Theoretical Sociology

太郎丸博のブログです。研究ノートや雑感などを掲載しています。(このページは太郎丸が自主的に運営しています。京都大学の公式ページではありません。)
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勤め先へのコミットメントと労働価値: 6カ国比較

Dana Mesner Andolšek and Janez Štebe, 2004, "Multinational Perspectives on Work Values and Commitment," International Journal of Cross Cultural Management, Vol.4 No.2, pp.181-209.
勤め先へのコミットメントの規定要因、特に価値観とコミットメントの関係について国際比較した論文。Andolšek and Štebe によると、組織コミットメントの研究では、ある種の法則やパターンが普遍的/通文化的に成り立つかのような語り口で語られることが多いらしい。しかし、社会制度や文化、歴史的経緯が異なる社会では、組織コミットメントを規定する要因も異なる可能性が当然ある。そこで、半ば探索的に組織コミットメントの規定要因を分析してみよう、というのがこの論文の目的である。

組織に対するコミットメントは、Meyer and Allen (1997) によると、

  1. 感情的コミットメント (affective commitment): 自分の所属に対する愛着から、損得抜きで組織のために働きたいという気持ち
  2. 継続コミットメント (continuance commitment): (主に損得勘定で?)自分の所属する組織に留まり続けようという気持ち
  3. 規範的コミットメント (normative commitment) : 自分の所属する組織のために働かなければならない、という規範の内面化の程度?(定義はこの論文に書かれていない)
の3つに分類されるそうだが、この論文では感情的コミットメントと継続コミットメントの2つが分析対象となっている。感情的コミットメントの指標は以下の2つの質問項目(5点尺度)である(以下の質問文の訳はすべて私がしたもので、日本語の調査票は未確認)。
  • 私は、私の勤め先の発展のために、最低限求められる以上に一生懸命働こうと思う。
  • 私は、今の勤め先で働けることを誇りに思う。
継続コミットメントの指標は以下のとおりで、反転尺度、5点尺度である。
  • もしチャンスがあれば、今とは違ったことのために、違ったタイプの仕事をしてみたい。
  • もしも今よりもかなり賃金高い転職先があっても、この組織に留まりたいので、転職は断るだろう。
継続コミットメントは合理的計算の結果のコミットメントだと解釈/定義されているのだが、このスコアの値が高い人というのは、そのような合理的計算を否定する人たちなので、むしろ損得抜きで雇用を継続したい、という気持ちだと解釈するのが自然。そして感情的コミットメントは、今の職場に留まるかどうかとは別に、今の職場に対する愛着をたずねているということだろう。どうして Andolšek and Štebe のような解釈/定義がでてくるのかは不明。

仮説は下の図(p.189より転載)のようにまとめられている。


感情的コミットメントは、仕事が安定しており、仕事に満足し、労働条件がよく、仕事の質が高く(収入が高いと思っており、決定権があり、人の役に立つ)、不公平感が低く、内的報酬志向が高く、脱物質主義的で、個人主義的で、労働組合に加入しているほど、強くなる、ということだが、あまりに多すぎてよくわからない。さらにこれらは必ずしもすべての国で効果があると期待されているわけではなく、一部の国でのみ効果があるとされている。例えば、仕事の安定性は、市場経済への移行期にあるポスト社会主義国でのみ効果がある、とか、労働組合の効果は集合主義的な文化を持つ国でのみ効果がある、といった予測がされてはいるが、根拠は明示されていない。

データは International Social Survey Program (ISSP) の1997年 (Work Orientations II) で、ドイツ、イギリス、米国、ハンガリー、スロベニア、日本の6カ国だが、ドイツは旧東ドイツと旧西ドイツの地域でわけて分析されている。記述統計については、ほとんど検討されていないが、いちおう平均値は書いてあったので、感情的コミットメントと継続コミットメントのそれぞれの平均値を国別に計算すると、下の図のようになる。

図  7社会の感情的コミットメントと継続コミットメントの平均値


この程度の違いは翻訳の際のちょっとしたワーディングの違いで生じてしまうので、あまり重く見るべきではないだろう。 7つの社会別に相関行列が計算された後、感情的コミットメントと継続コミットメントを目的変数とした回帰分析がなされている。モデルは 7社会別にステップワイズ法(F値と tolerance を基準にしているというがそれ以上は不明)で選択されている。仮説は支持されたりされなかったりだが、「ポスト社会主義国では...」とか「集合主義的な国では...」といった仮説はすべて棄却されている。すべての社会で感情的コミットメントに有意な効果をもつのは、仕事満足度、収入の自己評価の高さ、内的報酬志向、の3つであり、継続コミットメントにすべての社会で有意な効果を持つのは、仕事満足度、収入の自己評価の高さ、年齢、の3つである。

いわゆるヤッコー(やったらこうなりました)型の論文で、残念ながら社会のことを理論的に深く考えているとは思えない。結論部に「最初はすべての社会でコミットメントに影響を与えるような普遍的な要因の探求から研究は始まった」とあるので、「でもやってみたらそんな要因はほとんどないので、国による違いに焦点をあててはみたが、よくわからない結果になりました」ということなのかと想像する。もっとポイントを絞って理論的にきっちりつめて研究するともっといい結果が出るのではないかと期待するのだが。

それから、国別に回帰分析して、それぞれの変数が有意かどうかで結果を解釈するというのは、適切な分析法とは思えない。ふつう国とその他の変数の交互作用効果を検討しないと正確なことはわからないのではないだろうか。最近なら国の数をもっと増やしてマルチレベルモデルを使うようなデータだと思う。ISSP 1997 は33カ国分データがあるらしいし、上記の6カ国を選んだ基準も曖昧なので。

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