Theoretical Sociology

太郎丸博のブログです。研究ノートや雑感などを掲載しています。(このページは太郎丸が自主的に運営しています。京都大学の公式ページではありません。)
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脱工業化を説明する:経済的豊かさ、生産性の上昇、そしてグローバル化はどの程度製造業の雇用を減少させるのか

Christopher Kollmeyer, 2009, "Explaining Deindustrialization: How Affluence, Productivity Growth, and Globalization Diminish Manufacturing Employment," American Journal of Sociology, Vol.114 No.6, pp.1644-1674.
脱工業化を規定する要因を、OECD 18 ヶ国(1970-2003年)のデータを使って分析した論文。脱工業化を規定する要因として 3つのものがこれまで指摘されてきた。
  1. 経済的豊かさ。人々が経済的に豊かになると、食料や工業製品だけでなく、サービスに対する需要が高まる。豊かさが高まるにつれて工業製品への需要の増加は頭打ちになるが、サービスに対する需要はもっと伸び続けるので、脱工業化が起きる。
  2. 生産性向上の不均等。工業分野では継続的に生産性の向上がなされてきたが、サービス分野では工業分野ほど生産性が向上してことなかった。このため、工業分野ではますます少ない労働者で多くの製品を製造できるのに対して、サービス分野ではそのようなことがあまり起きない。そのため、工業分野で働く労働者は減少し、サービス分野で働く労働者が増える。
  3. グローバル化。グローバル化が進むと、主に工場が人件費の高い国から安い国に移転され、人件費の高い国では脱工業化が進む。
こういった仮説はすでに提唱されており、それなりにデータによって支持されているが、すべての変数を同時にモデルに投入して、それぞれの相対的な影響力の大きさを検証した研究は存在していなかったと Kollmeyer はいう。そこで、日本を含むOECD 18 ヶ国(1970-2003年)のデータを使い、固定効果モデルで上記の 3要因の効果を推定している。ただし、ただの固定効果モデルではなく、近隣の地域間の誤差相関と、時系列の誤差相関を仮定して GLS でパラメータを推定するという込み入ったモデルになっている。

経済的豊かさは一人当たり GDP で測定され、二乗項と三乗項もモデルに投入されている。これらはすべて 0.1% 水準で有意で、経済的に豊かになるとしばらくは製造業で働く労働者の比率が高まるが、ある点を超えると減少に転じる。ただしその減少率はしだいに下がり、底打ちするような傾向が出ているという。生産性向上の不均等さも仮説通りマイナスの有意な効果を持っているが、その効果はどこかで頭打ちになる(二乗項がマイナスの有意な値を示している)。グローバル化に関しては 5つの指標が用いられており、海外への直接投資 (FDI) 以外は仮説通りの有意な結果を得ている。すなわち、輸入が多く輸出が少ないほど、脱工業化が進むが、輸入と輸出の効果は、相手国が北の経済発展した国の場合よりも、南の発展途上国の場合のほうが強力である。 FDI が有意でないのは、FDI の相手国のほとんどが経済発展した国であるためであると Kollmeyer は述べている。

これらの3種類の要因の脱工業化への相対的な効果の大きさを調べると、経済的豊かさが 34% 、生産性向上の不均等が 15%、グローバル化が 22% 、コントロール変数として投入してあった失業率が 15%、その他の要因が 13% で、豊かさの効果が最も大きく、グローバル化がそれに次いでいる。ただし、これはグローバル化が、豊かさや生産性向上の不均等を媒介としておよぼす媒介効果も、グローバル化の効果とみなした場合の推定値なので、グローバル化の効果を過大に推定している可能性はある。もしも直接効果だけでみれば、グローバル化の効果は、13% 程度になる。その他の要因とは残差によるもので、具体的に何なのかはわからないのだが、アウトソーシングの効果ではないかと Kollmeyer は述べている。すなわち、工場では、製造に直接従事している人と、それに付随するサービス業務に従事している人がいる。例えば運転手や事務職員、清掃人などが考えられる。これらの人々は工場を経営する企業に直接雇用されていたため、製造業で働く労働者としてカウントされていたが、次第にアウトソーシングされて、それ専門の企業に雇用されるようになってきたので、非製造業で働く労働者としてカウントされるようになったということである。これで 13% もの変化を説明できるのかどうかは不明である。それから失業率をコントロール変数に入れる理屈が理解できなかった。脱工業化が失業率を高めるという方向の因果関係は理解できるが、失業率が高まったせいで脱工業化が進むということがあるのだろうか。

脱工業化に関する議論とは、かつては社会全体の先行きを占う大問題だったのだが、今では産業構造に関する一つの問題に格下げされてしまったのかな、という印象を受けた。どんな社会でも一定の豊かさに達すれば脱工業化しはじめるという主張は、今ではかなりの説得力を持って受け入れられているので、細かな違いに論点が移っているということなのだろう。

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