Theoretical Sociology

太郎丸博のブログです。研究ノートや雑感などを掲載しています。(このページは太郎丸が自主的に運営しています。京都大学の公式ページではありません。)
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イングランドとウェールズにおける社会関係資本と社会的排除(1972-1999)

理論社会学演習 20041213 報告:米田幸弘

Social Capital and social exclusion in England and Wales(1972-1999)

Yaojun Li, Mike Savage and Andrew Pickles

British Journal of Sociology Vol. No. 54 Issue No. 4 (December 2003)

要約

 社会関係資本の近年の研究は、自発的な組織のメンバーシップにおける趨勢を探究してきた。しかしながら、1970年代以降のUKでは、強力な証拠があまり無く、組織への参加によって社会的な境界が埋まるのか、それとも境界がより強まるのかの分析も無い。本稿では1972年のSMIと1992年と1999年のBHPSのデータを使用し、1972年以降のイングランドとウェールズにおける組織参加の趨勢を探究する。われわれは、30年にわたるイギリスの社会関係資本形成による社会的排除のメカニズムに関心がある。市民参加や異なる種類のアソシエーション的なメンバーシップにたいする社会文化的要因の効果を明らかにするために、二項モデルと多項モデルを使用し、Putnam(2000)による社会関係資本水準の全体的低下という命題と、Hall(1999)による、中産階級の社会関係資本水準の向上および労働者階級の社会関係資本水準の低下という命題を検証する。結果として、重要な社会的文化的な差異とジェンダーによる差異が示された。中産階級においては組織参加が相対的に安定しており、労働者階級においては社会関係資本へのアクセスが急激に低下していた。われわれは、この両方の命題の説明を試みる。

1 はじめに

 多くの社会科学者は、社会関係資本は排除や社会的不平等の様式をつくりだすと論じている。本稿の目的は、社会関係資本への批判的アプローチのための土台を提供することである。我々は、自発的なアソシエーションのメンバーシップが、社会階級やジェンダーの境界とどのように関わっているのか、1970年代以降の社会変動が社会関係資本の配分にどのように影響しているのかを示す。

2 社会関係資本の批判的概念の構築  

 Making Democracy Work(1993)においてPutnamは、自発的なアソシエーションの存在が、北イタリアが南イタリアよりも民主的なバイタリティを有していることの説明になるという議論をおこなった。Putnamは社会関係資本をこう定義する。「相互利益のための協調や協力を促進するようなネットワークや規範、社会的信頼といった社会的組織の特性」(1996: 67)。続く研究Bowling Alone(2000)では、USAに関心をひろげ、インフォーマルなネットワークを含む社会関係資本の定義を使用した。自発的なアソシエーション的メンバーシップやインフォーマルな社交的活動についてのサーベイデータを用い、アメリカ人の生活には関わりあいの解消へとむかう全体的な趨勢があることを主張した。

 Putnamの経験的な研究はひとつのモデルを提供しているが、重要な概念的問題がある。最も重要なのは、社会関係資本が、結びつけるものであると同様に、隔てるものでもありうるという可能性に注意を払っていないことである。ここでブルデューの視点はとりわけ重要である。コールマンや他の理論家と違い、ブルデューは、社会関係資本が一般化された信頼を促進する手段ではなく、特定の社会集団が排他性を維持するための手段であることを強調した。Hall(1999)はUKにおける社会関係資本の研究において、アソシエーション的メンバーシップの階級的差異に注目した。加えて、市民的な組織参加が階級とジェンダーの境界とどの程度関わっているかを明らかにした数多くの文献が存在する(Perry et al. 1992)  

 経験的に判断を下す確固たる方法を欠いているため、社会関係資本が結びつける傾向をもつのか隔てる傾向をもつのかを評価することはむつかしい。本稿では、社会関係資本の様式が、ある階級に特殊なものなのか、それとも階級をこえて広がっているのかを考えることによって、社会関係資本が排他的であるか否かを評価するという方法をとる。さらに、異なる種類のアソシエーション的メンバーシップにたいして、階級的地位や教育資格、社会移動や友人ネットワークが与える影響を検討することによって、社会関係資本形成が社会的排除とかかわる過程を追求する。

