Theoretical Sociology

太郎丸博のブログです。研究ノートや雑感などを掲載しています。(このページは太郎丸が自主的に運営しています。京都大学の公式ページではありません。)
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「欧州15カ国における生活満足度のトレンド 1973-2002」 Bjørnskov et. al. 2008

Christian Bjørnskov, Nabanita Datta Gupta and Peder J Pedersen, 2008, "Analysing trends in subjective well-being in 15 European countries, 1973-2002," Journal of Happiness Studies, Vol.9 No.2, pp.317-330.
一人あたり GDP そのものではなく、一人あたり GDPの成長率が、平均生活満足度を規定すると論じた論文。前回の記事前々回の記事で紹介したように、経済的豊かさと幸福感や Well-Being は、時系列的に見ると、必ずしも相関しない。その理由として、生活水準が上昇してもすぐにその状態に慣れてしまうため、期待の水準が上昇してしまうという心理的なメカニズムの存在が考えられる。だとすれば、期待を上回るスピードで生活水準が上昇すれば、平均生活満足度も上がるかもしれない。つまり、一人あたり GDP が上がっても平均生活満足度が上がるとは限らないが、一人あたり GDP の成長率が上がれば(例えば 1% から 2% に上昇すれば)平均生活満足度も上がるのではないか、という仮説が考えられる。また、経済的豊かさと幸福感や Well-Being が相関しないもう一つの理由として、相対的剥奪感の存在が考えられる。他者の豊かさと自分の豊かさの比較が幸福感に影響するというわけである。

上記のような仮説を検証するために、国を単位としたパネル・データを作り(ヨーロッパ15カ国×15時点だが欠損値があるのでサンプル・サイズは110〜130ぐらい、生活満足度はユーロバロメータから得ている)、独立変数として、

  1. 一人あたり GDP の成長率、
  2. 隣国と自国の一人あたり GDP 成長率の比、
  3. 平均寿命の増加率
  4. 隣国と自国の政府支出額の比
を投入し、いずれも概ね有意な結果を得ている。つまり、上記の仮説は2つとも支持されている。

理屈はクリアなので、異論はないのだが、二次の自己相関 (AR2) が仮定されているのに、通常の最小二乗法 (OLS) で推定されているのは、いかがなものかと思った。また、パネル・データなのにプール・データで OLS 推定、というのも問題だろう。前回の論文前々回の論文も同じような分析上の問題があるのだが、この業界では、こういう分析手法が標準なのだろうか。何か深いわけがあってそうなっているのかもしれないが、私の知識では、まずい分析のように思う。

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