Theoretical Sociology

太郎丸博のブログです。研究ノートや雑感などを掲載しています。(このページは太郎丸が自主的に運営しています。京都大学の公式ページではありません。)
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Ylijoki 2003「アカデミック資本主義にからめとられる? 大学での研究の理想と現実」

Oili-Helena Ylijoki, 2003, "Entangled in Academic Capitalism? A Case-Study on Changing Ideals and Practices of University Research," Higher Education, Vol.45 No.3, pp.pp. 307-335.
いわゆる外部資金の肥大化が研究にどのような影響を及ぼすかに関するケース・スタディ。アカデミック資本主義とは、大学の予算に占める外部資金の比率が増大することに起因するさまざまな諸現象を指している。外部資金とは、一般企業や公共団体、政府などから得られる、通常の予算以外の研究・教育資金を指している。アカデミック資本主義が研究活動にどのような影響を及ぼすかに関しては、大別して 2つの考え方がある。第1 に、アカデミック資本主義は、大学での商品開発や具体的な問題解決など、応用分野の肥大化を生むという説がある。これは既存の mode 1 science (ディシプリンと基礎研究を重視する科学)から、mode 2 science (学際的で応用的な研究を重視する科学)への移行をともない、学問間の境界は失われ、学問の類似性が高まるとされる。いっぽう、アカデミック資本主義への適応は学問によってさまざまであり、必ずしも mode 2 science への移行は起きないし、変化があるとしても、その形態はさまざまだとする説もある。

上記の2説のうち、どちらがどの程度現実にあっているのかを調べるために、Ylijoki はフィンランドの Tampere 大学の歴史学部と仕事研究センター (Work Research Center)、そして Tampere 工科大学の界面科学・半導体研究所の三つの部署の senior researchers (上席研究員、といった役職があるのか、それとも単に年長/ベテランの研究者といった意味なのかは不明)、23人にインタビューしている。時期は 1998-1999年である。外部資金比率は、歴史学部が25%、仕事研究センターが97%、界面科学・半導体研究所が75%である。

インタビューの結果、Ylijoki は、アカデミック資本主義への対応は、三つの部署でかなり異なるという結論を下している。歴史学部では、学問の理想も実践も外部資金の増加によってはほとんど影響を受けていない。仕事研究センターでは、調査報告のディシプリン内部での評価が上がり、センターのアカデミックな評価が上がるという現象が起きている。いっぽう界面科学・半導体研究所では、応用研究の価値の明らかな増大があり、起業もさかんで、研究成果を応用するために作った企業で働いたほうがずっと収入もよく、人材の流出が懸念されているという。このような違いは外部資金といっても、界面科学・半導体研究所の場合は企業からの資金が多いが、歴史学部はほとんどフィンランド・アカデミーから資金を得ており、仕事研究センターは EU などの政府機関から比較的多く資金を得ているといった、資金の出所による違いの影響が大きいという。

しかし、3つの部署に共通の変化もあるという。まず、資金獲得のために申請書を書いたり、報告書を書いたり、資金のためのプロジェクトを組織したり、といったマネージメント業務の肥大化に senior researchers たちは悩まされている。第2に、外部資金は数年の期限付きなので、若手の研究者のポストも任期付きとなり、雇用が不安定化している。さらに、期限の間にわかりやすい業績を生み出すことが求められるため、短期的に確実な業績が出るような研究が求められる傾向がある。しかし、第3に、3つの部署の研究者たちは依然として伝統的な学問規範(基礎研究やディシプリンの重要性)を異口同音に強調しており、少なくとも規範のレベルでは、 mode 1 science は失われていないという。

1998年の時点でこういう状況だったということは、今はどうなっているのかちょっと恐ろしい気がする。Ylijoki によれば、こういった変化はすべての研究者の労働条件を悪化させており、優秀な人材がビジネスの世界に流出してしまうことが危惧される。

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