Theoretical Sociology

太郎丸博のブログです。研究ノートや雑感などを掲載しています。(このページは太郎丸が自主的に運営しています。京都大学の公式ページではありません。)
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人種、ジェンダー、職場権力
2005.01.17 理論社会学演習
報告:井出草平
James R. Elliott(Tulane University)
Ryan A. Smith(The City University of New York)
AMERICAN SOCIOLOGICAL REVIEW, 2004, VOL. 69 (365-386)


 職場における権力についての論文。女性やマイノリティーは白人男性に比べて昇進する際に不平等がある。また高い地位になればなるほど不平等は大きくなるのではないか? 具体的な不平等の状態を調べる。


権力
権力とは「人々や物事をコントロールする資源」(Wolf & Fligstein)と定義され社会階層の本質的なアスペクトである。

この論文の意義
―性やマイノリティーの社会参加が増え、職場での不平等が問題となってきたが、今後も職場は平等への試みの中心的な戦いの場になる

◆屮ラスの天井」メタファー アメリカでは管理職の4割が女性だが「ガラスの天井」に阻まれてトップの座に手が届かないという状況のメタファー

N姪な先行研究は人種かジェンダーに焦点を当てることはあっても、両方に当てることはなかった

この論文の目的
.泪ぅ離螢謄ーや女性がどのくらい不平等であるかを評価する
各グループの不平等の状況とそのメカニズムを調べる


仮説1
 白人男性に比較してマイノリティーと女性の昇進の見込みは減少していく



・アメリカでは人男性に比べて女性の昇進可能性は減少していない(Baxter & Wright)
・白人と黒人の女性は白人男性に比べて収入面で不平等があるが、黒人男性は不平等があるとは言えない。人種よりもジェンダーに不平等があるという結論(Cotter)


これらの研究は給与の研究で職場権力の研究ではない。とはいえ給与の不平等は職場権力の不平等から生じてる

仮説2
女性やマイノリティーは白人男性に比べネットワークにおいて不平等がある

・ジョブ・トレーニングはフォーマルなものよりもインフォーマルなものが多い
・女性やマイノリティーの排除はこの仕事に関係したネットワーク(情報・機会)の内部で起こりっている。(同様に対外的にも)(McGuire)


仮説3
女性やマイノリティーは白人男性に比べ教育と経験によって昇進する

・女性やマイノリティーは(ネットワークを頼れないので)白人男性に比べ教育レベルや経験というものによって昇進を行っている

仮説4
白人男性の比率は同質の上司を持つことによって増える

コミュニケーション、裁量、信頼は社会的に似た背景を持つことによって容易になる
「同質性の再生産」(Kanter)

仮説5
同質の上司を持つ女性とマイノリティーは昇進の際に異質の上司を持つ女性とマイノリティーに比べてネットワーク・アシストに依存し、人的資本には依存しない傾向がある


データ
the Multi-City Survey of Urban Inequality (MCSUI)を使用。このデータは1992〜1994年の間にアトランタ、ボストン、ロサンゼルスでとられたもの。住む地域による層化多段抽出、約2時間の面接調査。データから被雇用の21〜64歳を選んだ。



変数
a あなたには部下がいますか?
b 他人によって報酬が影響されますか?
c 雇用・解雇の権限を持っていますか?


0=ワーカー (すべての質問にNo)
1=スーパーバイザー (aのみにYes)
2=マネージャー (aにYes、bかcにYes) bとcの相関が高いから
多項回帰。0と1、2と1を比べ2と1が0と1よりも大きければ、問題となっている増加する不平等が存在すると結論づけられる。
MCSUIでは5パーセントがスーパーバイザーかマネージャーの仕事についている(センサスの職業コード23−42)。スーパーバイザーは193のセンサスコードの職業と関係しており、マネージャーは133の職業コードと関係している。

この3つの分け方が正当かどうかを調べるために平均とt検定を行った結果、単調であり統計的に有意な差がでた。


ダミー変数
仮説2〜5
「仕事をえたのは友達を通じてか、親戚を通じてか、他の人を通じてか、新聞の広告か、もしくは他の方法か?」という質問でネットワークのアシストを操作化する
仮説1、3、5
4つの指標で人的資本を操作化。4つの指標とは、教育は教育年数、仕事経験は学校(フルタイム)を離れてからの年数、同業種経験、在職年数)

仮説4と5
自分と似たような(同性、同人種、同民族)上司を持っている(=1)
自分と似ていない上司を持っている(=0)


