Theoretical Sociology

太郎丸博のブログです。研究ノートや雑感などを掲載しています。(このページは太郎丸が自主的に運営しています。京都大学の公式ページではありません。)
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「米国における科学の政治的文脈:科学的証拠に基づく政策と科学予算に関する世論の研究」 Gauchat 2015

Gordon Gauchat, 2015, "The Political Context of Science in the United States: Public Acceptance of Evidence-Based Policy and Science Funding," Social Forces, Vol.94 No.2, pp.723-746.
これまでの二つの記事(Gauchat 2012 の紹介O'Brien and Noy 2015 の紹介)で紹介したように、米国では保守派が科学に対して否定的な態度をとるようになってきているという説が出てきている。この論文も「保守 vs 科学」仮説の検証を主な目的としているが、以下の2つの点でひねりをきかせている。
  • 第一に、保守派の下位指標を 3つ導入して、多角的にどのような「保守」が科学に否定的なのかを明らかにしようとしている。米国では conservative vs liberal という対立がある程度存在しており、質問紙調査でも保守かリベラルかをストレートに問う尺度(この論文のデータでは 7点尺度)がよく用いられているようである。しかし、conservative の内実はいくつかの特徴からなり、それらと科学に対する態度の関係を検討することには意味があろう。この論文では、
    1. 宗教的な保守性、具体的には、biblical literalism (聖書を根拠に進化論やビッグバンを否定するような考え方)
    2. 権威主義(不確実性や変化を恐れ権威に従うことで社会秩序を維持しようとする態度)
    3. 新自由主義(政府の経済的な役割を効率的な市場の維持に限定し、所得の再分配や公共事業に反対する考え方)
    という保守の 3つの下位概念と科学に対する態度の関係が検討されている。
  • 第二に、このような政治的な保守とリベラルの態度の違いは、科学的知識がある程度ある人々の間で顕著になる、という仮説を提唱している。米国においても保守もリベラルも平均的にはかなり科学に対する信頼度は高い。しかし、科学的知識のある保守において、確信犯的に科学に対する批判的な態度が強い、という仮説である。逆に言えば、科学的な知識が乏しい層では、保守もリベラルも科学に対して同程度に肯定的ということである。

データは 2006, 2008, 2010, 2012 の Genral Social Survey (GSS) で、被説明変数は以下の 2 つの言明に対する賛否を問う 4 点尺度である。

  • 「科学は机上の空論なので (too concerned with theory and speculation)、私たちの実際の生活に影響する政府の具体的な政策を決めるのにはあまり役に立たない」
  • 「たとえ直接的な利益がなくても、私たちの知識を豊かにしてくれる科学は必要であり、連邦政府の予算で援助されるべきである」
順序ロジット・モデルに liberal vs conservative 尺度、科学的知識、biblical literalism, 権威主義、新自由主義の尺度すべて投入すると、交互作用効果をつけない場合、新自由主義の尺度はほとんど有意にならないが、残りの 尺度は仮説通りの有意な効果を示している。科学的知識と保守主義の指標の交互作用効果を見ると、liberal vs conservative 尺度は、2つの被説明変数の両方に関して有意になり、権威主義については、最初の被説明変数(科学は政策の役に立たない)についてだけ有意であった。biblical literalism と新自由主義はまったく有意でなかった。

つまり、新自由主義は科学と対立しないが、宗教的保守と権威主義は科学と対立し、それは特に科学的知識のある層で顕在化する、とでも解釈できようか。以前の記事で、科学的知識を重視すると企業の経済活動への規制を受け入れることになってしまうので、市場への規制を嫌う新自由主義者が科学に対して否定的になるという説を紹介したが、そのような説は、この論文の分析結果からは否定されたことになる。実感としては穏当な結果と思える。

テクニカルには、2 点問題を指摘しておく。

  • 第一に、交互作用効果がほんとうに仮説通りなのかどうかはもう少し慎重に考えたほうがよい。科学が政策に役立つかどうかに関しては、尤度比検定すると X2 = 15.3 (df = 4) で 1% 水準で有意なのだが、科学を連邦政府予算で支援すべきかどうかについては X2 = 5.2 (df = 4) で 有意ではない。これらの尤度比が独立に分布していると仮定して同時検定すると、X2 = 20.5 (df = 8) でやはり1% 水準で有意になるので、おそらく科学的知識とliberal vs conservative 尺度の交互作用効果が有意なのは間違いなかろうが、権威主義のほうは確信が持てない。Gauchat は仮説通りの分析結果みたいに書いているが、いいすぎだろう。
  • 第二に、標準化係数を表記しているのに、非標準化係数の標準誤差を併記するのはやめてほしい。標準誤差は推定した係数の誤差の大きさを示すもので、ふつうは有益な情報なのだが、係数を対数変換したり標準化するとそのままでは全く役に立たない。慣習に従ってアリバイ的に表記しているのだろうが、まったく無意味である。標準化係数の標準誤差をちゃんと表記してほしいものである(変数をあらかじめ標準化してから係数を推定すればよい)。また、交互作用効果の標準化係数の計算の仕方は複数ありうるので、どのように計算しているのかちゃんと示してほしい。意識変数は分散にあまり意味がないので、標準化するのはそれなりに理にかなっているが、数字の意味を十分考えずに機械的に分析結果をまとめているのは残念である。

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