Theoretical Sociology

太郎丸博のブログです。研究ノートや雑感などを掲載しています。(このページは太郎丸が自主的に運営しています。京都大学の公式ページではありません。)
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Cohen et. al 2011 「フェミニズムの方法論的インパクト: 社会学のやっかいな問題?」

Rachel Lara Cohen, Christina Hughes and Richard Lampard, 2011, "The Methodological Impact of Feminism: A Troubling Issue for Sociology?," Sociology, Vol.45 No.4, pp.570-586.
フェミニズムと計量社会学の対立/親和性について論じた論文。英国の社会学では統計的な分析があまり用いられておらず(Payne and Chamberlane (2004), Platt (2012) を見よ)、そのことが英国社会学の孤立させるという議論もあるという。明記されてはいないが予算やポストの縮小につながるのではないかという危惧もあるのかもしれない。いっぽうイギリス社会学会や Economic and Social Research Council (ESRC) では、フェミニズムの知的貢献が高く評価されており、学際的・国際的な知の発展がフェミニズムによってもたらされたといわれている。それゆえ、さらにフェミニズムと社会学の結びつきが必要とされている。

しかしながら、第二波フェミニズムでは実証主義批判が叫ばれたので、質的分析や理論的な研究が中心というイメージがあり、もしもフェミニズムの勢力が強まれば、ますます統計的分析を社会学から遠ざけ、社会学にとってやっかいな問題を引き起こすのではないか、といった危惧(杞憂?)も考えられる。そこでフェミニズムと統計の関係を、社会学に限らずフェミニズム関連の学術雑誌に掲載された論文でどの程度、統計が用いられているのか分析することで考えていこうというのがこの論文の趣旨である。

データは 2007年の ISI Citation Index ('Women's Studies' category) に収録されている雑誌に掲載されている 256本の論文である(特集論文は除く)。どういう雑誌があるのかがこの論文で一番おもしろいところだったので、あえて以下に示しておく(p.573より転載)。

心理学やヘルス、経済学関連の雑誌がかなり含まれている (7/19 = 37%の雑誌、 102/256 = 40%の論文)のに対して、明確に sociology と称する雑誌がないことが、逆にフェミニズムと社会学のつながりの強さを示しているようで興味深い。

これらの論文のうち 51% が多少なりとも統計を用いており、38% が質的研究、12% が理論的な研究であった。多変量解析を用いていたのは、97/256 = 38% であった。この数字は意外と大きいと解釈されているが、前述のように心理、ヘルス、経済学関連の雑誌では統計的な分析がとうぜん多いはずなので、想定の範囲内の数字とも言える。統計を用いているかどうかを目的変数としてロジスティック回帰分析したところ、以下のような変数が正の有意な効果を示した。

  • 著者の国籍が米国であること
  • 著者の人数
  • 論文中での Feminism/Feminist への言及回数が少ないこと
  • 論文で用いる方法を正当化する議論をしていないこと
  • 掲載されている雑誌のカテゴリが、上の Table 1 で、"Women" または "Other" に該当すること
第一著者の性別や論文中で自身をフェミニストと明示しているかどうかは有意な効果を示さなかった。おもしろいのは「論文中での Feminism/Feminist への言及回数」が非常に強く効いている点で、こんな単純な指標で意味のある議論ができるのか最初は疑ったのだが、まったく言及がない場合と1〜10回の言及がある場合で2.8倍程度のオッズ比であり、11回以上だと 5.9倍のオッズ比になり、非常に強く効いていることがわかる。つまり、フェミニズム関連の研究はやはり統計を用いない傾向があるということになる。

Cohen, Hughes and Lampard は、統計の利用を全面否定するような考え方は、現代のフェミニズムでは少数派であるので、必ずしも統計とフェミニズムは相容れないわけではないと述べている。しかしながら、用いる方法を正当化する議論をしていない論文ほど、統計を使いやすいという点に懸念を示している。第二波以降のフェミニズムでは再帰性/反省性 (reflexivity) が重要な役割を果たしており、方法論に関して反省的な議論をしないような計量社会学は、フェミニズムには受け入れられない可能性があるという。とはいえ、フェミニズムの観点を計量社会学に持ち込むことで計量社会学をより豊かにする可能性を示唆して論文は締めくくられている。

議論がねじれていて最初の問題設定・分析と結論がきちんとかみ合っていない論文である。仮にこの分析が妥当だとすると、当初の問題に対して分析結果から示唆されることは、フェミニズムの質的研究や理論研究に対する志向が現在のままでフェミニズム系の論文が増えれば、とうぜん計量社会学の比率はますます下がるということである。結論部で統計とフェミニズムの相性について論じられているが、この話は分析結果から示唆されるわけではなく、結論部で急に導入された論点であるので、それまでの議論の「結論」にはまったくなっていない。

また、分析も問題設定とあまりかみあわない。問題はフェミニズムが社会学に与える影響のはずである。しかし分析には、経済学や健康科学など社会学とは明らかに異なるディシプリンの論文がかなり含まれている。社会学に対してフェミニズムの影響が強まっていくときに、フェミニスト経済学とかフェミニスト心理学の影響が社会学に及ぶのだろうか。私の印象では日本や英国のフェミニズム系の社会学者がフェミニスト経済学やフェミニスト心理学に言及しているのはあまり見ない気がする。確かにフェミニズムは社会学に限らず、さまざまな学問分野に広がる脱領域的な運動である。それゆえ、「フェミニズム」の社会学に対するインパクトを考える場合、社会学に限らず、さまざまな学問分野のフェミニズムの特徴を検討するのは、一見適切に思えるかもしれない。しかし、実際にはフェミニズムも一枚岩ではないだろうし、ディシプリンの垣根を軽視するのは適切とは思えない。やはり社会学関連の雑誌に掲載の論文を対象として分析したほうが適切だったのではないだろうか。

さらに言えば、Cohen, Hughes and Lampard は、計量社会学は方法論に対する反省性が足りないというが、それもかなり疑わしい。論文中に方法を正当化する議論が書かれていなかったからといって、方法論について反省していないということにはならない。方法論の正当化の議論が必要かどうかは、ケースバイケースで、例えば男女の平均賃金が地域によって異なることを問題とする場合、わざわざ統計に言及することを正当化する必要があるのだろうか? 投稿論文は紙幅の制限が厳しいので書かなくてもいいことは書かないのが一般的である。Cohen, Hughes and Lampard は、論文がフェミニスト的かどうか分類する際にフラストレーションを感じた、つまり、このような分類には一定の限界があると私たちはちゃんと理解しているのよ、と「反省」して見せるのだが、アフターコーディングがフラストレイティングな作業であることは計量社会学者にとっては大前提なのであり、わざわざ論文に書いて見せるようなことではない。このあたりの感覚のズレも、分析結果の解釈をおかしくしてしまっているように思える。

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コメント
from: abe daijyu   2018/10/05 7:36 AM
日本語で命令形ってほとんど見ないのに、
参考文献を挙げるという(文書全体からすれば副次的・補強的であるはずの)場合に登場するというのは面白い現象だと思う
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