モデル1
表3 (統計的にコントロールをせずに全体のギャップを示している)
1a、1bは増加する不平等の仮説を最初の支持をしている(両側検定では白人女性を除く(有意水準5%)、片側検定では含む)


例えば、スーパーバイザーとワーカーでは、黒人男性と白人男性に統計的に有意な差はない。しかし、マネージャーとスーパーバイザーの間では、黒人男性は白人男性の0.45倍(つまり約半分)の差がある。従って白人男性に比較したときに黒人男性には増加する不平等が存在すると結論づけられる。<


モデル2(厳格な検定を行うために)
人的資本の要因を追加した(教育年数、就労年数、同業種経験、在職期間)


モデル1とモデル2の結果を比較するとラテン系男性と白人女性において不平等が見られるが、黒人男性、黒人女性、ラテン系女性には不平等は見られなくなる。


次にモデル2に加えた心的資本にさらに就労背景(職場規模、民間/公共機関、職業的位置、就労時間)を加えてみる。


モデル2と3を比べてみると、黒人男性とラテン系女性には不平等は見られないが、黒人女性にはみられる。

ここから分かることは、だいたいの人種−性別グループとも白人男性と比較すると不平等が存在するが、人的資本と就労背景でコントロールすると黒人女性のみが他のグループに比べて直接的な差別を受けていることがわかる。ここから分かることは残りのグループ(黒人男性、ラテン系男性、白人女性、ラテン系女性)は増加する不平等から自由ということではなく、直接的な差別ではない人的資本や就労環境を通した間接的なプロセスが影響しているということだ。

これらの結果にたいする潜在的批判として、女性が自発的に就労時間をセーブしたり、妻の役割にエネルギーを回しているのではないかというものがあるだろう。このことを調査するために第四の多項回帰方程式を計算する。モデル3にさらに「結婚」「子供の有無」「家族の有無」を追加する。カイ二乗検定の結果モデル3から有意に向上することはなかった。3つのうちどの変数でも5%基準で有意ではなく、また黒人女性の不平等には強い結果が出た。


表4(白人男性を基準)
ワーカーからスーパーバイザーを区別する主要因は在職期間。
白人男性がワーカーからスーパーバイザーに昇進する平均で5%増加していて、このことはスーパーバイザーからマネージャーへの昇進にもわずかな効果を与えている。
白人男性は上司が白人でない場合より監督者が白人男性の場合の方がスーパーバイザーからマネージャーへ2倍昇進しやすい。上司が同質であることは重要であるが、ネットワークのアシストは重要ではない。
スーパーバイザーからマネージャーに関しては白人男性・黒人男性とも同質の上司を持っているという内集団を優遇する傾向は両者の間で統計的に有意ではなく似たような傾向がある。 ワーカーからスーパーバイザーに上がるときは在職年数、スーパーバイザーからマネージャーに上がるときは内集団優遇という傾向。


この結果は仮説2〜4を支持しない。黒人男性に関しては白人男性に比べて「隔離されつつ似たような傾向で昇進する」ということが分かる。

ラテン系男性の場合も一つの例外を除いて同じ傾向を示す。
白人に比べてワーカーからスーパーバイザーに昇進するには在職年数が強い役割を果たす。
ラテン系男性に関しては仮説2〜4について多少の支持を見つけることができた。
白人女性の場合、ワーカーからスーパーバイザーへの昇進は白人男性と同じように行われるが、スーパーバイザーからマネージャーへの昇進は同質の上司を持つというような環境では滅多に行われない(表には示されていない)。白人女性は白人男性に比べ3倍も違った属性をもった上司のもとで昇進する。この調査ではどのグループでも増加する不平等は有意な形で見出されなかった。

仮説4は白人女性の場合は支持できるが、仮説2と3は支持できない。

ラテン系女性の場合、白人男性と比較してより内集団優遇がさらに小さくなると言うことを除いて、白人女性と同じ傾向を持つ。
白人女性の場合と同様に、仮説4は支持できるが、仮説2と3は支持できない。

黒人女性の場合は、白人男性に比べてネットワークのアシストがますます効果がある。

(表には示していないが)白人男性も他のグループとほぼ同じ程度にネットワークアシストに依存している。

黒人女性はネットワークアシストを受けたときには、ワーカーからスーパーバイザーへ39%昇進が増加する。スーパーバイザーからマネージャーへの昇進は500%増加する。 黒人女性は多くの場合黒人男性に職業上のポジションを得る際に頼っていることもデータは示している。

