Theoretical Sociology

太郎丸博のブログです。研究ノートや雑感などを掲載しています。(このページは太郎丸が自主的に運営しています。京都大学の公式ページではありません。)
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「科学に対する態度の国際比較:進歩・リスク・経済発展」Price and Peterson 2016

Anne M Price and Lindsey P Peterson, 2016, "Scientific progress, risk, and development: Explaining attitudes toward science cross-nationally," International Sociology, Vol.31 No.1, pp.57-80.
どんな人/国が科学に対して否定的なのかを分析した論文。平均的には一般の人々の科学に対する信頼は高いと言っていいいが、近年、科学に対する信頼の低下傾向が見られている。こういった傾向が強まれば共和党政権下の米国のように科学関連予算はカットされ、科学の発展にはマイナスの影響が生じると(主に研究者の間で)懸念されている。それゆえ、どのような人/社会が、科学に対して否定的なのかは様々な分野の研究者にとって重要な関心事である。

Price and Peterson が主に依拠しているのは、ベックのリスク社会論で、 近代化が進み、第一の近代から第二の近代へと移行していくと、再帰性の高まりによって人間が生み出すリスクの認知が高まるという。再帰性とは人間社会が人間社会の有様を観察/モニタリングし、人間の様々な活動が地球環境や人間自身に対してどのような影響を及ぼしているのか、知ろうとすることである。このような再帰性の高まりが科学の負の側面(地球環境や人間自身に悪い影響をおよぼすような技術を作り出すこと)の認識につながるというわけである。このような再帰性は近代化の進展とともに強まると考えられるが、この論文では、以下の 4つが再帰的近代化の程度の指標として用いられている。

  1. 一人あたり GDP、
  2. 高等教育進学率、
  3. インターネット普及率、
  4. 乳幼児死亡率

データは World Values Survey 6 (2010-2014) で、33〜49カ国分のデータが用いられている(国レベルの変数に欠損値がある変数を使うと国の数がへる)。マルチレベル・モデルが用いられており、被説明変数は科学に対する態度を尋ねる3つの変数を単純に足し合わせたか、因子分析して因子得点を計算したもの(どちらなのかは不明、たぶん足している)。個人レベルの説明変数は定番の社会人口学的変数の他に、以下の様なものが投入されている。

  1. 社会リベラリズム:詳細は不明だが反権威主義とジェンダー平等主義と民主的な政治システムに対する評価を総合したような変数。
  2. 政治的位置:これも明示されていないのだが、10段階で conservative/right か liberal/left かを評価したものだと想像する。これに関しては二乗項もモデルに投入されている。
  3. 宗教性:お祈りの頻度、神や宗教が自分お生活でどの程度重要かなどの質問項目を総合したもの。
  4. 脱物質主義:イングルハートの有名なあれ。ただ 0〜5 の間の値をとるというのだが、どういうふうに作っているのかはよく知らない。
  5. その他:過去1年間に食べ物に困ったことがあるか、薬がなくて困ったことがあるか、どんなメディアを利用しているか、といった変数も投入されている。

分析の結果、乳幼児死亡率が低い国ほど科学に否定的で、5% 水準で有意。高等教育進学率とインターネット普及率は 10%水準だが、いちおう、どちらも高くなるほど科学に対して否定的であった。一人あたり GDP は有意な効果を持たなかった。ただし、group mean centering なのか grand mean centering なのかも書かれておらず、個人レベルの効果がほんとうに「統制」されていると言えるのかは不明である。Price and Peterson はこれらの結果からリスク社会論の予測はおおむね支持されたと結論づけている。

紙幅の都合などあるであろうから仕方のない部分もあろうが、データの出典や測定に関する記述がいちじるしく雑で、どう解釈していいのかよくわからない部分が多かったのは残念。面白かったのは、日本の特殊性である。私はたまたまこの World Values Survey 6 の日本のデータを最近分析したのだが、個人レベルの変数の効果が、この論文で報告されているもの(つまり49カ国平均)といくつかの点で違っているのである。例えば、49カ国平均では高齢者のほうが科学に対して否定的だが、日本では若いほうが否定的。49カ国平均では自分をリベラル(左)と考える人ほど科学に対して否定的であるが、日本では真ん中辺りで最も否定的で、保守と革新の両方で肯定的(つまり U字型の関係)である。とはいえ、上述のように分析の手続きに関する記述が雑なので、私とはちがったやり方で分析しているために違った結果になった可能性もある。女性、低学歴の人、貧困な人、物質主義者で宗教的な人ほど科学に対して否定的という点は同じであった。

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