Theoretical Sociology

太郎丸博のブログです。研究ノートや雑感などを掲載しています。(このページは太郎丸が自主的に運営しています。京都大学の公式ページではありません。)
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公共領域における科学の政治化: 米国市民の科学への信頼 1974-2010

Gordon Gauchat, 2012, "Politicization of Science in the Public Sphere: A Study of Public Trust in the United States, 1974 to 2010," American Sociological Review, Vol.77 No.2, pp.167-187.
米国市民の科学への信頼がどのように変化したのか、政治的な党派別に分析した論文。米国では、タバコの有害性や二酸化炭素などのガスの地球温暖化効果をめぐって、かなり激しい論争がある。この中で科学者の示す知見に対して、かなり激しい批判があるそうである。科学に対する批判や不信が、部分的には無知に由来するというのは間違いないだろうが、科学を正しく理解してもらいさえすれば、科学への批判がなくなり、不信も消える、というわけではないのも明らかである。タバコにせよ地球温暖化ガスにせよ、これらの有害性を認めれば法的規制が正当化され、一部の(あるいは多くの?)企業が打撃を被ることは避けられない。これは一部の企業にとどまらず米国経済全体に影響を及ぼすかもしれない。それゆえ経済活動の自由と経済成長を重視するような政治的立場の人々や上記の企業の利害関係者は、科学的な証拠と対立することになる。というと言い過ぎだが、どうもそのような構図があるようである。また、前回の記事でも述べたように、保守的なプロテスタントの一部は進化論やビックバンを否定しており、彼らも科学に対して批判的である。さらに科学と技術の発展がもたらす社会の変化を嫌う人もいる。これらの政治的立場の人たちは新右翼 (New Right) とこの論文では呼ばれている。総じて現状維持を好み、科学的知見が示唆する変化の必要性を否定しようとする人々である。このような新右翼の登場と拡大が、米国の平均的な科学への信頼を低下させた、というのがこの論文で検証しようとする仮説である。言い換えれば、科学を以前よりも信頼しなくなっているのは右翼だけで、左翼や中道の平均的な科学への信頼は変化していない、という説が正しいかどうかが検証されている。

データは General Social Survey (GSS) 1972-2010 で、科学共同体 (the Scientific Community) を信頼するかどうかを 3件法(「とても信頼している」「ある程度は信頼している」「ほとんど信頼していない」)でたずねた結果が被説明変数である。政治的なイデオロギーは、保守 (conservative)、リベラル (liberal)、中道 (moderate) の3択である。以下の図は科学共同体を「とても信頼している」と答えた人の比率を、政治的イデオロギー別に示したものである (p.175 より転載)。

1974年時点では、中道だけがやや平均信頼度が低く、保守とリベラルは同程度に科学を信頼していたが、保守だけが次第に信頼度を下げていき、1998年ごろまでには中道と同じ程度の信頼度になってしまっている。この傾向は、関連する諸変数を統制しても同じであり、レーガン政権や G. W. ブッシュ政権が成立した後に特に大きな変化があったかどうかも検討されているが、これらの政権成立の前後で大きな変化があったのではなく、長期的に少しずつ変化があった(時代の線形の効果のほうが強く、レーガン政権後ダミーなどよりもあてはまりがよい)と結論付けられている。また、このような保守的な人々の科学への信頼の低下は、特に高学歴層で顕著である(学歴×政治イデオロギー×時代の交互作用効果がある)という主張もなされているが、モデルの適合度がこのような高次の交互作用を仮定していないモデルよりも悪いので、あまり信用できる結果とは言えまい。なお、比較のために同様の分析が政治に対する信頼(立法府、行政府、司法府に対する信頼を単純加算)に関してもなされているが、保守に関してのみ信頼が下がるということはなく、レーガン政権や G. W. ブッシュ政権後にはむしろ保守の政治への信頼は高まるという結果になっていた。

この科学の政治化という問題は、米国では科学への予算の削減とつながっており、我々研究者にとっては死活問題なので、とても興味深く思った。日本の場合、自民党政権だけでなく、民主党政権下でも大学の教育・研究予算は削減されているので、一概に保守のほうが科学に対して敵対的という印象は持っていない。しかし、近年の安倍政権の憲法学者の意見の無視や歴史学者の学説の否定などは、学問に対する極右からの挑戦とも言える。客観的事実や真理の探究は、特定の政治的な党派にとっては不都合な場合もあるだろうが、社会全体にとってはしばしば有益であるので、科学を特定の党派的な利害から守ることは重要であろう。日本の社会学では、むしろ科学者が政治家や官僚と結託して、社会に有害な技術(例えば原子力発電)を野放しにしていることが批判されることが多いが、安易な相対主義や科学全体への批判は諸刃の剣であり、私たち社会学者への信頼も容易に掘り崩してしまうことにも注意が必要だろう。

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