全体的には表4は仮説2と3に対しては支持はなく、場合によって仮説4の支持がある。仮説4は、黒人男性・ラテン系男性・黒人女性の場合には支持されない。


同質性の再生産
上司の同質性の代わりに同僚の同質性をダミー変数化
/夕鐡マジョリティー(職場で最も多い人種/民族)
∪別的マジョリティー


同性質の上司の指標に代わり同性質の同僚の指標を使って表4で報告したことを再計算した

ただ一つ本質的に変化したことがある。それは白人男性が昇進際に水平的な同質性の恩恵を受けていないということだ。関連して白人女性・ラテン系女性は水平的な同質性の再生産において白人男性と有意な差はない。


表5
1行目は同質性の再生産が行われる相対的機会の情報
案の定、白人男性の同質性の再生産の相対的機会は高い。
例えば、マネージャーの59%、スーパーバイザーの41%、ワーカーの39%でみられた。
2行目。女性とマイノリティーが実際には白人男性よりも同質性の再生産を行っていることがわかる。
例えば、白人男性の上司の28%が他の白人男性を選んでいる。白人女性では36%、黒人男性、ラテン系男性・女性では約50%、黒人女性では65%だった。マネージャー・ポジションではほとんど差はない。


結局、すべての人種・性別グループで同質性の再生産は行われている。ただ、白人男性は相対的に機会が多い。言い換えると、同質性の再生産は普遍的かも知れないが、機会においてはそうではない。

3行目。
マネージャーポジションの27%は一貫して白人男性の再生産が行われている。これは白人女性の3倍以上、各マイノリティーグループの8倍以上である。


上司の性質について
仮説5は上司が同質か否かに関係ない方法で女性やマイノリティーが昇進するというものだった。この仮説を調べるために、相互関係条件(上司の同質性、人的資本の4要素−教育年数、就労年数、同業種経験、在職期間)を加えた表3のモデル3と同じ独立変数を使った。

このテストでは仮説5に対してわずかの支持があった。

黒人男性、ラテン系男性、黒人女性に対しては統計的に有意ではなかった。
一方、白人男性に関しては有意な結果があった。


図1
上の図(ワーカー→スーパーバイザー)
白人女性の場合、ワーカーからスーパーバイザーへの昇進は同質の上司のもとで行われる。この傾向の逆転は就労年数15〜20で起こる。この時点で平等になる。(昇進そのものが少ないが)

下の図(スーパーバイザー→マネージャー)
同質ではない上司の下での昇進が多い。


’鮨予性のワーカーからスーパーバイザーへの昇進は白人上司の元で比較的早く行われる
白人女性は白人男性の上司の下で昇進しやすい。理由は上司が白人女性であるより白人男性であることが多いからだ。


これらの結果は仮説5とは大きく違ったものになる
白人男性の上司の下のスーパーバイザーからマネージャーへの昇進では就労年数が重要になるのではないのだ。

ネットワークアシストと人的資本は上司の同質性に関係なく黒人男性、黒人女性、ラテン系男性の昇進には平等であるというのが大まかな結果である。しかし、白人女性の場合は同質性がスーパーバイザーの地位を得るには有意だが、マネージャーの地位には関係がない。


結論
この論文は増加する不平等が職場権力において存在するかを先行研究の範囲をより広げた形(女性やマイノリティーを含めて)調べることであった。

ラテン系男性と白人女性の間では、白人男性に比較して増加する不平等が人的資本の欠乏として表れている。(特にラテン系男性は教育年数、白人女性は就労年数において)従って、人的資本の改善が政策として勧められるかもしれないが2つの点で疑わしい。

第1に白人男性は最近はラテン系男性の競争力を削ぐためにラテン系男性を差別する必要がないと言うことだ。なぜなら、教育レベルの違いが同じ結果を生み出しているからだ。もし白人男性とラテン系男性の人的資本の差が無くなっていけば、競争は激化し、ラテン系男性に対して白人男性は結託するかもしれない。

第2に白人女性は白人男性の元で仕事の経験を積むのは良くない。アメリカの職場では白人男性がマジョリティーだが、このことが白人女性の人的資本の向上を相殺している可能性がある。

ネットワークに関しては、予期に反して強力な経験的な結果がでた。 白人男性ではなく、黒人女性は昇進に際してはネットワークアシストを頼っている。このパターンはいくつかの局面で確認される。

最後に、同性質の者を好むということに関して、性別・人種に関わらず、ほとんどの上司は同質性を持ったものを地位につかせる傾向にある。つまり、カンターが言った「同質性の再生産」である。白人男性は他のグループよりも職場での権力を得やすいために、白人男性は同質性を好むということを行う機会が多く、白人男性のアドバンテージを再生産している。








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