Theoretical Sociology

太郎丸博のブログです。研究ノートや雑感などを掲載しています。(このページは太郎丸が自主的に運営しています。京都大学の公式ページではありません。)
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「政治イデオロギーが生産科学と再帰的科学への信頼に及ぼす影響」McCright et al. 2013

Aaron M McCright, Katherine Dentzman, Meghan Charters and Thomas Dietz, 2013, "The influence of political ideology on trust in science," Environmental Research Letters, Vol.8 No.4, pp.044029.
再帰的近代化論を下敷きにして、政治イデオロギーが科学への信頼に及ぼす影響は、科学のタイプによって異なるということを主張した論文。前期近代では科学の主要な社会への影響は、技術革新と生産性の向上にあったが、後期近代に入ると、自然破壊、薬害、のような科学技術のもたらす負の側面への反省が高まっていったと McCright らはいう。前期近代に典型的な技術革新と生産性の向上に貢献するタイプの科学を生産科学 (production science) 、後期近代に典型的な、生産科学が生態系や人間に及ぼす影響 (impact) を調べる科学をインパクト科学 (impact science) と McCright らは呼んでいる。インパクト科学は、科学の人間や生態系への影響を科学する、という意味で再帰的な科学とも言えるので、この記事のタイトルでは再帰的科学という語を使っている。

工業資本家にとっては、生産科学は有益であるが、インパクト科学は企業活動の規制を主張することがあるため、都合の悪い存在になる。工業資本家や彼らと利害を共有する人々、あるいは既存の資本主義的秩序の維持を望む人々は、政治的には保守派で、共和党支持者なので、保守は生産科学には肯定的でインパクト科学には否定的になる、というのがこの論文で検証する仮説である。

データは Amazon Mechanical Turk を通して募集された米国在住の成人で、回答者には 0.25ドルの謝礼が支払われている (N = 798)。Survey Monkey で回答を集めているようである。そのため 10代と 20代の回答者が多いらしく、10代を 1、20代を 2、... 80歳以上を 8 としたときの平均年齢は 2.59 となっている。全国平均よりも明らかにリベラル、無神論者が多い。主な被説明変数は、生産科学とインパクト科学への信頼度で、生産科学への信頼は以下のような科学者を信頼できるかを問う 5点尺度の合計点 (alpha = .82) である。

  • 新しい食品開発に取り組む食品科学者
  • 建築に用いる今よりも強度の高い化学合成物質を開発する産業科学者
  • 新しい油田の位置を特定する石油地質学者
  • その他 3 種類の科学者への信頼を問うている(合計 6 つの指標)
インパクト科学への信頼も生産科学への信頼と同様に 6 種類の科学者への信頼を問うて、加算している (alpha = .88)。以下はその例。
  • 新種の食品の健康への影響を研究する公衆衛生学者
  • 住宅建築に用いられる新しい化学合成物質による健康被害リスクを調べる疫学者
  • 大気中の温室効果ガスの量を測定する気象学者

これらを被説明変数にして、通常の回帰分析が行われている。分析結果を見ると、liberal vs conservative 尺度(7点尺度)は仮説通り、保守的であるほど生産科学に肯定的でインパクト科学に否定的、という結果になっているが、民主党支持か共和党支持か(7点尺度)は、保守的であるほどどちらのタイプの科学にも否定的(ただし生産科学のほうはギリギリ有意ではない)という結果で、おおむね仮説通りだが、別の解釈もできそうな感じで、いろいろエクスキューズが書いてあった。

仮説を導出する理論で苦しいのは、資本家=保守という前提がある点で、米国ではそんなにシンプルなんだろうか、という疑問は残った。また、分析結果を見ると世帯収入はまったく科学への信頼に影響を及ぼしておらず、仮説に反する結果である。さらに、サンプルの平均年齢は20歳代なので、資本主義的保守などほとんど含まれていないと思われる。保守派が生産科学には肯定的だがインパクト科学には否定的、という仮説そのものはもっともらしいと思うのだが、理屈はもう少しブラッシュアップする必要があるように感じた。ただ「科学」を一枚岩の存在ではなく、タイプによって分けて考えるという方向性には可能性を感じる。

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