Theoretical Sociology

太郎丸博のブログです。研究ノートや雑感などを掲載しています。(このページは太郎丸が自主的に運営しています。京都大学の公式ページではありません。)
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『インダストリアリズム』『産業社会のゆくえ:収斂か拡散か』

Clark Kerr, John T. Dunlop, Frederick Harris Harbison and Charles Andrew Myers, 1960, Industrialism and Industrial Man: The Problem of Labor and Management in Econmic Growth, Harvard University Press.
Clark Kerr, 1983, The Future of Industrial Societies: Convergence or Continuing Diversity?, Harvard University Press.
階層論ではインダストリアリズムというと決まって参照される本とその後の議論をフォローした本。後者のほうがわかりやすい。工業化した社会には共通の社会構造があり、工業化が進むにつれて社会構造のいくつかの側面で一定の収斂が進むとした研究。基本的にはマルクス主義の史的唯物論に対する反論である。史的唯物論では封建制から資本主義、資本主義から社会主義への単線的かつ不可逆的な移行が想定されていたが、Kerr たちによれば、社会主義も資本主義も工業化した社会であることから来る共通の社会構造を持っており、いわば機能的な等価物である。生産性の増加により全般的に豊かな社会になり、高学歴化が進み、社会移動が増大するので、階級間の対立はやわらげられる。また、経営者をはじめとしたエリート層の重要性は決して衰えないので、階級の廃絶というマルクスの夢は資本主義の社会でも社会主義の社会でも実現されることはないという。こういった収斂はすべての側面で進むというわけではなく、主に労使関係や教育や科学技術分野での収斂が強調されている。こういった収斂は、政策や組織管理の方法が伝播することによって起こると想定されているが、選択的に受容されることには明確な言及はないものの、単純に時間の経過とともに伝播するのではなく、エリートの利害や国内外の政治状況に依存することははっきりと認められている。

Kerr (1983=1984) によると、1960年当時、収斂理論を主張していたのは、Kerr たちだけではなく、他にもいろいろなヴァージョンがあったという。もちろんマルクス主義者はすべての社会はいずれ共産主義社会へと至ると主張していたし、ハイエクは逆に社会主義は一時的な形態で、いずれは市場経済へ移行すると信じていたという。また、Jan Tinbergen は Optimum Regime と彼が呼ぶ混合経済(久しぶりに聞く言葉なので最近の若い人は知らないかもしれないが、資本主義と社会主義のミックスを混合経済と呼んでいた)へとすべての社会がいつかたどりつくと主張していたという。他にもヴェーバーの流れをくむ合理化論(Kerr はプラグマティズムによる収斂論と呼んでいる)もあった。アーロン、ベル、マンハイム、ガルブレイス、リプセット、パーソンズ、リースマン、シルズ、ダーレンドルフといった人々はすべてこの範疇に分類されている。また、産業化論の先駆けとしてサン・シモンが参照されている点も興味深かった。Kerr たちの議論とアーロンやベルたちの議論の間にどんな違いがあるのか不明だが、Kerr は、アーロン達が考えるプラグマティックな政策の中身が曖昧で検証しようがないと批判しているので、社会学者のあいまいな論述に腹を立てていたことだけは確かなようである。

とうぜんマルクス主義者は産業化論を否定したが、産業化論を含む収斂理論に否定的な研究は当時から他にも存在していたようである。個々の社会は、異なる文化、歴史、イデオロギー、価値観、を持っているので、必ずしも GDP 成長率の最大化を目指すわけではない。つまり、想定される Optimum Regime は社会によって異なる、さらに言い換えれば、ゴールが違うという批判がなされたという。このような論者としてバートラム・ウルフとウィルバート・ムーアの名前が挙がっている。

当然ポスト・モダニストも産業化論のような大きな物語を批判しただろうし、文化相対主義者も産業化論には否定的だったはずである。さらに収斂を示す明確な証拠がなかったため、産業化論は経験的な命題とイデオロギーの混淆物と見なされていたのではないだろうか(すくなくとも私の学生時代の印象はそうだった)。その後、ソ連型社会主義が崩壊し、グローバル化論という新しい装いのもとに産業化論=収斂理論がリバイバルしたことは記憶に新しい。

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