Theoretical Sociology

太郎丸博のブログです。研究ノートや雑感などを掲載しています。(このページは太郎丸が自主的に運営しています。京都大学の公式ページではありません。)
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研究計画と構想発表における Research Question の設定: 修論構想を読んで

ちょっと前に、修士2年の有志が修士論文の構想発表会を自主的にやっていて、そのときのレジュメを全部渡されてコメントしてくれと言われたのだが、私の専門とは異なる論文ばかりで、とくに具体的なアドバイスはないのだが、一つだけコメントすることを思いついたので書いておく。みなそれなりに勉強してはいるようだが、構想発表のやり方をあまり理解していないようである。構想発表では、要するに研究計画を発表することが期待されている(少なくとも私は研究計画を期待している)わけだが、研究計画の書き方が分かっていない人がほとんどのようである。研究計画では、研究の意義と Research Question 、それにこたえる仮説、および、その仮説を検証するための方法と、実現の見込みや今後のスケジュールなどを書くのがふつうである。科研などの研究費の申請書でもこういったことを書くことが多い。今回もらったレジュメでは、「こんな調査をやります」とか、「私はこう思います」といったことは書いてあるのだが、研究の意義や Research Question があまり書かれていない、あるいは書かれていてもあまり説得力がないものばかりであった。確かに 研究の意義や Research Question がちゃんと書けていない論文でも『社会学評論』などに載っているので、もしかしたら誤解しているのかもしれないが(まあ『評論』なんか読んでいる院生はあまりいないようだが)、私の経験則からいえば、そういった論文はすべからくダメだ。

 社会学はトマス・クーンの言う通常科学とはほど遠い状態にあるため、何が研究すべきテーマなのかがはっきりしない。そこで、論文の冒頭ではっきりと Research Question を設定し、それがいかに社会学にとって重要な問いなのかを論じる必要がある。しかし、今回の修論構想ではこれがなされていない。あるいはなされていても、なぜそのような問題を問う必要があるのか書かれていない、あるいは書かれていても説得力がない。例えば、マックス・ヴェーバーの『プロテスタンティズムの倫理と資本主義の精神』は問題設定がうまくなされている好例である。ヴェーバーは、「なぜほかならぬ西欧で近代資本主義が発生したのか」という Research Question を設定する。そして、資本主義の発生がいかに不可思議な現象なのかを論じることで、この Research Question がいかに興味深い問題なのかを示してみせる。ヴェーバーによれば、利潤追求行為は前近代社会ではしばしば倫理的に禁止されている。利潤を追求する資本家が現れても、その資本家の工場でお金のために一生懸命働こうという労働者を調達することは難しいという。こういった事業は前近代社会の共同体の妨害に会って、失敗に追い込まれることが多い。それゆえ、資本主義が発達するためには、損得を度外視して共同体と戦い、事業を成功させようとする資本家や労働者が必要となるし、資本主義の勃興期には、実際にそのような人々が多くいて、彼らが資本主義を生みだしたのだとヴェーバーは言う。しかし、損得を度外視して利潤を追求するというのは矛盾している。なぜこのようなことが起きたのか? というわけである。現代のわれわれの観点から見れば、利潤を追求する人々がいて、会社を興したり、一生懸命働いたりするのは何の不思議もないが、前近代社会のコンテクストにおいてみると、不思議な現象なのである。このような議論によって、ヴェーバーは 自分の Research Question がいかに興味深い問題であり、議論するに値するものなのかを示して見せるのである。

 このような Research Question に答えるために調査が必要であれば調査すればよいが、まず調査の計画ありき、では、何のために調査しようとしているのか、わからない。また、このような Research Question は難しすぎて答が出ないようなものではダメだが、かといって簡単すぎてもいけない。例えば、「自発的に野宿生活者になった者は存在するか? 」という Research Question は簡単すぎる。「自発的」という言葉の定義にもよるが、探せば自発的に野宿生活者になった人も一人ぐらいは必ず見つかるに違いないからである。それらしい事例もすでにいくつか報告されているし。しかし、「自発的に野宿生活者になった者の割合はどの程度か? 」という問いならば、かなり答えるのは難しい。野宿生活者からランダム・サンプルを得ることはほとんど不可能だからである。それゆえチャレンジする甲斐もあるもあるのだが、これはかなりの難問なのでビギナーにはお勧めしない。

 何が社会学的に価値のある Research Question なのかは決して自明ではなく、一般論として答えるのはなかなか難しい。自分の関心のあるテーマをよく勉強するしかない。ただ最近の英語の雑誌論文を読むことをお勧めしておく。英語圏では、最近は、こういった価値のある Research Question の設定というルールがかなり徹底されているので、お手本となるような論文にめぐり合う確率も高いだろう。本はいろいろな性質のものがあるし、分量が多いので問いと答えの対応が分かりにくい場合もあるので、雑誌論文がお勧めである。

 Research Question の設定は論文を書く上で、おそらく最も難しい部分なので、M2の院生がちゃんとできなくても不思議はないし、責める気もないが、何かコメントするとしたら、やはりこの点だろう。自分の専門ならば、具体的に「こういう問題設定にしたらいい」というアドヴァイスができるのだが、どんな先行研究があるのかよく知らない分野だとお手上げである。

 Research Question の設定については、「論文の書き方」とか「研究計画の立て方」の類のハウツー本を読めば書いてあるので、読んだことのない人はちゃんと読むべし。お勧めは下記の2冊。

評価:
谷口 勇,ウンベルト エーコ
而立書房
¥ 1,995
(1991-02)
コメント:ハウツー本だが、読み物としても面白い。

評価:
鹿島 茂
文藝春秋
¥ 735
(2003-01)
コメント:問題設定についてのセンスがおもしろいというか、私と違っていて新鮮。

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コメント
from: 非査読系   2009/08/18 2:41 PM
すべからくダメ、
は正しい日本語ではありません。
from: -   2013/01/12 10:40 PM
管理者の承認待ちコメントです。
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