Theoretical Sociology

太郎丸博のブログです。研究ノートや雑感などを掲載しています。(このページは太郎丸が自主的に運営しています。京都大学の公式ページではありません。)
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アカデミー賞狙いの報酬とリスク Rossman & Schilke 2014

Rossman, G. & O. Schilke, 2014, "Close, But No Cigar: The Bimodal Rewards to Prize-Seeking," American Sociological Review, Vol.79 No. 1 pp.86–108.
アカデミー賞を「ねらった」映画の実際の興行収入を分析した論文。映画や小説のように、賞をとった作品が多くの利益をあげ、とれなかった作品はまったく売れない、といった現象が起きるマーケットは珍しくない。それゆえ、このような賞の機能を分析することは、文化的生産物の流通や需要を考えるうえで重要である。Rossman と Schilke は、以下のような特徴を持つ賞に注目する。
  • 消費者は購入する財(この論文の場合なら見る映画)を決める際に、賞を参考にする
  • 賞が、財の売れ行き(映画の興行収入)に関して、顕著な非連続性を作り出す(賞を取れればバカ売れするが、とれなければまったく売れない)。
  • 賞の審査員にアピールしようとすると、一般消費者へのアピールは犠牲にせざるをえない。
こういったタイプの賞は、経験財 (experience goods) に関するものが多いという。経験財とは、財(やサービス)を購入する前には、その財から得られる効用が不明なもの(そしてほとんどの消費者はその財やサービスを2回以上購入することはないもの)のことである。映画や小説のように、見たり読んだりしなければその面白さを事前に知ることはできない財やサービスの場合、事前にその面白さを推し量るために、賞が参考にされるというのは当たり前のことであろう。

また、審査員の持つ知識や好みは一般消費者のそれとは大きく異なる場合がある。そのような場合、審査員から高い評価を得ようとすると、一般消費者の評価は得られないかもしれない。このようなタイプの賞をとるために、お金をはじめとしたさまざまな資源を投資することは、ハイリスク・ハイリターンな賭けになることは容易に想像がつくだろう。このような構造のゲームの典型が、タロックくじ (Tullock Lottery) である。タロックくじは以下のようなルールのくじである。くじの参加者 i は複数存在し、掛け金 xi を自由に決められる。くじの当選者は一人だけ(複数いてもいいが議論を単純化するために一人にしておく)で全員分の掛け金を総取りできる。当選確率は、全員の掛け金に占める自分の掛け金の比率である。i 以外の全員の掛け金の総和を X とすると、i の期待利得は、

である。つまり、掛け金をどんどん増やせば、くじで当選する確率は高まるが、はずれたときの損害が大きくなるので、それらが相殺しあって、いくらかけても期待値は変わらない。いっぽうこの賭けの分散は
であり、掛け金が大きくなるほどばらつきも大きくなる。つまり、利益が得られる場合と損失が生じる場合の差が大きくなる。Rossman and Schilke は、アカデミー賞もこのタロックくじと同じ構造を持っていると主張する。それゆえ、アカデミー賞が取れそうな作品を作っても、期待利得は上がらないし、賞にノミネートされなければ(賞を狙わなかった場合よりも)かえって利得は下がるという仮説をたてる。

データは 1985 年から 2009 年の間にロサンゼルスで公開された映画(アニメやドキュメンタリー、外国語の映画は除く)で、これらの映画の利益率(売り上げを予算額で割った値)が主な被説明変数である(売り上げと予算額がわからない映画もかなりあり、それがサンプルに歪みを与えている点に注意)。これを予測する主な説明変数は、それらの映画がアカデミー賞で何部門にノミネートされたかの対数のようなもの(正確には Inverse Hyperbolic sine で ) と、オスカー・アピール度である。オスカー・アピール度とは、映画のジャンルやキーワードが過去のオスカー映画にどの程度類似しているかや、封切の時期(年末に封切られるほどノミネートされやすい)、オスカー受賞経験のある監督などを使っているか、などで予測したオスカー・ノミネート部門数(の対数)である。映画のジャンルやキーワードで、ノミネート部門数を予測できるのか半信半疑であったが、確かに有意な効果がある。ちなみにホラー映画やファミリー向けの映画はノミネートされにくく、重厚な人間ドラマがノミネートされやすいらしい。このオスカー・アピール度だけで利益率の対数を予測する単回帰分析をすると、有意な効果がない。ところが、オスカーに実際にノミネートされた部門数(の対数のようなもの)をモデルに投入すると、部門数はもちろん正の有意な値を示すが、オスカー・アピール度は負の有意な値になる。つまり、仮説を支持する結果が得られている。

分析の細かいやり方については、いろいろ批判は可能だと思う。例えば被説明変数は、普通に考えれば利益率ではなく、純利益のはずだ。映画のプロデューサーは利率ではなく、利益の総額を最大化しようとするのが普通だろう。また、用いる変数の分散やレンジなど基礎的な統計が示されていないため、効果の大きさについて評価することができない。著者は、賞狙いがハイリスク・ハイリターンであることや、ノミネートされた作品とされなかった作品の間の格差の大きさを強調するのだが、本当に大きな格差があるのかどうかは分析結果からはよくわからない。

とはいえ、いろいろ興味深い点も多かった。私は、アカデミー賞は十分に大衆的な映画賞で、芸術的な観点などほとんど考慮されていないのかと思ったが、米国の大衆は私が思う以上に大衆的だということだろう。また、キーワードやジャンルといった単純なデータでそこそこノミネートを予測できるということにびっくりした。

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