Theoretical Sociology

太郎丸博のブログです。研究ノートや雑感などを掲載しています。(このページは太郎丸が自主的に運営しています。京都大学の公式ページではありません。)
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世界政体の社会構造: 政府間ネットワークのトレンド分析 1820―2000

Jason Beckfield, 2010, "The Social Structure of the World Polity," American Journal of Sociology, Vol.115 No.4, pp.1018-1068.
政府間ネットワーク構造の推移を1820〜2000年にわたって記述することを通して、世界政体理論 (world polity theory) の間接的な検証を試みた論文。世界政体理論は日本ではほとんど知られていないが、英語圏では非常に注目され、活発な論争がなされている理論である。この理論は、デュルケム理論を国家(あるいは政府)間関係に拡張した理論である。世界政体理論によれば、国家は、他国との関係を持つようになるほど、政策面で他国に同調する傾向が強まる。人権、民主主義、環境政策などの政策は、国連などの国際組織を通して国家に伝播すると考えられる。世界政体とは、このような国家ないしは政府が作る世界社会のことであると考えられる。このような国家間のネットワークに深く埋め込まれている国家ほど国際協調路線をとりやすいということである。このような傾向が生じるのは、世界政体に一定の規範的な拘束力が生じるからであると考えられている。すなわち、集合意識のようなものが世界レベルでも存在するというわけである。

さらに歴史的に見れば、政治、経済の場面で多くの国々が国際的な関係を持つ機会を持てば持つほど、世界政体の持つ規範的な拘束力は強くなっていくと考えられる。それゆえグローバル化が進む今日、世界政体はより強い拘束力を持つに至っていると考えられる。しかし、このような世界政体理論は、政府間ネットワークの構造についてほとんど関心を払ってこなかった。確かに国連が世界政体のプラットフォームを提供すると考えられ、大半の国家は国連に加盟しているのであるが、実際には国連以外の政府間組織(Inter-Governmental Network: IGO. 例えば ASEAN や OECD)の果たす役割も無視できない。このような IGO の数は増加し続けており、その重要性は増していると考えられる。そこで、国家/政府と IGO の 二部 (two-mode/bipartite) ネットワークの構造が、世界政体理論の予測に合致するような方向に変化しているのかどうかを、Beckfield は検討する必要があるという。

世界政体論は、国家が国際関係の中でいわば社会化される(フーコー好きならば規律化されるというかも)と考えるので、世界政体は未発達の状態から、より理想的な形へと近づいていくと考えられる。理想的な形の世界政体とは、

  1. ネットワークの密度が高く、
  2. ネットワークが脱中心化 (decentralized) しており(つまり各国の中心性が同程度である)、
  3. ネットワークの凝集性が強く (cohesive)( Moody and White (2003)の私の紹介 を参照)、
  4. 複数のクラスターに分かれていない
ようなネットワーク構造を持っているはずなので、歴史的にはこのような方向へと政府間ネットワークも変化してきていると、世界政体理論からは予測される。

実際のデータで1820年から2000年の間の変化を見ると、国家の数は19世紀の間は50前後であったが、第二次大戦後に急増し、2000年には190になっている(国家の定義はp.1030を参照)。二部ネットワークから国家間隣接行列を作って密度を計算すれば、国家間ネットワークの密度は19世紀の初頭には 0.1 程度であったのが、20世紀に入ってからは0.9以上で、高い密度になっている。しかし、同様にして IGO の隣接行列から密度を計算すると、密度は減少傾向にある。19世紀にはほとんど 1 であった IGO 間ネットワークの密度は、2000年には 0.59 にまで減少している。このような相反する傾向がみられるのは、大半の国が国連などに加盟することで、国家間ネットワークの密度は高まったが、ASEAN, EU, OPECなど、特定の国だけが相互排他的に加盟する IGO が増えたせいで、IGO 間ネットワークの密度は逆に低くなったという。それゆえ、国家間ネットワークは脱中心化したが、IGO 間ネットワークは逆に中心化の程度を強めた。2部ネットワークの半径(ノード間の平均パス長)も20世紀以降、漸増傾向が続いている。スモール・ワールドの程度を示す指標 (small world Q) は19世紀末から、1990年まで減少しているが、1990年に比べると、2000年は増加しているので、トレンドに変化があったのかもしれない。最後に地域(ヨーロッパ、アジア、アフリカ、北米、南米など)ブロックごとにネットワークが分割され、ブロック内では密度が 1 で、ブロック間には一切つながりがないというモデルと実際のネットワークの類似度を見ると、第二次世界大戦の前はでこぼこしてはっきりした傾向はみられないが、その後は類似度は増している、つまり、地域ごとに別れたネットワークが強まっているという。Beckfield はこれを regionalization, fragmentation と呼んでいる。このような傾向は、世界政体理論の予測とは異なっており、世界政体という単一の社会に国家が直接統合されるというイメージはやや単純化されており、むしろ ASEAN や G8 など、相互に排他的な IGO の増加が近年の特徴であると考えられる。

世界政体理論はネットワーク構造にはあまり着目してこなかったので、そういう意味では新しい論文である。ただ国家間ネットワークの密度は2000年で 0.97 あるわけだし、長期的にはこの値は増加してきたわけだから、必ずしも世界政体理論が間違っていたとは言えないだろう。IGO 間ネットワークの中心化の程度が高まっているといっても、国連の周りにそれほど中心性の高くない IGO が存在しているという構図なので、世界政体理論にそれほど反しているともいえない。ただし、特定の地域の国家だけが所属する IGO の増加は必ずしも世界政体論の予測と一致しないというのはその通りなのだろう。一般にグローバル化は日本の社会学でもよく言及されるのだが、マクロレベルで世界にどのような変化が起きたのか、ちゃんと述べた研究は意外に少ない。世界政体理論は、因果の向きの解釈など疑わしい部分はあるのだが、世界レベルでの社会構造について正面から取り組んでいるという点では非常に興味深い研究といえよう。

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コメント
from: ColorlessGreen   2011/10/24 2:46 PM
はじめましてー。通りがかりに拝見いたしました。自分は国際政治学・国際法を専門としているのですが、ここで紹介されている論文と問題意識が近いように思え、興味深かったので、コメントを失礼いたします。。。

国際機構における多様なアクターの参加が規範の生成を促し、また、いわば「教育」機能を果たすことによって規範伝播に寄与する…というのは国際機構論も共有するところの知見であり、(社会学の素養をあいにく私は持っておりませんが)学際的研究の可能性を感じました。

ただ、国際政治において規範が特定の役割をはたす、ということから、「集合意識のようなものが世界レベルでも存在する」であるとか「世界政体」が存在すると考えることの妥当性について、いかがお考えでしょうか?

後段で、ネットワークをregionalization, fragmentationとして特徴づけて留保がつけられていますが、「政体」という概念化は、そうした国際社会の多様性、分断の自覚とは反対の試みであるようにも見えるのですが…。

(なお、regionalization, fragmentationは、いずれも国際法の用語としても用いられていますが、どういう関係があるのでしょう…?)

そうした中での相互作用に着目するならば、ネットワークという切り口も面白いのかなと思うのですが、諸地域や諸分野を包摂する《世界政体》なる概念の有用性はどこに見出せるのか、疑問に思いましたので、お手すきの際にでもお考えを伺えれば幸甚です。

長々とすみません(´・ω・`)
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