Theoretical Sociology

太郎丸博のブログです。研究ノートや雑感などを掲載しています。(このページは太郎丸が自主的に運営しています。京都大学の公式ページではありません。)
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グローバルな民主主義の台頭に対する政府間ネットワークの影響

Magnus Thor Torfason and Paul Ingram, 2010, "The Global Rise of Democracy: A Network Account," American Sociological Review, Vol.75 No.3, pp.355-377.
グローバルな民主主義の台頭に対する政府間ネットワークの影響を検討した論文。民主主義の台頭に関して、政府の間の伝播プロセスが想定されることがしばしばある。世界政体理論 (world polity theory) に従えば、世界文化、世界規範といったものの影響ということであろうし、もっと単純に模倣がなされているという見方も可能であろう。いずれにせよ、複数の政府の間で相互に影響があり、それが国の民主化の程度に影響を及ぼすと考えられる。しかし、そのような伝播のプロセスは、ランダム・マッチングで起こるとは考えにくい。つまり、ランダムに模倣する相手国を選んで模倣しているのではなく、近隣諸国や関係の密接な国や経済的に成功している国が模倣されやすいと考えられる。そこで、政府間組織 (Inter-Governmental Organization: IGO) を通した政府間ネットワークを通して民主主義は伝播するという仮説を Torfason and Ingram はたてる。この仮説を検証するために1815−2000年の187カ国のパネル・データを分析している。分析の単位は state-year で、被説明変数は民主化の程度を示す順序尺度(の階差)で、順序プロビット分析を行っている。モデルは複雑なのだが、コントロール変数などを除外したモデルは以下のように書ける。
probit(Yi, t - Yi, t-1) = β0 + β1 ΣZij,t-1(Yj, t-1 - Yi, t-1)
Yi, tは時点 t における i という国の民主化の程度であり、Zij,t-1 は t - 1 時点での i 国と j 国のIGOネットワークを通した関係の強さ(共通して加盟している IGO の数)である。つまり、「他国との関係の強さ×他国との民主化の程度の差」に比例して、民主化が進むと考えられている。例えば、自国よりも民主的な国と、より多く、より強い関係を持つと、その国は民主化しやすい、とこのモデルは仮定している。IGO ネットワーク以外にも経済関係や相手国の経済力や軍事力などさまざまな要因をモデルに投入しているが、けっきょく上記のβ1は有意で、IGO ネットワークを通した民主主義の伝播仮説は支持されている。また単純に加盟している IGO の数も有意になっており、世界文化に触れるほど民主化していくという世界政体理論の予測にも適合的な結果となっている。また近隣国からの影響、旧宗主国から旧植民地国への影響も有意であった。軍事力のある国からの影響力も有意にはなっていたが、多重共線性が強すぎるため、推定結果は信用できない。経済力やそれぞれのタイプのネットワークにおける中心性も説明変数として投入されていたが、いずれも有意ではなかった。分析には通常のプロビット分析だけでなく、傾向スコア・マッチングや GMM なども用いているが、いずれの方法で推定しても、多少の係数の大きさの変化はあるものの、上記の基本的な結果に変わりはなかった。

今年の後期はこの種の論文を何本か読んできたのでいささか食傷気味であるが、仮説そのものは説得力があるし、分析結果もそれなりに信用できるように思う。気になるのはデータの精度ぐらいである。最近はこういった政府間の模倣がよく指摘されているわけだが、それにネットワーク分析を絡めるというところが、新しいのであろう。ただ、このモデルの複雑さは何とかならないのだろうか。より適切な推定を求めて新しいモデルや推定法が次々に導入されるし、それを否定することはできないのだが、もっとシンプルな議論に私としてはあこがれるのである。

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