Theoretical Sociology

太郎丸博のブログです。研究ノートや雑感などを掲載しています。(このページは太郎丸が自主的に運営しています。京都大学の公式ページではありません。)
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York and Clark 2006, 「マルクス主義・実証主義・科学的社会学:社会的重力と歴史性」

Richard York and Brett Clark, 2006, "MARXISM, POSITIVISM, AND SCIENTIFIC SOCIOLOGY: Social Gravity and Historicity," Sociological Quarterly, Vol.47 No.3, pp.425-450.
唯物論的なマルクス主義はじゅうぶんに科学的であり、実証主義ともある程度は分かり合えることを主張した論文。York and Clark はマルクス主義を以下の3つに分類している。
  1. ヘーゲルの影響を強く受けた観念論的なマルクス主義。具体的には誰が観念論的なマルクス主義なのかは書かれていない。フランクフルト学派や構造主義系のマルクス主義か? あまりはっきりとは書かれていないが、観念論的マルクス主義者は、事実やデータの分析を軽視する人たちのことらしい。
  2. 粗雑な (crude) マルクス主義。これはおそらく教条主義的なマルクス主義者のことで、ある普遍的な法則がこの世界を支配しているとみなすような立場のことである。マルクスの唱えた説を普遍的な法則ととらえ、それがあらゆる時代や社会に機械的に当てはめることができるとみなす人々の事を指す。
  3. 唯物論的マルクス主義。事実や客観性を重視するという点では実証主義者と共通するが、歴史性を重視し、普遍的な法則の存在には懐疑的で、歴史的な文脈を重視する。具体的には、Thompson (1978)グールドの『人間の測りまちがい』Haila and Levins (1992)などがあげられている。
York and Clark は唯物論的なマルクス主義の立場に立っており、あまりはっきりとは書かれていないが、観念論的マルクス主義や粗雑なマルクス主義に対しては批判的な様子である。「実証主義」という言葉もさまざまな意味で用いられているが、統計的な分析を行うような社会学者が想定されており、Jonathan H. Turner が称揚する実証主義が具体的には問題にされている。Turner によれば、社会科学と自然科学の間には本質的な違いはなく、社会学は社会的世界に関する時間とかかわりない (timeless) 不変の (invariant) 法則を見出していくべきであるという。そのためには、実験や調査の結果にもとづいて、そういった法則的な知識は検証されなければならない、というわけである。

York and Clark は、時間とかかわりない (timeless) 法則を見出すべきだ、という主張に対して反対する。なぜなら、ある法則が現代社会に存在することが実証されたとしても、それが過去の社会や将来の社会において(あるいは別の国や文化圏において)も成り立つとは限らないからである。現実には複雑な交互作用効果が存在することがあるが、そのうちのいくつかの変数に関してばらつきのあるデータが得られないということは現実にはよくあることである。それにもかかわらず、手に入るデータから安易に timeless な法則など語っても無意味である。例えば、日本では非正規雇用のほうが正規雇用よりも平均賃金が低い。日本のデータだけ見ていたらそれが自明な鉄の法則であるかのように感じられるかもしれないが、米国のデータでは非正規雇用のほうが賃金が高くある場合もあることが示されており、制度や状況に応じて、賃金格差も変化する。日本でも法律が変われば将来、状況が大きく変化する可能性もある。

このようなわかりきった話を、York and Clark はくどくどと何度も繰り返しているのだが、タイトルにある「社会的重力」とはそのような例の一つである。万有引力の法則によれば、物体の質量が大きいほどお互いに引き合う力が大きくなる。それゆえ重力も地上にあるりんごや木の葉の質量だけでなく、地球そのものの質量によっても規定されている。ところが、地上のふつうの物体の質量や落下スピードを見ているだけでは、地球の質量が重力を規定していることはわからない。地球側の質量に関してもばらつきのあるデータがなければ、万有引力の法則をデータで示すことは難しいというわけである。それゆえ、社会学においても重力のように、歴史的な状況が変われば(重力の例では質量の異なる惑星に行けば)、現在では当たり前に思われる法則が、まったく異なったものになることがあるに違いないのである。

おっしゃるとおりだが、そんな当たり前のことをくどくど 26 ページも書くあたりが、米国の主流派社会学に対する無理解を示しているように思われる。Jonathan H. Turner が何を書いているかは知らないが、いわゆる「実証主義」のレッテルを貼られているような統計志向の社会学者で、歴史を超えた不変の法則を見つけた主張している研究者など見たことがない。つまり、York and Clark の批判は、かなり極端な立場の少数派にしか当てはまらない。このような議論のねじれが生じる一因は、一方で統計を利用する社会学者を実証主義者だとラベリングしておいて、実際に実証主義を論じる際には、そのような計量社会学者ではなく、別の方法論者や哲学者を持ち出して、彼らを批判する、という一貫性を欠く論法にある。

また、「不変の法則を明らかにすることを目指す」ということと、「不変の法則を明らかにする」ということは違う。計量社会学者の中には不変の法則を明らかにすることを「目指し」ている人はいるかもしれないが、現在の知識やデータで不変の法則を「明らかにした」とまで思っている人は少数派であろう。不変の法則を完全に明らかにすることは不可能であろうが、できるだけ一般性があり、多くの社会や時代に当てはまるような知識を目指すことは、一つの立場としてありえるはずである。York and Clark はこのあたりを完全に混同して議論している。確かに米国では知能の人種間の違い等が不変の法則だと本気で主張している研究者が一定の規模で存在しているようなので、これに対する批判という意味があるのはわかるのだが、社会学に限定して考えると、そういう人たちは少数派であるように思える。

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