Theoretical Sociology

太郎丸博のブログです。研究ノートや雑感などを掲載しています。(このページは太郎丸が自主的に運営しています。京都大学の公式ページではありません。)
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Rスクリプト覚え書き: deviance 関数が lm に対して返すのは deviance ではない?

今日はじめて気づいたのだが、R で lm の結果から deviance を取り出そうとすると、"-2 * 対数尤度" ではなく、Residual Sum of Square (RSS) を返すのである。このあたりの関係についての知識があいまいだったので、以下では簡単にまとめておく。 逸脱度 (deviance) とは、一般的には入れ子の関係にある複数のモデルの当てはまりのよさを比較するための統計量であるが、ふつうは、あるモデルと飽和モデルのあてはまりのよさを比較したものであり、

逸脱度 = −2 × 対数尤度  (1)
で定義される。glm を使ってロジスティック回帰分析をした結果から対数尤度と逸脱度を計算すると、以下のように確かに (1)式の関係が成り立っているのがわかる。
> library(AER) # AER パッケージの SwissLabor というデータを使う
> data(SwissLabor) 
> head(SwissLabor)
  participation   income age education youngkids oldkids foreign
1            no 10.78750 3.0         8         1       1      no
2           yes 10.52425 4.5         8         0       1      no
3            no 10.96858 4.6         9         0       0      no
4            no 11.10500 3.1        11         2       0      no
5            no 11.10847 4.4        12         0       2      no
6           yes 11.02825 4.2        12         0       1      no
> 
> glm1 <- glm(participation~income, data=SwissLabor, family=binomial)
> -2 * logLik(glm1) # logLik は対数尤度を返す関数
[1] 1175.972
attr(,"nobs")
[1] 872
attr(,"df")
[1] 2
attr(,"class")
[1] "logLik"
> deviance(glm1) # deviance は逸脱度を返す関数
[1] 1175.972
ところが、OLSで線形回帰分析を行うと (1)式の通りにはならない。
> data(CPSSW04)
> head(CPSSW04)
  earnings     degree gender age
1 34.61538   bachelor   male  30
2 19.23077   bachelor female  30
3 13.73626 highschool female  30
4 19.23077   bachelor female  30
5 19.23077   bachelor   male  25
6 38.46154   bachelor female  32
> lm1 <- lm(earnings ~ degree, data=CPSSW04)
> -2 * logLik(lm1)
[1] 56150.05
attr(,"nall")
[1] 7986
attr(,"nobs")
[1] 7986
attr(,"df")
[1] 3
attr(,"class")
[1] "logLik"
> deviance(lm1)
[1] 528939.3
このような違いが生じるのは、deviance は OLS の結果に対しては、"−2 × 対数尤度" ではなく、残差平方和 (Residual Sum of Square: RSS) を返すからである。RSS を計算すると、
> sum(residuals(lm1)^2) # residuals はすべてのケースの残差のベクトルを返す
[1] 528939.3
となり、一致していることがわかる。

なぜ deviance 関数がこのような不規則な挙動をするのか、よくは知らないのだが、それほど不思議なことではない。実際、逸脱度はしばしば RSS に対応するものとしてテキストで記述されている(私も似たようなことを書いた気がする)。なぜなら、どちらもモデルのフィッティングが悪いほど大きくなるからであり、これらを最小化するようにパラメータが推定されるからである。また逸脱度の代わりに N * log(RSS / N) が使われることもある(extractAIC ではそうである)。さらに逸脱度と RSS は単調増加の関係にある(RSSを最小化するのが OLS だが、これは残差が正規分布していれば最尤推定値を導く)ので、どちらも似たようなものだと考えることはできるのである。社会学者にとって、こういう話はどうでもいいのだが、教えるときに数値が一致しないと授業としてはすっきりしないので、少し調べてしまいました。

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