Theoretical Sociology

太郎丸博のブログです。研究ノートや雑感などを掲載しています。(このページは太郎丸が自主的に運営しています。京都大学の公式ページではありません。)
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「社会移動における祖父母効果:イギリス出生コーホート研究からの証拠」 Chan and Boliver 2013

Tak Wing Chan and Vikki Boliver, 2013, "The Grandparents Effect in Social Mobility: Evidence from British Birth Cohort Studies," American Sociological Review, Vol.78 No.4, pp.662-678.
親世代の階級をコントロールしても祖父の階級と子の階級に関連があるか分析した論文。世代間移動の研究では親と子の階級の関連を分析するのが一般的であるが、祖父母と孫の階級の関連もずいぶん以前から検討されてはいた。親子の階級には強い関連があるので、
祖父母階級 → 親階級 → 孫階級
といった親を媒介した間接的な因果関係があるのは自明である。問題は、親の階級をコントロールしても祖父母の階級が孫の階級に直接的な効果を及ぼしているかどうかである。親だけでなく祖父母も高い階級的な地位にあれば、それだけ孫は良い教育を受け、よい仕事につける(つまり高い階級的な地位に到達できる)確率が高まるというのは、ありそうな話である。しかし、Chan and Boliver によれば、これまでの分析結果はこの仮説を支持するものもあれば、否定するものもあり、あまりはっきりした結論は出ていないそうである。そこで、イギリスの 3 つのパネル調査データを統合して、三世代社会移動を分析している。

データは

  • 母方の祖父の階級、
  • 親の階級(父か母か明記されていないが、父母揃っていれば地位の高い方、といった操作化ではないかと思う)、
  • 孫(男女別に分析)の階級、
で、これらの関係がメインテーマである。孫から見たとき祖父母は父方と母方の祖父母がいるが、この分析で母方の祖父が使われているのは、このデータは母への面接から得ているので、父方よりも母方の祖父の情報のほうが正確であるし、進化生物学的には、母系のほうが血のつながりがはっきりするので、母方の祖父母の方が孫に援助しやすい(ので、祖父母と孫の階級の関連が出やすいと期待できる)からであるという。

階級は イギリスの旧階級図式 (UK Register General Social Class Scheme) をもとに、以下の4つに分類されている。

  1. I + II: 専門/管理
  2. IIIn: 熟練ノンマニュアル (skilled non-manual)
  3. IIIm: 熟練マニュアル
  4. IV + V: 非熟練マニュアル
非熟練ノンマニュアルは無いのか、などよくわからない部分はあるが、この分類が3世代すべての階級について一貫して用いられている。男女別に 祖父 (G) X 親 (P) X 孫 (C) の三世代移動表を階層的対数線形モデルで分析すると、[GP][PC] よりも [GP][PC][GC] のほうが BIC を基準にしてもフィッティングがよい。[GC] の関連に関しては均一連関 (uniform association) モデル (階級の順序は上で言及した順番) で推定しても、逸脱度はほとんど増大しないので、BIC はさらに小さくなる。[GC] の関連に関しては条件付き独立モデルも推定されているが、均一連関モデルのほうが顕著にフィッティングがよい。この結果は孫が男でも女でも同じである。まとめると、親の階級をコントロールしても祖父と孫の階級の間には直接的な関連があり、均一連関モデルのフィッティングがよい。さらに孫の階級を従属変数として順序ロジット分析もなされているが、やはり親の階級、収入、教育年数、持ち家ダミーをコントロールしても祖父の階級は孫の階級を有意に高めるという結果である。祖父と孫の階級の関連の強さは、上の対数線形モデルだと隣接する階級同士だととオッズ比が 1.1 倍、最上位と最下位の階級だと 2.7 倍程度(男女とも)なので、無視できない大きさといえる(ただし、標準誤差は表記されていないので誤差の大きさは不明)。このような直接的な関連は、順序ロジットでは半分程度に下がる。

祖父母の孫に対する影響という問題は、平均寿命が伸び子供数が少なくなった現代においては、昔よりも強まっている可能性が考えられる。子供の数が多いと孫の数はさらに多くなるので、祖父母のもっている資源は分散してしまい、有意な効果がなくなってしまっていた可能性がある。また、孫が成人する前に祖父母が死んでしまえば、直接的な効果は生じにくいだろう。この論文では特に出生コーホートによって祖父母の効果が異なるという結果は出ていないが、少子高齢化が祖父母の効果を生み出している可能性は、検討すべき重要な問題と思われる。

ただ、分析に関してはつっこみどころがある。私が気になったのは階級分類で、4つにしか分類されていない。サンプルサイズが 1000 ちょっとなので仕方がないのだが、専門職や農業の閉鎖性はよく知られているので、本当は条件付き独立モデルが正しいにもかかわらず、これらの職業カテゴリをほかの職業とくっつけてしまったせいで、祖父母と孫の間に擬似的な直接関係が生じてしまっている可能性もある。例えば、親が専門職の場合、親が管理職の場合よりも、子は専門/管理に到達しやすいとする。しかし、分析では専門と管理を同じカテゴリにまとめてしまっているため、この差が祖父の階級の効果として現れてしまう(なぜなら、親が専門職の場合、管理職である場合よりも祖父が専門/管理である確率が高いから)。末尾にそのような架空のデータと分析の例を R スクリプトで作ってみたので、興味のある人はコピペして、本当にそうなることを確認してほしい。

# 4階級の推移確率行列
tp<- matrix(c(.8, .1, .07, .03,
         .1, .6, .2,  .1,
         .05, .3, .5, .15,
         .02, .08, .2, .7), 4, 4, byrow=T)

G <- gl(4, 16) # 祖父階級
P <- gl(4, 4, 64) # 親階級
C <- gl(4, 1, 64) # 孫階級
n.G <- rep(c(400, 800, 1200, 1600), each=16) # 祖父の周辺度数
p.GP <- rep(as.vector(t(tp)), each=4) # 祖父から親への推移確率
p.PC <- rep(as.vector(t(tp)), 4) # 親から孫への推移確率
d0 <- data.frame(G, P, C, p.GP, p.PC, n=round(n.G * p.GP * p.PC, 0)) # データをまとめたもの
head(d0, 20)

# 4階級で条件付き独立モデルの推定
loglin1 <- glm(n ~ G * P + P * C, data = d0, family = poisson)
summary(loglin1)

# 4階級で対連関モデルの推定
loglin2 <- update(loglin1, ~.+ G * C)
summary(loglin2)
anova(loglin1, loglin2) # 4階級図式で分析すれば条件付き独立モデルのほうがフィッティングがよい。

# 2階級に分類しなおした変数を作成
G2 <- G == 1 | G == 2
P2 <- P == 1 | P == 2
C2 <- C == 1 | C == 2

# 2階級モデルで条件付き独立モデルと対連関モデルの推定
loglin3 <- update(loglin1, ~ G2 * P2 + P2 * C2)
loglin4 <- update(loglin3, ~.+ G2 : C2)
summary(loglin4)

anova(loglin3, loglin4) # 2階級図式だと祖父と孫の関連が有意になる!

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