Theoretical Sociology

太郎丸博のブログです。研究ノートや雑感などを掲載しています。(このページは太郎丸が自主的に運営しています。京都大学の公式ページではありません。)
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Charles and Bradley 2002, 「分離すれど平等? 高等教育における性別分離の国際比較研究」

Maria Charles and Karen Bradley, 2002, "Equal but Separate? A Cross-National Study of Sex Segregation in Higher Education," American Sociological Review, Vol.67 No.4, pp.pp. 573-599.
高等教育機関における性別分離を垂直的な分離と水平的な分離に分けて国際比較した研究。今日の欧米社会では、女性の高等教育(短大・高専、4年制大学、大学院など)への進学率は男女でほとんど差がなく、場合によっては女性のほうが高くなっている。しかし、高等教育期間の中でどのような学校や専門分野に進むのか、という点を見ると、男女で顕著な差がある。そのことがその後の女性の社会的地位や収入を男性に比べて低くしていることはまず間違いない。それゆえ、そのような高等教育の内部での性別分離の強さがどのような要因によって規定されるのかを明らかにすることは、重要な研究課題である。

Charles and Bradley は、性別分離を垂直的分離と水平的分離の二次元でとらえる。高等教育における垂直的分離とは、女性のほうが1〜2年制の高等教育機関(日本の場合なら短大や高専など)に進学しやすく、大学院には進学しにくい、といった差のことである。水平的分離とは女性のほうが人文系、教育系、保健系といった分野を専攻しやすく、工学系や数学・コンピュータ科学といった分野を専攻しにくい(社会科学や理学系は中間的である)現象を指す。この水平的分離と垂直的分離は別の現象で、両者を区別して考えるべきであると、Charles and Bradley は言う。

従来の進化論的な理論(近代化論やマルクス主義、しばしばフェミニズム系の理論も)では、男女の不平等や分離は一次元的にとらえられる傾向があり、そのような不平等が、近代化や生産様式や家父長制といった社会的要因によって影響を受けると考えられてきたという。しかし、高等教育機関における性別分離を二次元でとらえるならば、垂直的分離と水平的分離を規定する社会的要因は異なっているかもしれない。また、近代的で進歩的とされるような社会的な要因が垂直または水平的な分離を強めることもあるかもしれない。

そのような性別分離に影響を及ぼす社会的要因として、以下の4つがあげられている。

  1. ジェンダー平等主義。とうぜんジェンダー平等主義の強い社会では、性別分離が弱くなると予想される。国レベルのジェンダー平等主義の強さは、ISSP1994の「男の仕事は金を稼ぐことで女の仕事は家事をすることである」という質問に「反対」または「強く反対」と回答した人の比率で測定されている。
  2. 高等教育機関の多様性。高等教育機関の卒業生全員に占める短大・高専など2年制の高等教育機関の卒業生の比率で操作化されている。2年制の高等教育機関は、女性向けに作られている場合も多いので、この規模が大きい社会では女性が4年制大学に進学する意欲が弱まりやすいため、垂直的な分離が強化されるという。また、短大・高専など2年制の高等教育機関が増えると高等教育機関全体の威信が低下し、そのせいで高等教育内部でのジェンダーの重要性 (salience) が増加するため、水平的な分離が強化されるという。というのも、多重 (multiple) アイデンティティ理論よれば、自己 (self) は、さまざまなアイデンティティ(社会的役割やメンバーシップ、性格、等々)から作られるが、相対的な顕現性 (salience) が高いのアイデンティティほど、実際の行為への影響力が高まるという。それゆえ、高等教育の威信が下がれば、大学生であるというアイデンティティの相対的顕現性が下がり、女である/男であるというジェンダー・アイデンティティの相対的な顕現性が高まる。それゆえ、ジェンダーに沿った行動がとられやすくなり、それが結局、専攻分野の選択にもあらわれ、水平的性別分離が強まるという理屈である。
  3. 女性の高等教育進学率。進化論的な理論では、しばしば女性の高等教育進学率が高まれば、高等教育内部での性別分離も弱まると考えられてきた。しかし、実際には花嫁修業的な専攻分野や短大などの拡大が女性の高等教育進学率の上昇と結びついてきたので、これは逆に垂直的分離や水平的分離を強める可能性もあるという。
  4. 女性の経済的役割。女子労働力率で測定されている。女性がこれまであまり就いていなかったような職業に就く女性が増えると、その職業に就きたいという女性がさらに増え、その職業に就くための教育を受ける女性が増える、というメカニズムが働くので、労働市場と教育の関係は密接であると考えられる。ただし、労働力率が高等教育機関における性別分離とどう関係するのかは明示されていない。

メインのデータは UNESCO (国際連合教育科学文化機関、United Nations Educational, Scientific and Cultural Organization) の統計からとってきているようで、日本を含む欧米12カ国の1995〜1997年の高等教育機関卒業者数ある。分析の結果、ジェンダー平等主義が弱く高等教育機関の多様性が高い国ほど垂直的分離も水平的分離も強いと結論付けられている。ただし、これらの変数の効果は垂直的分離に対してのほうが強いという。また、女子労働力率は垂直的分離には影響しないが、水平的分離にはやや複雑に影響しており、保健系への女性の進学を極端に増やし、その他の分野への進学は減らすという結果が示されている。また、日本を除けば、垂直的分離と水平的分離の程度の相関は -.11 でほとんど無視しうる程度だと述べられている。

理論についてもデータ分析のやり方についても、いろいろ批判はできる(特に分析方法については気にいらない点が多いが書いていたら長くなるので割愛)のだが、この論文の素晴らしい点は、「女性のほうが文系に進学しやすい」という一見当たり前の事実を探求すべき研究対象として批判的に考察した点にある。実際、高等教育内部での性別分離の程度は国によってかなり異なるのであり、そのような相違をもたらしている社会的な要因を検討して見せたというところに価値があったのだと思う。この研究はのちに、Charles and Bradley (2009) へと発展していく。また、 Charles は性別職域分離の研究でもよく知られているので、興味のある方は、 Charles (2003) の紹介をご覧ください。

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