Theoretical Sociology

太郎丸博のブログです。研究ノートや雑感などを掲載しています。(このページは太郎丸が自主的に運営しています。京都大学の公式ページではありません。)
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「セクシャルハラスメント、職場のジェンダー秩序、権力のパラドックス」McLaughlin et al. 2012

Heather McLaughlin, Christopher Uggen and Amy Blackstone, 2012, "Sexual Harassment, Workplace Authority, and the Paradox of Power," American Sociological Review, Vol.77 No.4, pp.625-647.
どのような状況でセクハラが起きやすいのか分析した論文で、しばらく American Sociological Review でダウンロード回数トップだった (5/1 現在で2位)。セクハラのターゲットとして、職場で弱い立場の人(非熟練で不安定で、最低の職階)が狙われやすいとする説がある一方で、むしろ女性なのに高い地位にある人や逆に男性なのに女性的にふるまう人が狙われるとする説がある。後者の仮説によれば、職場の伝統的ジェンダー秩序を乱す人が狙われやすいわけで、このような反動は男性が優位な職場で起きやすいと考えられる。

セクハラの被害者は女性が大多数(この論文のデータでは 6〜8 割程度)なので、上の 2つの仮説は概ね対立しているといえる。著者は後者の仮説(職場のジェンダー秩序を乱す人が狙われやすいとする説)に肩入れしており、その当否を検証している。データは 1988年にミネソタ州の St. Paul という町の公立中学に通っていた3年生を対象とするパネルデータである。もちいるのは、2003年と2004年のウェーブ(つまり対象者が29〜31歳ぐらいになった時の調査)のデータで、セクハラについて以下のような経験を(職場で?)したか尋ねている。

  1. 攻撃的な (offensive) 写真やポスター(を見せられたこと)
  2. にらまれたりジロジロ見られたりして不快になったこと
  3. セックスについて話しかけられたこと (attempts to discuss sex)
  4. 性に関するほのめかしや攻撃的な意見(を見聞きしたこと)
  5. 体に触れられて不快になったこと
  6. 断っても繰り返しディナーや飲みに行くよう誘われたこと
  7. 望まない性交渉を持つように誘われたこと
  8. 職場で有利に取り扱ってもらうのとひきかえに望まない性交渉を持つように持ちかけられたこと
従属変数は、2004年に、
  • 上記の 8 項目のうち一つでも経験したことがあるかどうか、
  • 経験した項目数
  • 上記の 8 項目をどれか経験しなおかつそれを経験した女性がその行為をセクハラとみなしているかどうか(女性のみのサンプルで分析)
である。セクハラに関しては、当事者がどう受け取っていようとある種の行動をセクハラと定義するようなアプローチと、当事者がその経験をセクハラとみなすかどうかで定義しようとするアプローチがあり、一長一短だと(私は)思うのだが、この論文では両方のアプローチを採用している。

主な説明変数は、以下の 3 つ。

  • 本人が部下を持っているか。
  • 本人の女性性 (femininity) 。単純に自分が男らしいか女らしいか5段階で評定してもらい、それをなぜか二値変数に変換して用いている。
  • 本人の職場の産業で働いている人に占める女性の比率。
また、統制変数として 2003年にセクハラを経験したかどうか(従属変数のラグ変数)を投入したモデルも検討されている。これは内生性を統制するためだと説明されているが、こんな中途半端な方法が適切なのかどうかは不明である。

分析の結果、男性については部下がいるかどうかはほとんどセクハラ経験とは関係ないのに対して、女性は部下がいるほうがセクハラを経験しやすいという傾向が示されている。これは上の3つのセクハラ指標のどれをとっても同じで、前年のセクハラ経験を統制しても一貫して有意な結果が示されている。また、女らしくない女性、男らしくない男性のほうがセクハラ経験をしやすい傾向が示されているが、一貫して有意になっているのは、「一つでもセクハラ経験があるか」を従属変数とした場合で、経験項目数はラグ変数を投入しない場合だけ有意、主観的にもセクハラとみなしているかどうかを従属変数とした場合は有意にならない。職場の産業の女性比は主観的にもセクハラとみなしているかどうかを従属変数とした場合だけ有意になっている。

McLaughlin, Uggen, and Blackstone はインタビュー結果の検討も合わせて、職場の伝統的ジェンダー秩序を乱す人が狙われやすいという説を支持している。セクハラ経験のストーリーは男性の私が読んでも胸くそ悪くなるようなもので、2004年の米国でも(というよりもむしろ、米国だからこそというべきか?)ひどいセクハラがなされていたことがわかる。セクハラの典型的なイメージとして、上司が部下の女性に性関係を迫るというものがあると思うが、実際には全セクハラの 1〜3 割程度で、同僚や部下からのセクハラのほうが多い(4〜5 割程度)という結果である。また顧客からのセクハラも少なからずあり、やはり上司からのセクハラと同じかそれ以上になっている。

論文のタイトルの Paradox of Power というのは、出世して職階が上がれば職場での権力は増すはずであるが、それにもかかわらず女性の場合はむしろセクハラの被害にあいやすくなるから、パラドックスだという話なのだろう。データが 30歳前後の男女に限定されているので、もうちょっと幅広いサンプルで検証したいという気はする。また、男女をあわせたサンプルで、一部の変数だけ性別との交互作用をとるというやり方で分析しているのだが、普通に考えれば男女でかなり違った結果になると思うので、男女別で分析した結果も見たいところである。とはいえ、セクハラに関しては事例の紹介と、「誰でも被害者になりうる」といった間違ってはいないが学問的には安易な主張をよく聞くので、こういう研究は高く評価したい。

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