Theoretical Sociology

太郎丸博のブログです。研究ノートや雑感などを掲載しています。(このページは太郎丸が自主的に運営しています。京都大学の公式ページではありません。)
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Zhou 2005, 「職業威信ランクの制度的論理:再概念化と再分析」

Xueguang Zhou, 2005, "The Institutional Logic of Occupational Prestige Ranking: Reconceptualization and Reanalyses," American Journal of Sociology, Vol.111 No.1, pp.90-140.
誰がどんな地位の職業を高く評価するのか分析した論文。職業威信の高低に関しては、機能主義的な説明がしばしばなされてきた。すなわち、職業の社会に対する機能的な貢献の大きさが威信の高さに強い影響を与えている、という説である。このような説明は、機能主義が信憑性を失うにしたがい、説得力を失っていったが、それにかわる体系的な理論も特に存在しなかった。Zhou は、制度派 (Meyer and Rowan 1977, Dimaggio and Powell 1983) の理論で、職業威信ランクの説明ができると考える。制度派とは、制度が間主観的に構成されていると考える立場で、そのような間主観性は、人々の日常的な相互行為の中で構成されていくとされる。つまり現象学的社会学を、実証的な研究に応用できるようにソフトにしたような理論的立場が制度派といえるかもしれない。

Zhou は具体的には以下のような仮説を立てている。

  1. Zhou によれば、ある職業の地位が多くの人々に高く評価されるためには、その地位が理にかなったもので自然なものだと人々に感じられる必要がある。近代社会で理にかなった自然なものといえば、科学、知識、技術なので、これらに特に顕著にかかわる (salient) 職業ほど高く評価されやすいという。科学、知識、技術が理にかなった自然なものだからといって、それらにかかわる職業の地位を高く感じるとはいえないと私は思うが、Zhou はそういう仮説を立てているということである。
  2. また、ある職業がコンフリクトにさらされている(例えば、官僚の天下りや建築士の耐震偽装工作がマスコミにたたかれる)場合、人々のその職業の地位への間主観的な確信は揺らぐであろう。この理屈をさらに敷衍すれば、権威 (authority) のある仕事は、しばしば利害対立とかかわり、さまざまな社会的緊張をはらむので、人々のそういった職業への評価は低くなるだろう、と Zhou はいう。
  3. さらに、同業者組合 (association) をもつ職業は、その仕事の合理性をひとびとにアピールし、その職業の地位の高さを自然化する傾向がある。Zhouによれば、こういった職業の評価は高くなるはずである。
  4. あまりに数の少ない職業は人々から認知されにくいので、高く評価されようがない(内閣総理大臣のようにマスコミが盛んに報道すれば数の少なさは関係ないと私は思うが)。しかし、数が多すぎると、人々が容易にその職業に必要とされる知識にアクセスできるので、その地位を自然化することができないという。それゆえ、その職業についている人の数と、その職業の威信の関係は逆 U 字型になるという。
  5. 上記のような職業威信の序列は、社会の中心に取り込まれている人々に特に強く支持され、周辺的な存在の人々ほどそのような威信序列を支持しないだろう。
  6. このような威信序列のグループによる不一致は、科学・知識・技術にそった序列に関しては、相対的に小さいだろう。

1989年の GSS調査での職業威信のデータを Dictionary of Occupational Title (DOT) と Encyclopedia of Association の情報で補って、分析している。個人(評定者)の数は 1122 であるが、サンプルは12のグループに分けられ、それぞれ共通の40の職業と、グループによって異なる 70 の職業の地位の高さを評価している。説明変数に関して欠損値のある職業をサンプルから除外しているので、671の職業についての評価が分析されている。

分析モデルは条件付ロジットと呼ばれるもので、マルチレベル・モデルによく似ている。すなわち、個人 i の職業 j に対する評価の高さを Uij とすると、

Uij = b0 + b1 X1 + ...

といったモデルを考える。説明変数は、個人レベル(評定者の性別や学歴、人種)と職業レベル(各職業の平均的な収入や、同業組合の出版物の数など)の両方である。説明変数の中で特に重要なのは、ある職業がどの程度、科学や技術に顕著にかかわっているか、そして権威にかかわっているか、であるが、DOT には、在職者に、科学や技術的活動に対する好み (preference) を尋ね、好んでいると答えた人の比率、という情報がある。これがその職業の科学や技術へのかかわりを示す指標として用いられている。同様に、在職者に自分の仕事が交渉したり、指示したり、監督したり、業務をまとめたり組織化したり、最終的な決定をしたりするかどうか尋ね、Yes と答えた人の比率が、その職業が権威にかかわる程度であるとされている。そのほかにも、いろいろな変数がモデルに投入されているが、割愛する。

分析の結果、科学や技術に顕著にかかわっている職業ほど、威信が高い傾向があるが、権威にかかわっていても威信は高い傾向がある。ただし、高卒以下の学歴や、専門・管理職以外の職業についている人たちは、権威にかかわる職業をむしろ低く評価する傾向がある。また、同業組合の出版物が多い職業ほど(この変数は同業組合がない場合は、0 とされている)威信が高く、職業の在職者数と威信は逆 U 字型の関係になっている。周辺的な位置の人々に関しては、性別と人種に関しては予想通りの結果が出たり出なかったりであるが、学歴と職業に関しては、予想通りの結果となっている。すなわち、高卒以下の学歴と、専門・管理職以外の職業の人は、科学や権威にかかわっている職業をあまり評価しない傾向がある。

理屈が錯綜していてわかりにくいのであるが、たぶん分析結果を先に出して後から、無理やり理屈を考えているからではないかと邪推させる内容である。科学・技術にかかわる職業の威信が高いことは、機能主義からも予測できるので、権威にかかわる職業の威信が低くなるかどうかが重要なポイントなのだが、値は小さいものの、権威は正の有意な効果を持っており(p.116, Table 4 の Model 4)、Zhou の仮説は反証されたというべきである。しかし、Zhou は influence というもうひとつの権威と一見似ているように見える変数がマイナスの有意な効果を持ったことから、仮説が支持されたというのであるが、これは、人を動機付けたり、説得したり、交渉したりする仕事かどうかを示す変数であり、販売・サービス業にむしろ典型的な特徴である。つまり、これを権威の指標とするのには無理がある。

しかし、低階層の人が、科学・技術や権威を重視しないという分析結果はわかりやすく、興味深い。また、錯綜しているとはいえ、制度派の議論と結び付けて、威信を説明する試みは高く評価したい。人々の間主観性を強調する威信研究は昔からあるのだが、職業評定の不一致を強調するだけで、積極的に評定のメカニズムを特定してこなかった。この研究はそれらの研究を一歩前進させて、どうして評定の不一致が生じるのかを探求した研究として、評価されるべきなのであろう。

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