Theoretical Sociology

太郎丸博のブログです。研究ノートや雑感などを掲載しています。(このページは太郎丸が自主的に運営しています。京都大学の公式ページではありません。)
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『精神疾患言説の歴史社会学:「心の病」はなぜ流行するのか』2013, 佐藤雅浩、あるいは精神医学とジャーナリズムの「場」のリンク

19世紀の末から20世紀の中ごろまでに読売新聞と朝日新聞の紙上に表れた精神疾患言説の変遷を記述・解釈した本。言説分析の一種ということになろうが、唯言説主義みたいな極端な方法ではなく、データとしてあつかう言説の外部の要因も必要に応じて参照するという、穏当な方法が用いられており、私は高く評価したい(が、原理主義的な言説至上主義者からは批判されるのかもしれない)。文章も平易でわかりやすい。難点を言えば、厚すぎる(518ページ)という点だろうか。

すべての精神疾患言説が分析されているのではなく、神経病、神経衰弱、ヒステリー、外傷性神経症、ノイローゼといった特定のカテゴリが集中的に分析されている。副題となっている「「心の病」はなぜ流行するのか」、という問いに簡潔に答えるとすると、

  • 帝大医学部のエリート医師が記事の執筆に関与し、
  • 精神医療の変動期に当該の精神疾患カテゴリが注目され、
  • その疾患の病因は不明確で、
  • 政治的抑制因子が存在しない、
場合に、その精神疾患カテゴリが流行するということになるのだが、この一般的な問いは、本全体を貫くメインテーマというわけではなく、本を売るための「煽り文句」に近い。副題のような一般的な問いに答えるためには、たった5種類の精神疾患を扱うだけではぜんぜん数が足りないし、J. S. ミルの一致法・差異法が用いられているが、これはレイガンのブール代数アプローチという上位互換の手法がすでに存在するので(東大では知られていないんだろうが)、方法論的にも古すぎると言える。なので、読者は副題は忘れたほうがよい。むしろそれぞれの精神疾患がどのように語られたのかを記述し、その背景を解釈するといった作業が主要なテーマとなっており、それがどの程度うまくいっているのかは専門外なのでよくわからないが、私は楽しめた。

個人的に興味深かったのは、精神医学と新聞ジャーナリズムの関係で、両者の関係は一言でいえば「協調と緊張」であるという解釈である。精神科医の解説やインタビューが新聞紙上を飾ることで、医者は知名度を高めたり、顧客を集めたり、政治的な影響力を高めることができる場合がある。いっぽう新聞社は精神疾患に関するおもしろい記事を得ることができる。これが協調。その反面、新聞紙上には繰り返し、精神病院批判や精神疾患のインフレ批判が掲載される。これが緊張。こう書くと精神医学は新聞ジャーナリズムにいいように利用されているようにとられてしまうかもしれないが、必ずしもそうとは言えず、精神病院や精神医学批判もしばしば医師の言葉として語られており、精神科医にも良心的な人々がいることを示すことで、精神医学界に自浄機能があることを暗示し、ドラスティックな精神医学解体論を抑止する働きがあったという。

上記の解釈がどこまで正鵠を射ているのかは知らないが、精神医学界という場 (field) はかなり密接にジャーナリズムという場とリンクしているという点が面白いと思った。「場」という言葉は、ブルデュー的な意味で使っている(つもりな)のだが、精神医学界とジャーナリズムの業界は、基本的には異なる場として概念化したほうがいいと思う。両者は相互に異なっているもののリンクしており、その場と場の関係は、20世紀を通してほとんど変化していないということになる。こういう場と場の関係とその変容というのはけっこうおもしろいテーマだと思うのだが、まだあまり見たことがない。

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