3 データと方法  

 2つのデータセットを使用する。1972年のSocial Mobility Inquiry(SMI)と1992年と1999年のBritish Household Panel Survey(BHPS)である。SMIは10,309人の男性サンプルである。BHPSは1990年代にはじまったパネル調査であり約5,000世帯の家族と約10,000人の個人に毎年調査している。どちらのデータも、回答者の社会移動の経路、教育資格、友人との結びつき、アソシエーション的な関わりあいを聞いている。回答者の社会移動の経路は、現在の階級、教育過程を終えた労働市場参入時の階級(初職時階級)、両親の階級の3点で測る。回答者の友人の階級は残念なことに、サービス階級と非サービス階級の2段階しかわからない。教育資格は、専門資格、A/Oレベル、職業資格もしくは資格なしの3段階である。分析は記述統計とロジットモデルを使用する。

4 イングランドとウェールズ(1272-1999)における社会関係資本の社会的差異の分析 ・4-1 社会関係資本形成における階級差とジェンダー差(1992-1999)  

 Table 気ら、社会階級が異なれば異なる市民組織に属する傾向があるというHallの議論は支持される。Table 気房┐気譴疹攀鬚蓮2つの大きなタイプのアソシエーションがあることを示唆する。ひとつは「労働者階級が支配的な」もしくは「労働的な」タイプの関わりあいとしての労働組合や労働者のクラブであり、もうひとつは「サービス階級が支配的な」もしくは「市民的な」タイプの関わりあいとしてのその他すべての組織である。

 ここから、メンバーシップの種類として、「両方に参加」、「労働組織に参加」、「市民組織に参加」、「いずれにも参加していない」という4つの分類をつくり、社会文化的な属性との関連をみる(Table 競僖優襭院法女性は男性よりもあらゆる種類の市民的関わりあいが弱い傾向がある。45%の女性が1992年と1999年において「いずれにも参加していない」型である。男性の場合は92年と99年とでそれぞれ32%と36%である。男性の非参加率の上昇は、「労働組織に参加」型が低下したことによるものである。労働者階級の男性は、サービス階級の男性よりも、「労働組織に参加」型にあてはまる割合が約18ポイント高い。サービス階級の男性は、労働者階級の男性よりも「市民組織に参加」型が約25ポイント、「両方に参加」型が約7ポイント高い。教育とメンバーシップの関係パターンは、階級とメンバーシップの関係に似ている。Table 兇料澗療な印象は、メンバーシップの類型において社会文化的な集団同士で重要な差異があるということである。より恵まれない集団ほど、市民的参加にかかわりを持たず、それゆえ社会関係資本形成のフォーマルな回路へのアクセスが奪われているのである。  

 Table 靴蓮⊆匆駟顕重属性の市民参加への効果を示している。モデル1は、主要効果のみ、モデル2はジェンダーと階級、教育の交互作用効果を含む。モデル3は社会文化的属性と経年との交互作用効果を含むが、有意な効果はみられない。女性は男性よりも市民的アソシエーションにより参加しない傾向にある。市民的関わりあいは99年よりも92年のほうが低い。サービス階級で、高い教育資格か中間の教育資格をもち、サービス階級の家庭でサービス階級の友人を持つ人のほうが市民的アソシエーションに所属する傾向がある。

 メンバーシップの類型は4つあるので、「いずれにも参加していない」を省いた多元ロジットモデルを使用する(Table 検法「労働組織に参加」型のメンバーシップは、1992年から1999年にかけて有意に低下している。女性は男性よりも、「労働組織に参加」「両方に参加」型に属する者が少ないが、「市民組織に参加」型はそうではない。これは、女性のほうが就業してない場合が多いためであり、たとえ働いている場合でも、労働組合が未発達なサービス部門に就業する傾向があるからであろう。高い教育資格をもつ人、サービス階級に友人を持つ人のほうが、「両方に参加」「市民組織に参加」に属する傾向がある。世代間および世代内移動の効果については、「市民組織に参加」型によりあらわれている。労働生活において(世代内)下降移動していると市民組織へ参加する傾向があり、上昇移動していると参加しない傾向がある。労働生活における上昇移動は、両方の組織への参加を低下させる。これらのパターンが示唆するのは、「両方の組織に参加」「市民組織に参加」型は、より恵まれた集団を拠点(home)としているということである。

・4.2 男性の社会関係資本の趨勢(1972-1999)  社会関係資本の趨勢については2つの視点がある。ひとつは、アメリカにかんしてPutnam(1995, 1996, 2000)が展開した社会関係資本の全般的低下という命題である。これがイギリスにも適用できるかどうか興味のあるところである。二つ目の命題は、イギリス社会を対象としたHall(1999)によるもので、社会関係資本の全体的な水準は維持されているが、階級によって違いがあると主張する。教育改革やサービス階級の増大、政府の政策のため、社会関係資本は低下していない。中間階級においては社会関係資本水準が向上しているのにたいし、労働者階級の社会関係資本水準は低下しているとHallは述べる。

