Theoretical Sociology

太郎丸博のブログです。研究ノートや雑感などを掲載しています。(このページは太郎丸が自主的に運営しています。京都大学の公式ページではありません。)
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社会科学文献の4つの世界:論文、本、非学術記事、そして非英語文献

Diana M. Hicks, 2004, "The Four Literatures of Social Science," Henk Moed, Wolfgang Glänzel and Ulrich Schmoch (eds.) Handbook of Quantitative Science and Technology Research, Kluwer Academic, 473-496.
Social Science Citation Index (SSCI) が社会科学の文献の世界をどの程度うまくとらえているのかについて、概観した論文。 Social Science Citation Index は社会科学系論文の相互参照データベースで、インパクト・スコアのような雑誌の評価の指標を計算する際のデータを提供している。自然科学系の場合、学術的な文献のほとんどが Science Citation Index (SCI) に収録されているそうで、これをもとに論文間の相互参照を分析することは理にかなっている。

しかし、社会科学や人文学の場合、SSCI に掲載されていない文献がかなりの規模で存在しているため、社会科学や人文学で相互参照について分析することは容易ではない。Hicks は SSCI に掲載されているのは、英語の学術論文が中心であり、それ以外の文献はもれていることが多いと指摘する。このようなことが生じるのは、「1 英語の学術論文」のほかにも、「2 本」、「3 非英語の文献」、そして「4 非学術的な文献」が社会科学では無視し得ない重要性を持っているからであり、これらを考慮する必要があるという。

このような社会科学の性質は、mode 2 と呼ばれる学問の性質と密接に関係しているという。mode 1 の科学が応用よりも学術的関心を重視し、学際的研究よりも個々の学問分野 (discipline) の関心を追求し、科学者と研究機関の自律性を求めるのに対して、mode 2 はその正反対(応用志向で、学際的、専門家だけでなく様々な人々に対して説明責任を負う (multiple accountabilities) )であるという。工学や医学などの中のある種の応用的な分野の性質を、この mode 2 という概念は捉えているのだと思われるが、 Hicks はそれが社会科学にも当てはまると考えるわけである。mode 2 の学問の場合、論文だけでなく、特許や社会への貢献といった側面が重要になってくるので、研究者を評価する際には、それらを適切に考慮することが求められる。SSCI からインパクト・ファクターを計算するだけでは、社会科学の評価としてはバイアスが無視し得ないほど大きくなる、というのが Hicks の基本的な主張である。

Hicks の基本的な主張は、「社会科学は mode 2 の学問」という点を除けば、自明で面白みに欠けるのであるが、これまでの研究のレビューがこの論文の主な部分で、そこはけっこう役に立つし、知らない研究成果がいろいろ紹介されていて勉強になった。まず社会科学では自然科学に比べて異分野の文献の参照が多い。つまり、社会科学は自然科学より学際的であるということである。

次に本の重要性を示すデータがいろいろ示されている。 Small and Crane (1979) によると SSCI で参照されている文献のうち 40% が本であり、分野別に見ると、表1のとおりであるという。

表1 各分野の引用文献に占める本の比率(p.478, Small and Crane (1979)からの孫引き)
高エネルギー物理学 0.9%
心理学 15%
経済学 25%
社会学 39%

ただ1979年より前のデータであろうから、現在では状況が変わっている可能性はかなりある。また当然、本は本を引用しやすく、論文は論文を引用しやすく、論文より本のほうが3〜5倍程度引用される頻度が高い。そのため、SSCI にのみ頼って業績を評価すればバイアスが大きくなろう。

第3に、言語の問題であるが、英米の社会学者の引用文献は 99% が英語であるが、世界の社会学の文献のうち英語で書かれたものは 70% 程度(どうやって推定しているのかは不明)なので、明らかにバイアスがあるという。独仏の社会学者の引用文献のうち、母国語は約60% であるが、世界の社会学の文献のうちドイツ語、フランス語で書かれたものは 10% 程度なので、やはりバイアスがあるという。ポーランドの社会学者の研究では、英語圏で最も参照されているポーランド社会学の文献と、ポーランド語圏で最も参照されているポーランド社会学の文献はほとんど重ならないという。さらに SSCI がいかに英米、特に米国偏重かが指摘されている。ただ大半の社会学者は自国を研究対象といていることが多いので、とうぜん母国語の文献が多くなるし、読めない言語で書かれた論文は参照しようがない。それゆえ、引用文献が特定の言語に偏るのは当然で、それを批判的論調で語るのは、ミスリーディングだとは思う。

最後に非学術文献の重要性であるが、各分野の文献(出版されたすべての文献なのか、引用文献なのか、あるいは別の文献のグループか、まったく不明)に占める非学術的な記事の比率を計算すると、下の表2 のようになる

表2 各分野の引用文献に占める非学術記事の比率(p.485, Burnhill and Tubby-Hille (1994)からの孫引き)
心理学 5%
統計学 13%
経済学 30%
社会学 41%
言語学 62%

学術的な文献と非学術的文献の線引き等いろいろ怪しい部分はあるが、参考にはなる。

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