Theoretical Sociology

太郎丸博のブログです。研究ノートや雑感などを掲載しています。(このページは太郎丸が自主的に運営しています。京都大学の公式ページではありません。)
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フィールドワークの「技法」? あるいは調査法のハウツー化をめぐって

授業の準備で読んでみた本。おそらくフィールドワークの経験者、あるいはまさにフィールドワークにとりかかろうとしている人にとっては学ぶところの多い本ではないだろうか。私のような安楽椅子型の研究者が読んでも得るところはあまりないような気はするが、フィールドノートのとり方や聞き取りについては、なるほどと思わされるところが多くおもしろく読めた。この本だったか、前著だったか忘れたが、佐藤氏のフィールドワークのテキストに関する書評を読んだことがあるのだが、その内容がとても印象的であった。その書評者によれば、佐藤氏のフィールドワーク本はよくできているが、フィールドワークとはそのようなハウツー化を受け付けないようなものであり、あるとき「雷に打たれたような」ひらめきを得るものなのであって、本質的な問題を教科書で教えるのは無理なのであるという。私はこの書評を読んで、「それはちがうだろう?」と思ったものである。

どのような研究でも同じであるが、何らかのひらめきを得ることは研究を進める上で非常に重要であるが、ひらめきをえる方法までハウツー化することは難しい(もっとも最近ではひらめきをえるハウツーらしきものもあるようだが)。だからといってハウツー化が必要ないということにはならない。ハウツー化できない部分というのは常に残るが(そしてそういう部分が重要なのだが)、ハウツー化できる部分もかなりあるのである。たしかに「習うより慣れろ」というのは一面の真理であるが、調査の場合、不慣れな学生や研究者が何も勉強せずにフィールドにいって当事者に迷惑をかけたり不愉快な思いをさせたりするような事態は避けるべきである。本を読めばわかるようなことならば、あらかじめ読んで理解しておいたほうが、取り返しのつかないトラブルや失敗を減らすことができる。私自身も大学や大学院でちゃんとした教育を受けた記憶があまりないのだが、だからといって自分もろくに教育せずに他人のテキストにイチャモンをつける輩を見ると片腹痛い。「習うより慣れろ」などといって他人のテキストにイチャモンをつけるような連中はさっさと大学教員を辞めるべきである。習う必要がないならば教員など不要である。図書館があればそれで十分だろう。何もないところでハウツー化を行うということは、高度に反省的な営みであり、知的創造性を要する作業である。この本を読むと、佐藤氏の教育・研究に対する真摯な姿勢が伝わってきて好感度が高い。

しかし、質的調査法に関する不満はますます強まってしまった。つまり書いてある内容は、私のような安楽椅子型の社会学者から見ても、「当然そうでしょう?」といいたくなるような内容が多く、フィールドワークに固有の特別な「技法」と言えるほどのものではないように思えるものが多い。「漸次構造化」といったトピックも、分野を問わず多くの研究者が似たようなことをやっているように思える。タイトルの「技法」はおそらく techniques ではなく arts なのであろうが、量的調査であれば、尺度構成法やサンプリングに関する理論とノウハウがあり、習いがいがあるのに比べると、物足りない感じがするのである。

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