Theoretical Sociology

太郎丸博のブログです。研究ノートや雑感などを掲載しています。(このページは太郎丸が自主的に運営しています。京都大学の公式ページではありません。)
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女性の雇用と結婚の利益: 結婚の専門化・交易モデル批判

Valerie K. Oppenheimer, 1997, "Women's Employment and the Gains to Marriage: The Specialisation and Trading Model of Marriage," Annual Review of Sociology, Vol.23 pp.431-453.
女性の雇用が広がると、未婚率や離婚率が上がるという議論を批判したレビュー論文。パーソンズ流の機能主義やベッカーの人的資本論では、女性が家事に専念して男性が金を稼ぐという性別分業が、通常は合理的であると考えられている。しかし、女性の人的資本が高まり、女性の雇用が広がると、女性にとって結婚の相対的な魅力が下がるため、未婚率や離婚率が上がるという議論がある。米国でも通俗的なレベルではかなり支持されているらしい。しかし、これまでの研究成果を総合すると、この種の議論(結婚の専門化・交易モデル)は誤っていると著者は言う。結婚の専門化・交易モデルは、戦後、既婚女性の雇用率と離婚率があがり、未婚率と離婚率が上がっていることをその論拠としているが、まず、この種の時系列データの相関は、ミクロレベルの理論の根拠としては薄弱である。また、米国の場合、未婚率は必ずしも上昇していない。単に晩婚化が進んでるだけなので、結婚の専門化・交易モデルはデータから支持されない。1950-60年ごろに比べると、1990年代では晩婚化が進んでいるのは確かだが、19世紀末ごろもかなり平均初婚年齢が高かったという研究もあり、平均初婚年齢は必ずしも一本調子で上がっているわけではない。むしろ、平均初婚年齢は波動しており、1950-60年ごろが例外的に低いという見方もできるという。さらに個票データを使った多変量解析では、女性の雇用が未婚率を高めるという結果は存在せず、むしろ逆の結果(地位の高い女性、収入の多い女性のほうが結婚しやすい)が出ている。離婚の多変量解析については、結婚の専門化・交易モデルを支持する結果と否定する結果の両方があるが、著者は否定的な論調である。理論的に考えても、結婚の専門化・交易モデルは疑わしいと著者は言う。このモデルは、夫婦の専門分化が合理的であるというが、夫の収入に全面的に依存することは、リスクが高い。夫が失業したり死んだりする可能性があるからである。世帯の規模が大きければ、夫が死んでも代わりに稼いでくれる男が世帯の中にいるであろうから、性別分業のリスクも小さくなるだろうが、米国のような規模の小さい家族では、これはあてはまらない。米国では、かつては子供が働いて父親の収入を補うことが一般的であったが、現代では、子供の人的資本に投資することが一般的になったため、妻が働くのが合理的になったという見方もできるという。

私としては、なぜ女性の社会的地位が高いほうが結婚しやすいのか知りたい。下層では上層よりも、同棲や一時的な性関係が多くなりやすいのだろうか。あるいは、女性も経済力があるほうが好まれるということなのだろうか。あるいは一定以上の経済水準に達しないと結婚は難しいということなのだろうか。

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