Theoretical Sociology

太郎丸博のブログです。研究ノートや雑感などを掲載しています。(このページは太郎丸が自主的に運営しています。京都大学の公式ページではありません。)
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『科学と証拠:統計の哲学入門』
エリオット・ソーバー
名古屋大学出版会
¥ 4,830
(2012-10-17)

Elliott Sober, 2008, Chapter 1, "Evidence" in Evidence and Evolution: The Logic behind the Science, Cambridge University Press (=2012, 松王 政浩 訳『科学と証拠:統計の哲学入門』名古屋大学出版会).
統計的なデータ処理の背後にあるいくつかの認識論を批判的に検討した本。統計学はデータ処理の手法として多くの学問分野で活用されているが、どのような場合にどのようにデータを処理すべきかについては、統計学者の間でも考え方がいくつかに分かれている。例えばベイズ主義と頻度主義の対立/相違は比較的よく知られていると思う。これはいわば認識論的な相違とでも言うべきものであり、統計の教科書でそのような相違が論じられることは、あまりないと思う。本書ではベイズ主義、尤度主義、頻度主義I(フィッシャーの有意検定)、頻度主義II(ネイマン・ピアソンの検定)、頻度主義III(モデル選択理論)、の5つを取り上げてそれらの性質が論じられている。これら5つはあくまで科学における証拠調べにおいて、
  1. 現在の証拠から何がわかるか
  2. 何を信じるべきか。
  3. 〔科学者は〕何をするべきか (p.6)。
といった問題に関する認識論的な立場であり、「確率とは何か」といった確率の意味論とは直接関係がない。

ベイズ主義はある命題に関してその事前確率と尤度から事後確率を得る。これは「何を信じるべきか」という問題にストレートに答えるもので、(少なくとも私にとっては)たいへん魅力的なのだが、ある命題の事前確率をえられないというケースは非常にしばしばあり、そのような場合ベイズ主義は困難に陥る。このような場合、一様分布のような等確率の分布を事前確率(分布)とすべきだというのだが、どのような要素(単位)で考えるかという点で恣意的な選択がなされてしまう点に問題があると Sober はいう。

これに対して尤度主義は複数の命題/仮説の尤度を比較し、尤度の高いほうを支持すべきであるという考え方である。尤度の比較には事前確率は必要ないのでベイズ主義の持つ困難は回避できるが、尤度主義では複合仮説を扱えないという難点があると Sober はいう。複合仮説とは、複数の仮説の選言である。例えば、

Y = a + bX + e
ただし、b > 0
という関係が X と Y の間に成り立つ、という仮説が複合仮説である。Y = 1 + 2X + e, Y= -3 + 0.7X + e などさまざまな直線的な関係が考えられるが、これら無数の直線的な関係の複合が仮説として示されているということである。個々の直線の尤度は計算できるが、それらの選言に関しては尤度の計算ができないという。しかし、実際には複合仮説が問題になることがしばしばあり、そのような場合には尤度主義は役に立たない。

フィッシャーの有意検定は、第一種の過誤を犯す確率 (p) が非常に低い(ふつう 5% 未満である)場合に帰無仮説を棄却し、対立仮説を採択せよ、という考え方(行動方針)である。しかし、p が 5% 未満であっても帰無仮説が正しい(が、めったに得られないデータが得られた)という可能性はあり、対立仮説の採択は論理的に要請されるものではない。

ネイマン・ピアソン検定とは、p が一定の値以下で、第二種の過誤が最小のモデル/仮説を選択せよ、という行動方針であるが、これも帰無仮説をどう設定するかで支持される仮説が変わってきてしまう。

Sober が最も好意的なのは、AIC (Akaike Information Criterion) によるモデル選択理論、である。AIC はモデルの予測正確性の推定値であり(小さいほど正確)、この立場は AIC が最も小さいモデルを選択せよ、という指針を示す。またこの立場は上記のような諸問題をクリアしており、これまで検討してきた中で、もっとも理にかなった認識論であるとされている。モデル選択の基準は AIC のほかにも BIC (Bayesian Information Criterion) をはじめ、いくつかの基準がある。BIC は真のモデルが検討しているモデルの中に含まれている場合、真かつ最小のモデルに収束するという(p.144, ここで「収束する」とはどういう意味なのかは不明)。また事前分布に一様分布を仮定した場合の事後確率が高いモデルほど BIC は小さい。ただしこの事前分布の仮定には上で述べたような批判が成り立つ。

私は社会学者にしては AIC の利用に積極的なので、結論には安堵したのだが、そこはあまり重要ではなく、むしろ、それぞれの認識論の特徴やそれらを評価する際の基準や論点が学べる点に、社会学者にとってのこの本の価値はあるように思える。私は具体的な応用的な文脈での有用性という観点からしか統計手法も認識論も見ていないので、Sober の議論の本筋は机上の空論というか、どうでもいい感じがするのだが、こういう論法というか考え方は知っておいてもいいかな、という気はする。

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