Theoretical Sociology

太郎丸博のブログです。研究ノートや雑感などを掲載しています。(このページは太郎丸が自主的に運営しています。京都大学の公式ページではありません。)
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経営手法の流行における共進化:コンサルタント主導の革新のエージェント・ベイスト・モデリング Strang et al. 2014

David Strang, Robert J. David and Saeed Akhlaghpour, 2014, "Coevolution in Management Fashion: An Agent-Based Model of Consultant-Driven Innovation," American Journal of Sociology, Vol.120 No.1, pp.226-264.
エージェント・ベイスト・モデル (ABM) で経営手法 (innovation) の流行を記述した論文。Strang, David and Saeed によれば、経営手法に流行があることはこれまでも繰り返し指摘されているが、流行を強調する場合、
  • そのような革新的な経営手法の採用は必ずしも合理的ではないこと、
  • そのような流行を主導しているのは、新しいファッションを採用する企業経営者であること、
が仮定されている(あるいは明確にそう主張されている)らしい。Strang らは、経営手法の流行を生み出す重要な担い手として、経営コンサルタントの存在を強調し、経営者もコンサルタントも弱い意味での合理性があると考える。そのような状況において、どのような流行が生じるのか、 ABM でシミュレーションしている。

モデルは、100人の経営者と100人のコンサルタントからなる不完備情報ゲームである。実際には、経営者の利益は

  • アドバイスを受けているコンサルタントの能力と、
  • 経営手法の良さと、
  • 撹乱要因(他の要因とは独立に正規分布する乱数)
を適当重み付けして足し合わせた値であるが、経営者はコンサルタントや経営手法の良さを知ることが出来ないし、自身の効用関数も正確には知らない。経営者が知っているのは、ある経営手法をとった企業の成功例(そのような企業の利益の最大値)と、コンサルタントの実績(彼女のクライアント企業の平均的な利益)だけである。経営者がどのような経営手法やコンサルタントを選ぶかは確率的に決まっているが、高い利益を上げている手法やコンサルタントほど選ばれる確率が高い。いっぽうコンサルタントも確率的に経営手法を選び、高い利益を上げている手法ほど選ばれやすいが、コンサルタントの利益は
クライアント数 × 自分の採用している手法を望んでいる経営者の数 ÷ 自分と同じ手法を売っているコンサルタントの数
である。経営手法のプールについては記述がないが、無限に存在し、その良さは正規分布する乱数か何かで決めているのだろう。よい経営手法ほど高い利益をあげる成功例を作りやすいので、とうぜんそのような手法を採用する企業は増える。それゆえ、その手法を提供するコンサルタントも増える。しかし、同じ手法を提供するコンサルタントが増えると、個々のコンサルタントの利益は低下するので、コンサルタントには別の新しい手法を採用するインセンティブが生じる。このモデルの中では、能力の高いコンサルタントほど新しい手法を採用しやすいと仮定されている(正確には過去の自分の実績と比べて現在の利益が低いと新しい手法を採用しやすくなるのだが、能力の高いコンサルタントは過去の実績もよいので、結局新しい手法を採用しやすくなる)ので、ある経営手法が流行しすぎると、有能なコンサルタントは新しい手法を採用するようになる。有能なコンサルタントは例え経営手法が良くなくても、自分の能力である程度は企業に利益をもたらすことができるが、その実績は経営手法の良さだと理解され(経営者はなぜ実績が高いのかそのメカニズムを知らないので)、新しい流行を生み出す、というわけである。こうして、弱い合理性をもった行為者のあいだでも流行は生じるというわけである。

私は流行についても経営についても素人なので、素朴な実感なのだが、やはり ABM はモデルの詳細についてわからないことが多いので、「そういう結論になるように作ったんでしょ?」という感慨は禁じ得ない。例えばこのモデルの中では経営者は経営手法に関しては最大の利益をあげた企業の情報だけを参照するが、なぜかコンサルタントに関しては平均的な実績を参照できる。このような一貫性のない仮定によって思い通りの結果を出しているのではないかという印象を受ける。また、本当にこのモデルで正しいのかどうか外的なデータによって確認できないので、「そういう考え方ができるのはわかるし、そういうことが起きることもあるかもしれないけど、どの程度一般化できるの?」とは思う。このモデルの肝は、有能なコンサルタントがいち早く流行から離脱して新しい流行を作り出す点にあるのだが、これは本当なのだろうか。洋服のファッションならそうかもしれないが、経営手法の場合、成功体験にとらわれて、新しい手法に乗り換えられない人も多いと思う。こういった反論は容易なので、けっきょくどの程度データにあてはまるのか、という視点が不可欠だが、データによるチェックは1事例の表面をなでただけで、まったく不十分である。

とはいえ、この経営手法の流行という問題には興味がある。というのは企業の新卒採用時の選考基準にも明らかに流行があり、本当に合理的な採用活動がなされているか疑問に感じることもあるからである。もちろん成功事例の模倣はあると思うが、新卒採用が企業にとって非常に重要な活動であることは経営者にも知られており、それなりに真剣に採用活動はなされているはずで、まったく非合理的な流行現象とも考えにくい。こういう問題を考える手がかりをこの論文は与えてくれていると言えよう。

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