Theoretical Sociology

太郎丸博のブログです。研究ノートや雑感などを掲載しています。(このページは太郎丸が自主的に運営しています。京都大学の公式ページではありません。)
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高校生のアルバイトは非行を抑止するか

山本 功, 2005, 「高校生のアルバイトは非行を抑止するか」『犯罪社会学研究』30: 138-150.
高校生のアルバイトが非行に及ぼす影響を検討した論文。ハーシのボンド理論によると合法的な活動への「巻き込み(involvement)」が逸脱を抑止するという。クラブ活動や勉学などがわかりやすいが、アルバイトも合法的な活動なので、これに積極的に取り組んでいれば高校生であっても非行に走りにくくなるということが予測される。ただしハーシの研究でも中高生の就労やデートが非行を抑止するという結果は得られておらず、ハーシは高校生の就労やデートは合法的活動への巻き込み以外にも多様な要因と絡まりあっているため、指標として適切でないと示唆しているそうである。このような仮説が日本の高校生に当てはまるかどうかを山本は検証している。

最初のデータは、2002年に6府県からそれぞれ 3つ(計 18校)の高校を選び、それらの高校 2年生のクラスの中から3クラス(計54クラス)抽出し、合計 1509人のサンプルを得ている。非行(飲酒、喫煙、万引き)の自己申告を目的変数、性別、クラブ活動、大学進学アスピレーション、アルバイト(すべて二値変数)を予測変数としてロジスティック回帰分析をすると、アルバイトをしている学生のほうが、exp(1.24)=3.5倍のオッズで非行経験率が高い。また、同様の分析を最初のデータを一般群、警察に検挙された犯罪少年で高校2年生のサンプルを非行群として、行うと、やはり exp(0.27)=1.3倍のオッズで、アルバイトをしている学生のほうが、有意に非行群になりやすいという結果が得られている。ちなみに、他の変数の効果もすべて有意で、大学進学を希望しておらず、部活動もしておらず、男性であるほうが、非行に走りやすいという結果が一貫して得られている。最初の分析の自己申告は飲酒も含まれているので、アルバイトしていれば飲酒しやすいというのはいかにもありそうだが、2番目の分析は警察に検挙されているかどうかなので、飲酒に限らず検挙されやすいということである。

分析結果はボンド理論の予測とは正反対で、アルバイトをしているほうが逸脱しやすかったわけだが、山本は、(1) 分化的接触理論が予測するように、アルバイトを通して逸脱的文化に接触することで逸脱しやすくなっているのか、(2) あるいは因果の向きが逆で非行少年はお金がいるのでアルバイトをしやすいのか、(3) 出身階層のような第3の要因によって、アルバイトと非行が引き起こされている、つまり疑似相関か、という三つの可能性を提示している。しかし、雰囲気としては分化的接触理論のように、アルバイトが逸脱を引き起こしやすくしているという説を支持したい感じである。

コンパクトにまとまったいい論文である。高校ではアルバイトが禁止されている場合も多く(形骸化しているところも多いのかもしれないが)、アルバイトそのものが逸脱とみなされる可能性がある。それゆえ、アルバイトが合法的な活動への巻き込みになるのかどうかは微妙である。確かに働くことそのものは全く合法的であるが、校則や理想的な高校生像にてらすと逸脱になる可能性がある。これに対して大学でのアルバイトは社会的に公認されているような気がする。このことがアルバイトの持つ意味を高校と大学ではっきりと異なるものにしているような気もするのだが、このあたりの違いがどういう風にしてできているのか知りたいところである。

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