Theoretical Sociology

太郎丸博のブログです。研究ノートや雑感などを掲載しています。(このページは太郎丸が自主的に運営しています。京都大学の公式ページではありません。)
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プラグマティストのハーバマス批判

Dmitri N. Shalin, 1992, "Critical Theory and the Pragmatist Challenge," American Journal of Sociology, Vol.98 No.2, pp.237-279.
 プラグマティストの観点からハーバマスのコミュニケーション的行為の理論を4点にわたって批判した論文。カントから初期のフランクフルト学派をへて、ハーバマスへとつながる理性と啓蒙をめぐる議論の流れをおさえたうえで、以下の4点を指摘している(実際には6つあるが、最後の2つは最初の4つから演繹できそうな議論なので割愛)。
  1. Embodied Reasonableness 非認知的側面の無視: 認知的側面とは理性的にとらえられるような思惟全般を指す言葉のようである。感情、コンテクスト、非反省的経験 (nonreflectional experience) が非認知的側面としてあげられている。コミュニケーション的行為の理論は、討議を通して非反省的思惟を徹底的に批判することを重要視するので、我々が理性的に思考しようとする際のコンテクストとなっている非認知的なことがらを無視するか、最小化しようとしがちである。しかし、われわれは日常生活のすべてを批判的検討の俎上にあげることはできない。それゆえ、そのような非認知的側面を無視するのではなく、むしろその不可欠性を積極的に認め、批判によって最小化する以外の対処法を考えるべきであると、Shalin はいう。
  2. Indeterminate Reality 不確実性の軽視: 徹底的な討議を通して合理的な知をもとめるのがコミュニケーション的行為であるが、その前提として、理想的な発話状況において討議がなされれば、合意と確実な知が得られるという想定がある。しかし、プラグマティストの世界観にしたがえば、この世界は不確実性に満ちており、仮に理想的発話状況で討議をしても、確実な知を得られないことはしばしばあるはずである。これは将来学問が極限まで発達すれば消去しうるような不確実性ではなく、どんなに学問が発展しても不確実性は残ると Shalin はいう。
  3. Pragmatic Certainty 実践の軽視: コミュニケーション的行為の理論では、形式論理的な整合性や理想的な発話状況での合意が重視されるが、プラグマティストは実践を重視する。実際の議論の場は理想的な発話状況ではない場合が多く、そのような場では形式論理よりもレトリックが重要かもしれない。また、単に何が正しいかについて合意することがプラグマティストの目的ではなく、その知識と行為を通して世界を多少なりとも変えることこそがプラグマティストの目的である。
  4. Reasonable Dissent 合意しないことの価値の無視: コミュニケーション的行為の理論では、合意こそが至上の目的であるかのごとく議論されているが、合意に到達しないことにも価値がある場合がある。例えば、芸術作品の解釈について、われわれは合意する必要があるのか、というよりも解釈に多様性があったほうがよりよい状態ではないのか、と Shalin はいう。また、上記の本質的な不確実性を前提に考えれば、合意のない状態のほうが、健全かもしれない。
 ハーバマスがミードを引用し、プラグマティズムから影響を受けているのはよく知られている。Shalin もハーバマスを全面的に否定するのではなく、かなりの部分でハーバマスの議論には同意できることを強調している。しかし、上記のような違いは重要であり、不確実性や合意しないことの重要性を見落とすと、思想弾圧や多様性の抑圧につながりかねない、という危惧が Shalin にはあるようである。

 Shalin の気持ちはわかるが、杞憂というものであろう。幸い(というより不幸にも?)社会学において、多様性やマイノリティを抑圧するような「合意」などほとんどないように思えるし、むしろ不確実性が大きすぎて、合意らしい合意がほとんど得られないが社会学の現状のように私は思う。ただし、実践の重視や非認知的側面との付き合い方を積極的に言語化していくという方向性はよいと思う。いずれにせよ、合意を求めるのか、意見の多様性を求めるのかは、かなりコンテクストに依存しているので、具体的なコンテクストを抜きにして、ハーバマスを批判してもあまり意味がないように感じた。プラグマティストのくせに、論文はプラグマティックではない、という遂行的矛盾に Shalin はおちいっている、とハーバマスの支持者ならば反論するだろう。コンテクストを見据えた政治的な発言という点でいえば、ハーバマスのほうがずっとプラグマティックであるという見方もできよう。

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