Theoretical Sociology

太郎丸博のブログです。研究ノートや雑感などを掲載しています。(このページは太郎丸が自主的に運営しています。京都大学の公式ページではありません。)
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『イギリス社会学の勃興と凋落:科学と文学のはざまで』

20世紀のイギリス社会学の歴史を概観した著書。原著は下記の通り。 Albert Henry Halsey, 2004, A History of Sociology in Britain: Science, Literature, and Society, Oxford Univ Pr on Demand (=2011, 潮木 守一 訳『イギリス社会学の勃興と凋落:科学と文学のはざまで』世織書房).
原著の第3部は翻訳されていないので、抄訳というのが正確だろう。原書が刊行された時点で Halsey は81歳であったので、さすがにやや叙述は雑駁で、特にイギリス社会学についての知識が全くない日本の読者には、わかりにくい記述も多い。しかし、1950年にロンドン経済政治学院 (London School of Economics and Political Sciences: LSE) を卒業した Halsey 自身の経験を記述した部分は生き生きとして勢いがあり、おもしろく読める。それがどの程度一般的に共有されていた感覚なのかについては不明だが、少なくとも Halsey 自身はそう感じていたわけで、参考になる。

イギリス社会学の中心は長く LSE であった。オックスフォードとケンブリッジは社会学に冷淡で、長い間、社会学の教授はいなかった。ケンブリッジで最初の社会学の教授になったのはギデンズ(1983年)だそうである。LSE はウェッブ夫妻によって設立されたため、初期から倫理的社会主義の色調の強い学校であった。戦前の LSE では、タウンゼントのような貧困調査がなされるいっぽうで、ホブハウスのような文化や倫理の漸次的な進化を説く思弁的な研究が主流であった。この時期、社会学を教えていた高等教育機関は LSE のほかにはリバプール大ぐらいであったという。

第二次世界大戦後は、ヴェーバーやデュルケムがパーソンズ−シルズ経由で LSE にもたらされたという。また T. H. マーシャルに代表されるように、市民的権利と福祉の充実・拡大によって階級的な矛盾を和らげ、ソ連型社会主義とは異なる豊かで平等な社会がめざされるようになった。労働党政権が誕生したことも追い風になり、1960年代には社会学は急拡大した。この時期のイギリス社会学の特徴は、明らかに福祉政策に強い関心を抱いていたことで、労働者の生活実態、制度運用の実際、さらにはマクロな社会構造を明らかにすることで、より良い政策立案に志向していた。Halsey にとっての黄金時代と言えよう。

しかし、規模の拡大に従い、1970年代には、イギリス社会学の内部対立が強まっていった。実証主義批判、マルクス主義者と非マルクス主義者の対立、フェミニストによる主流派の批判、といった具合で、さらに1980年代のサッチャー政権下では Social Science Research Council の解体・再編と、社会学講座の縮小が続き、冬の時代が始まる。このような後退期のさきぶれになったのが、1968年の学生紛争であるが、それとその後の社会学の縮小に因果関係があるのかどうかは判然としない。Halsey によれば紛争を主導した学生の多くは社会科学を専攻しており、そのことが保守派の社会科学に対する敵意をかきたてた可能性はある。しかし、1992年のポリテクニクの大学昇格に伴い、社会学の教授の数は急増したそうである。ただし、訳者解説によると、その後2009年までの間に、政府から資金を得ている社会学講座の数は 67 から 30 にまで激減したそうなので、「凋落」という邦題はそれなりに正しいのだろう。

文末には 63ページにも及ぶ訳者解説があり、本論のわかりにくさを補っている。もしかしたらこちらから先に読んだほうがわかりやすいのかもしれない。また、後半は訳者の潮木自信による日本の戦後教育社会学史の回想になっており、これもおもしろく参考になる。全体にやや誤植が多いのが残念だが、イギリス社会学の歴史に興味のある人は、数少ない日本語で読める文献なので必見と言えよう。

文学と科学のあいだで揺れ動く社会学、というイメージはお馴染みだが、そのあたりで新しい論点や発見は見られなかった。ただ H. G. ウェルズが、1902年ごろまではウェッブ夫妻や社会学に好意的であったのが、その後、1907年ごろには完全に敵対的になってしまったというのは面白いエピソードであった。また、W. G. ランシマンは1998年に「ポスト・モダニズムは姿を消した」と書いたと書いてあるのだが、果たしてどういう意味でそう言ったのか興味深い。完全に消えたとは到底思えないのだが。

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