Theoretical Sociology

太郎丸博のブログです。研究ノートや雑感などを掲載しています。(このページは太郎丸が自主的に運営しています。京都大学の公式ページではありません。)
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Erola 2010, 「なぜ確率は社会学では成功できなかったのか」

Jani Erola, 2010, "Why Probability Has Not Succeeded in Sociology," Sociology, Vol.44 No.1, pp.121-138.
なぜ確率・統計がこれまで西欧の社会学であまり用いられてこなかったのか論じた論文。英、独、仏の社会学では、大多数は理論的研究か質的研究を行っており、確率・統計を用いた研究は少数派であると Erola は言う。Erola によれば、経済学や心理学ではあれほど確率・統計が用いられているにもかかわらず、社会学だけは用いていないため、心理学や経済学との協同が困難になっている。また、確率論的に考えることで古典的決定論を回避することができるので、事実の記述や説明を単純化できる。さらに不確実性やリスクといった現代的な問題も確率論を援用すればずっと扱いやすくなるという。これほど確率・統計には大きな効用があるのに、なぜ西欧社会学は確率・統計をかたくなに拒んでいるのか、というわけである。

Erola によれば、5つの理由が考えられる。

  1. 西欧社会学では確率革命以前の実証主義(コントやマルクスのイメージ)の強い伝統があり、決定論と例外のない法則や真理が重視される。確率論的に現象をとらえる場合、さまざまな誤差によって例外的な事例が観察されることは、ごくあたりまえのことであるが、確率革命以前の実証主義においては、このような例外は許容されない。それゆえ、確率論は西欧社会学では許容されなかったと Erola はいう。
  2. 社会学の基礎が確率されたのは、ヴェーバーやデュルケムの時代であるが、現在の確率論の基礎が確立されるのは、フィッシャーやネイマンの時代(ヴェーバーやデュルケムの死後)である。そのため、古典的決定論の影響が西欧社会学では決定的になってしまったという。パーソンズには言及されていないが、パーソンズも統計はあまり好きではなく、ラザースフェルドに対してはいささか批判的だったらしい。パーソンズも西欧の社会学から深く学ぶことで自己の行為論や社会システム論を作り上げている。
  3. とうぜん、こうして出来上がった西欧社会学の伝統を変更することには高いコストがかかり、伝統は自己永続化する傾向がある。
  4. 質的研究は、古典的決定論と親和性が高く、質的研究でじゅうぶんだという考えが西欧社会学では強かった。
  5. 確率・統計を利用しても、西欧社会学の学問共同体では特に報酬は得られなかった。
これらがあいまって、西欧社会学では確率・統計は受け入れられなかった、というわけである。

私の説とはだいぶ違うのだが、いかにもありそうな議論ではある。私は質的研究には質的研究の利点や優位点があると思っているので、だいぶ考え方が違うのだが、Erola が言っているのは、西欧の社会学者はバカばっかりだ、ということである。確率・統計というすばらしいツールがあるのに、古い実証主義や短期的な利害にとらわれ、社会学の発展に背を向けてきたのが西欧社会学である、ということになる。わたしはさすがにそこまでは考えていない。

もう一つの矛盾は、それほど確率・統計が優れたツールならば、この論文も確率・統計を使って書けばいいはずであるが、この論文の中では確率・統計は用いられていない。実はこの論文そのものが、質的なアプローチのほうが適切な場合もあることを遂行的に示しているのである。私は方法論に関しては日和見主義のプラグマティストなので、あまりこういう議論には賛成できない。「社会学はリベラルな政治的イデオロギー(所得の再分配やユニバーサルな福祉政策など)と伝統的に強く結びついており、それが質的研究への志向を強めてきた」、というのが私の説なのだが、詳しく知りたい方は、こちらをご覧下さい。

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