Theoretical Sociology

太郎丸博のブログです。研究ノートや雑感などを掲載しています。(このページは太郎丸が自主的に運営しています。京都大学の公式ページではありません。)
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ノルウェーにおける地方から都市への移住による収入に対する効果

Johan Fredrik Rye, 2006, "Leaving the countryside: An analysis of rural-to-urban migration and long-term capital accumulation," Acta Sociologica, Vol.49 No.1, pp.47-65.
論文のタイトルは「地方から都市への移住と長期資本蓄積の分析」だが、実際には30歳時の収入と学歴を分析した論文。地方から都市への移住は、平均的には地位の上昇に寄与することが多いとされる。しかし、細かく見ると、都市への移住者は上層と下層に二極化する傾向があるという説もある。つまり、移住者は、エリート層と都市下層に参入しやすいという説もある。そこで、この論文では性別と出身階層別にこのような効果について検討する。Rye はブルデューのフレーム・ワークにご執心で、収入を経済資本、学歴を文化資本と解釈し、30歳時の収入と学歴を、それらの資本の「蓄積」と見なしている。

データはセンサスなどいくつかのデータをマージしたもので、回顧データではなくパネルである。サンプルはノルウェーの地方部に15歳時に住んでいた1965年生まれの男女で、かれらの父親の学歴と収入、移住のパターンが予測変数で、そして30歳時(1995年)の収入と学歴が結果変数である。移住パターンは、30歳時に都市部に住んでいれば「都市移住者」、準都市部に住んでいれば「準都市移住者」、出生地である地方部とは別の地方部に住んでいれば「地方移住者」、20歳時か25歳時に出生地とは別の土地に住んでいたが30歳時には自分の生まれた地方部に戻ってきていれば「帰還者」、同じ所に住んでいれば「非移住者」とする。データが地方出身者に限定されている点に留意が必要である。

移住は最終学歴を達成した後かもしれないし、その前かもしれないので、このデータの移住と学歴の間の因果関係は不明である。ただ当然高学歴者のほうが移住しやすい(それも都市部に移住しやすい)という傾向ははっきりしている。また、都市での二極化が起こっていると Rye は言うのだが数字が示されていないので信用できない。分析は記述的なものにとどまっているが、30歳時の収入についての分析結果は以下のとおりである(Table 3, 4 より作成)。

最初の図は都市ほど賃金が高いことを反映しているだけであるが、帰還者が非移住者よりもやや賃金が低いことが注目される。その下の図では、移住者では父学歴が賃金を高く押し上げているのに対して、非移住者ではそれほどでもないという点である。これはおそらく本人の学歴を媒介した効果と思われる。父の収入はあまり影響力がないことがわかる。Rye はブルデュー的な解釈をあれこれしているのであるが、空虚な感は否めない。面白いのは、父学歴が(それはおそらくは本人学歴が)都市でだけ収入を押し上げている点である。都市が地位上昇のためのエスカレーターとして機能すると言っても、特に高学歴層でそのような傾向が強いことを示唆している。日本でも同じような傾向があるのだろうか。

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