Theoretical Sociology

太郎丸博のブログです。研究ノートや雑感などを掲載しています。(このページは太郎丸が自主的に運営しています。京都大学の公式ページではありません。)
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院ゼミ発表“Working part-time: achieving a successful ‘work-life’ balance?”
Tracey Warren“Working part-time: achieving a successful ‘work-life’ balance?”
BJS 2004 vol55 issue1
「パートタイム労働:仕事と生活のよいバランスを獲得できているのか?」
報告者:阪口祐介 2004/12/13

Introduction(p99〜)
多くの論調では、女性はパートタイム雇用によって、子供の養育や家事をすることができ、加えて、外で働き賃金を得ることも可能になるという。本稿ではこうした労働と家庭のレトリックを越えて、労働と生活をつなぎ合わせた議論を行う。特に、女性の余暇の過ごし方と経済的な状況に注目する。

Working part-time: work-family balancing(p100〜)
 多くの議論では、女性はパートタイム労働をすることで労働と家庭のバランスを獲得できているとされる。労働市場にかかわることで同時に家事の単調さが薄れるというのだ(Myrdal and Klein’s 1956)。一方、女性がパートタイム労働を選ぶのは自発的なものであるか、そこには社会的な不平等あるのではないかという論争は存在する。これに対し、パートタイム雇用が客観的に低い職であることは、逆に低い地位であるがゆえに、家事と仕事の両方からストレスと責任を軽減するとの意見がある(Ginn and Sandall 1997)。より低いレベルの職業であるからこそ、家庭と仕事のバランスを保つことを可能にしているということである。

Work-life balancing: multiple life domains(p102〜)
 いくつかの研究では、家庭と仕事という二領域だけでなく、より多様な生活の領域が探求されている。本稿では、仕事が家事に適合するという唯一の関心を超えて、余暇と経済的な影響に注目する。

Leisure domain
 余暇は人々の生活の質に非常に好ましい重要な影響をもたらすことが報告されており、余暇を仕事と生活のバランスの議論に組み込むことで、日々の生活の総合的な理解が可能になるという議論がある(Such 2001)。

Financial resources domain
 財政的な要素は、生活基準、住宅、教育、福祉などと繋がっており、生活において非常に重要なものであるとされている。また、余暇活動にもお金がかかるわけで、財は女性の仕事と生活のバランスにとって不可欠なものである。
 ここでは女性のパートタイム労働とフルタイム労働を分析することが重要であると思われる。両者の違いは生活とのバランスに大きな影響を与えるのではないだろうか。低賃金であることで、将来的な安心感を失い、ヴァルネラブルな財政的地位に置かれ、長期的には年金の貯蓄の可能性を減退させるかもしれない。
Data sources and considerations(p104〜)
 データはイギリス家庭パネル調査(BHPS)に基づいており、18から59歳の女性労働者の3500サンプルを用いた。専門(経営、会社専門)/事務/マニュアルと、職種を高、中、低のレベルに分割した。
 注意しておくこととして、ここでは「満足についての質問」が使用されるが、主観的な経験を測定することが困難であるという議論はある。さらに、女性のパートタイム雇用者が量的な調査で答える満足は彼女らの実際を反映していないという議論もある。そして、本稿でもそうであるように、生活への満足度は満足に偏るという問題もある。

Work-life balancing: the leisure domain (p106〜)
 ここでは余暇の領域に注目して、女性の労働と生活のバランスについての分析を行う。
 図1(p107)では、余暇生活の使用、時間、社会生活に満足をしている領域で、全体的な生活の満足度が高いことがわかる。これは世帯収入、仕事、健康、家、配偶者(パートナー)という領域より高い。つまり、余暇生活は全般的な生活にとって重要な要素であるのだ。
 ではこの余暇生活の満足度がパートタイム/フルタイム、子の有無といった女性のグループごとにどのような違いがみられるのだろうか。
 図2から4(p108)を見ると、わずかな差を除いてパートタイム/フルタイム、職業レベルごとに、余暇の満足度の違いは見られない。しかし、子供がいて、フルタイムにつくものはとりわけ余暇時間の量の満足度が低い(図2参照)。子供の有無によるこの影響はパートタイムにもあてはまるが、フルタイムでは顕著である。子供を持つと余暇も養育と同時にこなさなければならないということが議論されている。図3、4から、子供を持つと、余暇の使用、社会生活の満足度が低くなっていることがわかる。
 ただ、パートタイム労働者にとって、余暇の時間の満足度がわずかに高いが、より広い領域を映し出す社会生活の満足度では差がなくなっていることは注意が必要である。


