Theoretical Sociology

太郎丸博のブログです。研究ノートや雑感などを掲載しています。(このページは太郎丸が自主的に運営しています。京都大学の公式ページではありません。)
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独断と偏見で選ぶ第87回日本社会学会大会ベスト報告: 渡邊勉「兵役における不平等:SSM調査データによる徴兵・招集の分析」

例によって、ごく一部の報告しか聞いていないが、その中から私の独断と偏見で選ぶ、今回の日本社会学会大会ベスト報告は、

渡邊勉「兵役における不平等:SSM調査データによる徴兵・招集の分析」
だーー! 第二次世界大戦時に多くの若者が兵役についたことは周知の事実であるが、このような不幸がすべての若い男性に同じ確率で生じたことなのか、それとも社会階層によって兵役というリスクは異なるのか、という問題が、この研究のリサーチ・クエスチョンである。社会階層と社会移動全国調査 (SSM) は 1955年にスタートしているが、SSM では生まれてから調査時点までの職業経歴(職歴)をすべて尋ねているので、この職歴データからその人が兵役の経験があるのかどうかがわかる。

学歴との関連を見ると、高等小学校と中等学校(戦時中なのでいずれも旧制の学歴)でもっとも兵役率が高く、旧制高校以上で最も低い。尋常小学校卒は、両者の中間ぐらいである。検定はなされていないので、統計的に有意かどうかは不明だが、徴兵経験者のサンプルは総数で 715 という記載とオッズ比の大きさから考えると、たぶん有意な違いがあるのではないだろうか。また、このような学歴の差は、1937年生まれ以降縮小しており、太平洋戦争の拡大によってすべての学歴の者が同じ確率で動員されていったという。私はこの時代の歴史についてはまったくの素人だが、このような分析結果は概ね通説を裏付けるものだそうである。

兵役につく直前の職業別に見ると、農業は相対的に兵役につきやすく、上層ホワイトカラー(たぶん専門職・管理職のこと)や「学生・無職」はつきにくい。下層ホワイトカラー(事務職やサービス職)やブルーカラーは両者の中間であるが、終戦に近づくと、農業と下層ホワイト、ブルーの違いは有意ではなくなる。これは国内の食糧不足から、徴兵方針の転換があったからだそうである。

兵役についていた年数を比較すると、学歴や職業による差はなく、社会階層は復員には影響力がないという結果である。

このデータは、1975年時点で生存していた人からサンプリングされているので、戦死したり、生還しても短命であればデータには含まれないので、セレクション・バイアスがかかっている。発表の時の橋本健二先生のコメントによれば、資本家や新中間階級のほうが、旧中間階級や労働者階級よりも戦死率が低いそうである(不正確な記憶なので注意)。戦死率の分母が同世代の男性なのか、兵役についた男性なのか、ちゃんと確認していないが、はなしの文脈からは、兵役についた男性のうち戦死する確率、という意味で私は理解した。だとすると、労働者階級は生還率が低く、データから漏れやすいので、実際には労働者の兵役率はこの報告での推定値よりもさらに高く、兵役率の階層間格差はもっと大きいことになる。戦後の生存率についても同様で、高階層ほど長生きするという説が一般的だと思うので、やはり階層間の兵役率格差はけっこう大きかったということだろう。

以上のような研究成果は、戦時中の歴史研究の成果を裏付けるもので、特に目新しい事実ではないという見方もできるそうである。しかし、統計的にそのような事実を裏付けることの価値は高い。戦時下の動員と階層/階級構造がどう関係しているのか、という問題は、保守政権下で戦争がリアルな可能性となりつつある今日、ホットな問題といえよう。「希望は戦争」、「国民全員が苦しむ平等」を戦争がもたらす、なんて話は甘っちょろい幻想なのだ、ということこをはっきりさせるためにも、こういった研究には期待したい。

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