも無視(無知なのか?)である。自分たちが書いた論文への参照が若干あるだけで、とうてい学術書とはいえない。

独自の仮説などを提示せずにナマに近いデータを示すというやり方は、一見、客観的で価値中立的に見えるかもしれないが、それはイデオロギー性とは関係ない。また、調査報告書に過ぎないので、簡単に書ける「手抜き」の作品なのである。これまでの研究の蓄積を一切無視する姿勢は、とうてい学問的とはいえない。非正規雇用に関しての調査報告はすでにかなり出ているので、これから本当に必要な研究は大胆な仮説の提示ではないだろうか。

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