Work-life balancing: the financial domain (p110〜)
 ここでは、財に注目して、労働と生活のバランスについての分析を行う。
 財の程度を測るとき、短期的な指標と、長期的な指標を作成する必要がある。そこで、時間給、家庭収入(世帯月収と配偶者月収)、貯蓄、持ち家、年金加入or計画、を指標とした(前の二つが短期)。また、主観的な指標として、日々の家計のやりくりが困難であるかいなかへの回答を指標とした。表2(a)(b)(p111,112)にそれぞれ示されている。
 表2(a)からわかるように、時間給、世帯月収、持ち家率、年金において、パートタイムの方がフルタイムより低い。また、主観的にもパートタイムの財政的な厳しさが見られる(表2b)。さらに、低いレベルの仕事では、財政的により苦しいことがわかる(表2ab)。パートタイムのマニュアルでは、時間給、世帯月収、生活困難度(主観的指標)、貯蓄、持ち家率、年金の領域で最も財政的に厳しいことがわかる。特に貯蓄や持ち家率、年金については長期的な期間で影響が生じる、つまり、年老いたときの生活への厳しい状況が予想されることを意味する。
Work-life balancing: inter-linking leisure and financial domains(p113〜)
 これまで余暇と財が労働生活のバランスに影響を与えることをみてきたが、次は両者をつなぎ合わせてみる。余暇の満足度を従属変数、財を独立変数としてロジスティック回帰モデルに投入した。
 表3(p114)から財政的にうまくいっている人たち(主観的指標)は困難な人たちの2倍以上、余暇に満足をしていることがわかる(オッズ比が0.5であるから)。また、子供を持つことは余暇の満足を下げる強い影響をもっていること、同じ時間を続けることを好まない(hours preferences)人たちは余暇の満足が低いことがわかる。さらに、パートタイムであること、マニュアルであることは余暇の時間においてのみ満足度が高くなるが、マニュアルであることは社会生活への満足を低くさせている。
 最後に、財、余暇、仕事を独立変数として、女性の生活全般への満足度への影響をみる。残念ながら「労働と生活のバランスがとれているか」ということはたずねられておらず、生活全般への満足が直接この指標となるわけではないが、それでも、女性が生活全般をどのように認知するかを概観するために有効だと思われる。
 表4(p116)からわかるように、余暇の満足度の重要性が再確認された。余暇の満足が高いと全体的な生活への満足が大きく増える。特に社会生活へ満足するものはそうでないものに比べて4倍、生活全般に満足している。そして、財政が困難であるほど、生活全般満足度は低いこともわかる。
 非常に興味深いのは、パートナーがいると、特に子供がいると生活全般満足度が非常に高いことである。パートナーがいることは余暇の時間や使用への満足に目立った影響はないが、社会生活や生活全般への満足には重要な影響をもたらす。また、表3で見たように子供がいることは余暇や社会生活への満足を低くするが、女性の生活の満足と強く結びついているのである。女性はよき家族、自分の役割から、余暇の満足は失うが、その他の領域で満足を得ていると思われる。

Conclusion (p117〜)
 本稿では、パートタイムが仕事と家庭のバランスをとるという議論に疑問を呈し、労働と生活のバランスという視点から、広い議論を展開してきた。そこでは、余暇と財の影響が注目され、より低い仕事のパートタイムで財政的に厳しく、社会生活への満足度が低いことなどさまざまな結果が示された。このように、労働と生活の体系は二つの次元だけではなく、多次元、かつ、それぞれの次元が絡まりあうものとしてみていく必要がある。私たちは、労働と生活の均衡の複雑さを理解し、今後、さらに全体的な体系をつかむために、今回示した余暇や財以外の他の領域も視野に入れてゆくことが望まれる。
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