Theoretical Sociology

太郎丸博のブログです。研究ノートや雑感などを掲載しています。(このページは太郎丸が自主的に運営しています。京都大学の公式ページではありません。)
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台湾の高等教育拡大と機会の不平等

Shu-Ling Tsai and Yossi Shavit, 2007, "Taiwan: Higher Education --- Expansion and Equality of Educational Opportunity," Yossi Shavit, Richard Arum, Adam Gamoran and Gila Menahem (ed.) Stratification in Higher Education: A Comparative Study, Stanford University Press, 140-164.
台湾の教育機会の不平等がどのように変化してきたのかを論じた論文。台湾の高等教育機関は、第二次世界大戦後、1950-1963年のあいだは1年間に3校ぐらいのペースで増えているが、1963−1968年の間に年10校ぐらいのペースで急上昇する。1968−1985年はほとんど変化がないが、1985-2000年の間にふたたび年4校ぐらいのペースで増える。1963−1968年の急上昇期に増えたのは、短大だけで、台湾の短大は職業教育が主で、熟練労働者の訓練の場であるという。しかし、1985-2000年の上昇期には短大は減少して4年制の大学が増えている。

こういった変化は政府の思惑や産業界の要請に左右されていて、短大数が急増した1963−1968年は輸出志向型経済がうまく回り始めた時期であり、熟練労働者や技術者が多く必要とされた時期であった。それゆえ高校レベルでは一般教育の生徒と職業教育の生徒の比率を1977年までに 3 : 7 にすることが政策目標とされていた。しかし 1990年代以降、より高い教育水準が求められるようになり、2000年には職業高校の生徒は54%まで減少している。

表1 高校生数に占める職業高校生の比率
1966 1977 1990 2000
39% 63% 68% 54%
(p.144-145の記述より作成)
日本に比べると顕著に職業高校の比率が高いことが印象的であるが、このようなシステムのせいもあって高校進学の時点でかなり将来の職業の選択肢が狭められる。それゆえ高校進学率は2000年時点で95%程度だが、高校受験の競争は厳しいという。

もう一つの大きな政策の変化は、規制緩和で1985年あたりまでは政府が高等教育機関の数を厳格に制約していたが、このころから自由化が進み、大学の新設と短大から大学への昇格が増えている。

このような変化は教育機会の不平等にどのような影響をもたらしたのだろうか。高等教育受験資格(つまり台湾の場合は高校卒業であるが)、高等教育への進学、および短大と大学のどちらに進学するのか、の3種類の機会の格差について出生コーホート別にサンプルを分けてロジスティック回帰分析で検討してある。結論としては、高等教育が拡大しなかった1968−1985年ごろに18歳になった1956--1966年生まれのコーホートでもっとも出身階級や親の学歴による格差が大きく、その前後で相対的に格差が小さいと Tsuai and Shavit は述べている。ただし、このような傾向は統計的には有意ではないので、普通に考えれば、特に変化はないと見るべきだろう。ただ説明変数間の相関が強い(エスニシティ、親の学歴、父の階級)ので標準誤差が大きく出ているという印象なので、工夫すれば有意差を出すことはできるのかもしれない。面白いのは、父階級に軍人 (military) というカテゴリがあり、これは父親世代の場合、外省人のエリートの多くは軍人だったことを考慮してのことだという。

結論とは異なる推定値もいくつか出ているので、やや Shavit の好みの結論に無理に持っていっているという印象はあるが、Tsuai and Shavit の解釈を信じるならば、1985年以降の規制緩和によって高等教育が拡大し、それによって不平等が減少したことになる。一番新しいコーホートである 1967--79年生まれでも高等教育進学率は 53% なので、 Raftery and Hout の maximally maintained inequality 仮説には否定的な結果である。また1967--79年生まれで出身階層による短大/大学の進学率の違いが大きくなっているように見えるので、Lucas の effectively maintained inequality 仮説には適合的な結果とされている。

台湾では職業教育の比率が高いとは聞いていたが、これほどまでとは思わなかった。

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