Theoretical Sociology

太郎丸博のブログです。研究ノートや雑感などを掲載しています。(このページは太郎丸が自主的に運営しています。京都大学の公式ページではありません。)
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科学世論と教育、知識: 高学歴者の利害とポストモダニズムの影響 Bak 2001

Hee-Je Bak, 2001, "Education and Public Attitudes toward Science: Implications for the "Deficit Model" of Education and Support for Science and Technology," Social Science Quarterly, Vol.82 No.4, pp.779-795.
教育がどのように科学に対する態度に影響をおよぼすのか検討した論文。米国では無視できない規模で科学に対するバッシングがあり、どのような人々が科学に対して否定的な態度をとるのかは、科学者にとって重要な関心事である(以下の論文に関するこれまでの記事も参照. Gauchat 2015, McCright et al. 2013, Gauchat 2012, O'Brien and Noy 2015)。科学に関する無知が科学に対する否定的な態度を生み出す、という説は欠如モデル (deficit model) と呼ばれ、多くの研究によって繰り返し確認されてきた。科学的知識に関する簡単なテストの点数や学歴と科学に対する態度の間には相関があり、欠如モデルを支持する結果として解釈されてきたが、Bak はこの解釈に異を唱える。学歴は確かに科学的知識と相関するだろうが、高学歴者ほど科学を支持しやすいのは、単に知識があるからだけではなく、高学歴者ほど科学の恩恵を受けやすいからではないか、と Bak はいう。科学や技術が発展して生産性が拡大したり、今までできなかったことができるようになることはあり、間接的には社会全体に恩恵が及ぶことも多い。しかし、例えば農業技術が発展したときその恩恵を被るのは、低学歴の農業労働者ではなく、その技術を活用できる高学歴の農場経営者や、その技術開発に携わった大企業である。医療技術の発展は長期的には低学歴の病人にも恩恵をもたらすだろうが、そのような最新で高額の医療技術にアクセスできるのは、高学歴で経済的にも豊かな病人である。つまり、知識の量や質が同じでも、高学歴者のほうが科学から恩恵を受けやすいから科学を支持するという仮説である。低学歴者は科学から疎外されている、とでもいえようか。

また、すべての教育や知識が科学に対する支持を高めるわけではないかもしれないと Bak は指摘する。科学的知識の社会学 (Sociology of Scientific Knowledge: SSK) をはじめとした相対主義的な科学論は、科学的知識の客観性や妥当性に対して激しい批判を行った。このような相対主義的な教育を受ければむしろ科学に対する支持は弱まるかもしれない。

そこで、National Science Foundation がほぼ隔年で行っている Public Attitudes towards Science and Technology という調査のデータ(1988-1997 の 5 年分) を使って上の仮説を検証している。被説明変数は科学に対する肯定的な態度で 8 つの 5 点尺度を加算したものである。科学的知識は 13 項目のクイズの点数で、 Yes or No の2択で答えるかたちである。短回帰分析の結果を見ると、学歴よりも科学的知識のほうが科学肯定度に対して強い影響力を与えている(決定係数が大きい)。両者を同時にモデルに投入してもどちらも有意で、これは年齢、性別、居住地、調査年をモデルに投入しても同じである。

大学での専攻分野を理工系、人文系、社会科学系、その他に分類してモデルに投入した分析も行ったが、専攻分野によって科学肯定度の違いは見られなかった。ちなみに、女性、高齢者、地方居住者ほど科学に対して否定的であるが、これらの効果は学歴や科学的知識を統制すると有意ではなくなるので、知識や学歴に媒介されているということである。

また、科学技術一般ではなく、宇宙開発、遺伝子工学、原子力発電といった、その是非が論争になる特定の分野に対する肯定度を被説明変数として同様の分析をすると、宇宙開発と遺伝子工学に関しては学歴も科学的知識も有意に肯定度を高めるが、原子力に関してはどちらも有意でなかった。性別は一貫して有意であった(女性のほうが否定的)。

以上のような結果から高学歴者が科学を支持するのは、単に知識があるからではない、と Bak は結論付けているが、13項目程度のテスト(しかも○×式なのでランダムに回答しても50点程度はとれる!)で科学的知識が正確に測定できるとは到底思えないので、うまく測定できていない部分が学歴の効果として表れている、という解釈は十分可能であろう。もちろん Bak が主張するように、知識には還元できないような効果が学歴にはあるのかもしれないが、Bak が示唆している解釈では、高学歴者が科学から恩恵を得られるのは、彼らが高学歴者であるからではなく、資本家などの経済エリートだからである。つまり、所属階級や収入のほうが本質的だという解釈になっているので、学歴に固有の効果があるという仮説になっていないのである。それなら収入や職業、資産に関する変数をモデルに投入すればよいと思うのだが、他の研究の分析結果を見ると収入や職業はあまり有意な効果を持っていないので、学歴の固有の効果を説明する仮説を何か考えたほうがいいだろう。

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