Theoretical Sociology

太郎丸博のブログです。研究ノートや雑感などを掲載しています。(このページは太郎丸が自主的に運営しています。京都大学の公式ページではありません。)
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『非逐次モデル:内生性、双方向関係、フィードバック・ループ』 Paxton, et. al. 2011

Pamela M. Paxton, John R. Hipp and Sandra Marquart-Pyatt, 2011, Nonrecursive Models: Endogeneity, Reciprocal Relationships, and Feedback Loops, SAGE.
非逐次モデルの概説書。社会学では双方向の因果関係が考えられるような場合がしばしばある。例えば、ジェンダー平等主義的な価値観を持つ女性はフルタイムの仕事をしやすいかもしれないが、逆にフルタイムの仕事をすることでジェンダー平等主義的な価値観が強まる(あるいは逆に弱まる)かもしれない。このような双方向の因果関係を通常の回帰分析やロジスティック回帰分析で推定すると、バイアスが生じることが知られている。これは回帰分析の用語でいえば、誤差項と説明変数のあいだに相関が生じてしまうことに起因する。例えば、ジェンダー平等主義的な価値観 (Y) を、職業威信スコア (X) で予測するようなモデルを考えてみよう。このような線形回帰モデルは、
Y = a + b X + E
と書ける。ただし E は誤差項。通常の最小二乗法 (OLS) では、X と E が独立であるという条件のもとで、バイアスのないパラメータ推定値が得られる(正確にはパラメータの推定値の期待値が真のパラメータの値と一致する)のであるが、X が Y から影響を受けている場合、X と E は相関してしまう。直感的にいえば、E は Y に影響を与えているが、Y は X に影響を与えているので、E は Y を媒介にして X に間接的な影響をあたえるのである。とうぜん E から Y、Y から X への影響力が強いほど、OLS の推定値はバイアスを含んだものになる(正確にはパラメータ推定値の期待値と真のパラメータの値の乖離が大きくなる)。

このように説明変数と誤差項のあいだに相関が生じている状態を内生性 (endogeneity) という。内生性の原因は双方向の因果関係だけではないし、書名になっている「非逐次モデル」という後も、因果のループだけでなく、誤差相関つきのモデルも含む概念であるが、本書で扱われているのは、双方向の因果関係、および3つ以上の変数の間の因果のループ (例えば A → B → C → A → .... のような)だけであり、例として扱われているのは2変数のあいだの双方向の因果関係だけである。具体的には、2段階最小二乗法 (2SLS) と3段階最小二乗法 (3SLS)、および最尤法による構造方程式モデル (SEM) が扱われているが、これらは推定法が違うだけで、モデルそのものに違いがあるわけではない。著者たちは一貫して理論の重要性を強調しており、それは特に操作変数 (instrumental variable) の選定においてそうである。これは SEM の標準的なテキストと同様といえよう。プログラム例は主に Stata 、SAS も少し紹介してある。

記述は決してわかりやすいとはいえず、何を言っているかわからない部分もけっこうあったが、わかる部分もそこそこあった。内生性があるかどうかの検定や操作変数の適切性に関する検定など、事後的な診断のための方法がいろいろ紹介してあるのは勉強になった。また、変数の間接効果の検定/区間推定についても触れてある(Sobel のデルタ法とブートストラップ)。わからない部分はさっさとあきらめて原典にあたればいいわけで、それなりに役に立つ本だと思う。惜しむらくは、カテゴリカル変数が内生変数の場合の対応法についてまったく触れられていない点である。SEM でポリコリック相関係数を使えばカテゴリカル変数が内生変数の場合にも対応できるはずだが、本当に連続変数の場合と同じように理解していいのか、など知りたいところである。

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