Theoretical Sociology

太郎丸博のブログです。研究ノートや雑感などを掲載しています。(このページは太郎丸が自主的に運営しています。京都大学の公式ページではありません。)
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自己表出主義が性別職域分離を生み出す? Cech 2013

Erin A. Cech, 2013, "The Self-Expressive Edge of Occupational Sex Segregation," American Journal of Sociology, Vol.119 No.3, pp.pp. 747-789.
自己表出主義を重んじる社会における性別職域分離の規定要因を論じた論文。「男は仕事、女は家庭」といった単純な性役割意識が弱まっても、別の形の意識が性別分離を強める、といった説が、近年、ちゃんとしたデータ分析によって支持されつつある。この種の議論は以前から専門家の間ではなされていたと思うが、あくまでみんなが勝手な印象を語っていたり、そのような説と整合的な事例を紹介するレベルにとどまっていた。それが最近ではいちおう統計的なデータ分析の俎上にのるようになって来ているというわけである。古くは、大和(1995) のような例があるが、欧米では2000年代に入ってから盛んになってきたという印象である。大和の議論は、「子供を産み育てるという仕事は本質的に女性に向いている」といった意識を示す因子(愛による再生産役割)を、「男は仕事、女は家庭」といった役割分業を肯定する意識を示す因子とは直交する形で抽出でき、女性の就業や収入と関連するのは前者の愛による再生産役割を肯定する意識のほうだ、という説である。その後、類似の研究が国内でも散発的になされているが、あまり本などになっていないので、知らない人も多いのではないだろうか。一方、米国では Maria Charles がこの種の説を精力的に検証している。Charles and Grusky (2004) では、ジェンダー平等主義とジェンダー本質主義を分けて考え、前者が垂直的性別職域分離(女性のほうが社会経済的地位が低い職業に就きやすいこと)を、後者が水平的職域分離(女性のほうがノンマニュアルの職に就きやすいこと)を引き起こす、という説を唱えた。さらに Charles and Bradley (2009)では、自己表出主義の強い社会(個人の自由な選択を重要視する社会、自己表出主義については Inglehart (1997) および Inglehart and Baker (2002) を参照)においては、個人の自己イメージが大学での専攻分野を強く規定するが、男女で自己イメージが大きく異なるため、自由が認められているがゆえに、男女で専攻する学問が大きく異なってしまうという。

これらの議論のロジックは、自己表出主義的な女性ほど女性的な役割(男性なら男性的役割)を担いやすい、というものではなく、自己表出主義の強い社会では、女性も男性もステレオタイプ的な自己イメージに素直に従って、女性的(男性なら男性的)役割を担いやすい、というものである。そこで、Cech は、自己イメージと職業(あるいは大学院での専攻分野)の関連を、米国の大学生のパネル・データを使って検証している。理屈どおりならば、男性も女性も、女性的な自己イメージの持ち主ほど女性的な職業や分野を選びやすいはずである(男性の場合、男性的な自己イメージの持ち主ほど男性的な分野を専攻しやすい、といったほうがわかりやすいか)。職業と自己イメージはとうぜん関連しそうであるが、パネルデータを使ってそれを確認するという点がポイントであろう。

データは下記の4大学の学生のパネル・データである。

  • Massachusetts Institute of Technology (MIT),
  • the Franklin W. Olin College of Engineering (Olin),
  • Smith College (Smith)
  • the University of Massachusetts, Amherst (UMass)
従属変数は、学部を卒業したあとについた職種(大学院に進学した場合はその分野)にしめる女性の比率、主な説明変数は、女性的な自己イメージの強さを示す3つの指標(7件法)である。
  • Usually I am very unemotional” to “very emotional,”
  • “usually I am very systematic” to “very unsystematic,”
  • “usually I like to work with things” to “like to work with people"
これらの質問は大学2年生の時点で尋ねられている。

色々なモデルで検討がなされているが、一貫して、自分のことを unsystematic (計画的、体系的でない)だと考えている人ほど男女とも女性的な職業や学問分野に進みやすい、また、人と関わる仕事のほうが好きだと答えている女性ほど女性的な仕事や学問分野に進みやすい、という結果が得られている。その他については、有意な結果が出ることもある(性役割意識をコントロールしなければ自分を感情的だと思う男女ほど女性的な進路に進みやすい)が、あまり効果が無いという印象である。このような結果を総合的に考えると、ある種の(この論文では unsystematic だという)自己イメージは、大学生を女性的(あるいは男性的な)進路へと進ませるが、どのような自己イメージが、そのような性別分離を生むのかは、まだまだ検討の余地がある、と思われる。

また、意外だったのは、自己イメージの男女差である。この論文の大前提として、女性のほうが男性よりも女性的な自己イメージを持っている、という仮定がおかれている。ところが、この論文で用いられている3つの自己イメージの指標のうち、男女の間で平均値に 5% 水準で有意差があったのは、emotional (感情的だ)という自己イメージだけで、他の2つは、10% 水準で差がある程度である。サンプル・サイズは女性が 465、男性が 266 で、男女差は非常に小さいというべきである( unsystematic と work with people の男女の平均値の差は 0.2)。つまり、これらの3つの自己イメージが、性別職域分離を引き起こす原因とは考えにくい。

とはいえ、分析結果はいろいろ興味深く、学ぶことの多い論文であった。性役割意識やステレオタイプもあまり女性的な進路に影響を及ぼしておらず、米国が特殊なのか、このサンプルが特殊なのか、などなど考えさせられた。

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