Theoretical Sociology

太郎丸博のブログです。研究ノートや雑感などを掲載しています。(このページは太郎丸が自主的に運営しています。京都大学の公式ページではありません。)
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引用分析と談話分析

J. Swales, 1986, "Citation analysis and discourse analysis," Applied Linguistics, Vol.7 No.1, pp.39.
談話分析 (discourse analysis) と引用分析の知識を組み合わせることで、「論文」の分析をさらに発展させる道筋を探った論文。言語学系の論文なのでよくわからない部分もけっこうあり、誤解している可能性あり。

インパクト・ファクターのように、被引用回数で雑誌や論文を格付けする指標には、その引用の意味、文脈を無視しているという批判がなされてきた。否定的な引用も、軽く触れただけの引用も、高い評価を伴う引用もすべて「1回」の引用として扱うのは、適切ではない、というわけである。引用分析では、この問題が繰り返し検討されてきており、否定的な引用と肯定的な引用を分類する研究や、著者自身にその引用の意図を尋ねて、肯定か否定か、重視しているかどうかといった引用文献の分類をするアプローチがなされてきた。これを引用内容分析 (content citation analysis) という。Swales も引用内容分析を有効/必要だと考えており、そのような分類に談話分析の知識が役に立つという。科学論文の談話分析は、引用分析とは別に発展してきており、科学論文の構造やレトリックなどについての研究が積み重ねられている。引用は科学論文の重要な構成要素のひとつであるので、引用分析の知見が科学論文の談話分析に示唆を与えることもあり、両者の対話が実り豊かなものになりうる、というのが、この論文の趣旨らしい。

科学論文の談話分析では、引用の際の時制に注目するものがあるという。例えば、現在形、過去形、現在完了形といった時制が引用の際に用いられるとのべられていたが、このような時制に伴い、引用する研究を本文の主語に据えたり、単に文末のカッコ内で言及するにとどめる場合もある。こういった違いが、引用されている研究がどの程度、引用している研究に重視されているのがわかるといった議論もあるそうなのだが、Swales は否定的なコメントをしている。ある論文が肯定されているのか否定されているのか、重視されているのかどうか、といった問題は論文全体を見て判断する必要があり、その論文が引用/言及されている文の時制や主語といったものだけから判断することは危険であると言っているようである。

実際に談話分析の知見を踏まえた引用内容分析の可能性を示すために、小規模な分析がなされている。Munby という人が 1978年に出版した Communicative Syllabus Design という本を引用した44の文献に関して、この本がどのように引用されているのか、分類がなされている。分類は以下の3つの基準が用いられている。

  1. 短い言及か、長い言及か (short/extensive)
  2. 引用された研究をさらに発展させているのか、それとも、その研究に対する対案を出しているのか、それらのいずれでもないか、(evolutionary/juxtapositional/zero)
  3. 肯定的な引用か、否定的な引用か、いずれでもないか (confirmative/negational/zero)
こうして2×3×3=18のタイプに Munby の本の引用が分類されている。そのあと、細々とその結果についてコメントがなされていたが、何が言いたいのか私には理解できなかった。

古い論文ということもあり、サマリーもなく、まとまりに欠け、私には読みにくい、が専門の近い人が読めばそうでもないのかもしれない。けっこうよく参照されている(が short, zero, zero な感じの引用が多い)論文なので、引用分析と談話分析の対話の必要性、みたいな話をするときのコンセプト・シンボル (Small 1978) として使われているのかもしれない。

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