 以下では、これらの命題をテストする。Table 垢1972年の男性における階級や教育とメンバーシップの関連を示している。これをTable 兇1999年データと比較すると、市民参加における階級差の趨勢は、PutnamやHallの仮説が予測しなかった方向があらわれている。たとえば、1972年から1999年のあいだに、サービス階級は市民的参加が12ポイント低下しているし、労働者階級は16ポイント低下している。教育と市民参加の関係も似たような方向を示している。  

 PutnamとHallの命題のさらなる検証のために、統計的モデルを推し進めよう。Table 困六毀瓜臆辰離瓮鵐弌璽轡奪廚鰺渋するロジスティック回帰モデルを示している。モデル1と2は、1972年と1999年を分けたパターンを示している。モデル3では、2つのデータを結合し、ダミー変数を使った経年効果を含んでいる。モデル4では、さらに経年と階級、高い教育資格、世代間上昇移動とのあいだの交互作用効果を含んでいる。Table 垢任蓮1972年でさえ、労働者階級がサービス階級よりも市民的かかわりあいが低い傾向にあった。しかし、やや驚いたことに、Table 困離皀妊1では、他の要因を考慮すると、階級の効果は全体として有意でないし、実際には労働者階級にくらべて中間階級が負の有意な効果を持っていた。高い教育資格のみが市民参加に有意な効果を持っていたのである。モデル2に移ると、サービス階級の効果が1972年に有意でなかったものが1999年には有意になっている。モデル3では、他の条件が同じなら、1999年における全体としての市民参加は、1972年よりも有意に低いことが示されている。社会構造の変化からすれば、市民参加の水準の増加を引き起こすと予測されるが、そのような増加は見出されなかった。Hallの予測は我々のデータでは支持されない。モデル4では、サービス階級の効果において有意に正の変化があり、世代間上昇移動の効果において有意な負の変化がみられるが、これらの有意な交互作用効果はそれ自体では重要な変化を示唆していない。

 要するに、1972年から1999年のあいだのアソシエーション的なメンバーシップの分析は、Putnamの示唆した全般的低下でもHallの予期した中産階級の組織参加の上昇とそれにたいする労働階級の組織参加の低下でもない。我々の結果は、そうではなく、サービス階級における組織参加の「たえざる流動性」と、移動効果による減少をともなった労働者階級の組織参加の急激な低下を示している。

5 議論

 イングランドとウェールズにおけるアソシエーション的なメンバーシップのパターンと趨勢を探究してきた。メンバーの階級構成と階級的アイデンティティによって、労働と市民のアソシエーションとに分かれていることが示された。男性も女性もともに、高い社会文化的地位の人ほうが市民的アソシエーションに参加する傾向がある。同じ階級であれば女性よりは男性のほうがよりフォーマルな市民的アソシエーションに参加する傾向がみられる。

 ここ30年のイギリス社会の長期的趨勢は、労働者階級の社会関係資本水準が低下しているのにたいし、サービス階級の組織参加は比較的変化しておらず、「絶えざる流動性」という命題がより正確な状況をあらわしている。  

 これらの変化は、部分的にはサービス階級の増加という良く知られた構造変動とかかわるが、我々はより広い歴史社会的な文脈に位置づけて議論する。1970年代においては、2つの種類の社会関係資本を区別することができるように思われる。2つはそれぞれ異なる階級において強固である。労働組合や労働者のクラブは労働者階級と関わりあっており、他の種類の市民的な関わりあいは中産階級の間でより普通に見出せるものである。中産階級の市民的な関わりあいは「趨勢なき変動」だが、労働者階級の市民的関わりあいは階級規模の変化から予測される以上の低下を示していた。これは、戦後における労働者階級のアイデンティティの形骸化とみなすSavage(2000)の議論とかかわる。Hall(1999)の主張は、完全には支持されないにしても、イギリス社会は「一般的に成功した生活を送り、より関わりあいをもった高度に活動的な市民たちと、政治におけるアソシエーション的な関わりが非常に限られた市民たちとに分裂している」(Hall 1999: 455)という言明は正しく、その傾向が増大していることが見出されたのである。

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