Theoretical Sociology

太郎丸博のブログです。研究ノートや雑感などを掲載しています。(このページは太郎丸が自主的に運営しています。京都大学の公式ページではありません。)
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「正社員と非正社員の代替・補完関係に関する計量分析」(山口 2011)

山口 雅生, 2011, 「正社員と非正社員の代替・補完関係に関する計量分析」『日本経済研究』 (64): 27-55.
正社員と非正社員の代替性/相補性について分析した論文。私には前回の原 (2003) よりだいぶわかりやすかった。が、これも経済学で私の専門外なので、以下の記述には、とんでもない間違いが含まれている可能性あり。

ここでいう正社員と非正社員の代替の弾力性とは、両者の価格(賃金)比率によって両者の要素比率(つまり正社員と非正社員の数の比率)がどう変化するかを見るための指標である (p.32)。例えば、ある会社において正社員の賃金が変わらず、非正社員の賃金が何らかのシステム外的な要因によって低下したときに、正社員の数と非正社員の数の比率がどう変化するかを示す。それゆえ、この代替の弾力性が正の値を示すとき、非正社員の賃金が下落すると、非正社員数の比率が高まる。代替の弾力性が負の場合、非正社員の賃金が下落すると、非正社員数の比率も下がる。このような代替の弾力性にはいくつかの定義がある。

2005年と2006年の有価証券報告書をデータとして用い、正社員と非正社員の代替の弾力性を推定すると、検討した4つの弾力性の指標すべてで正の値を示す。これは産業別や企業規模別で推定しても概ね同じ結果で、頑健性を示している。ただし、2005 年と 2006 年を比較すると、代替の弾力性は小さくなっている。前回の原 (2003)とは正反対の結果であるが、原は Hicks の補完の偏弾力性しか示しておらず、Allen や Morishima など他の指標を使えば、原のデータでも補完の弾力性は正の値を示すという。

経済学らしい理屈なだけに、社会学者の私には素直に飲み込めない前提をおいた議論になっている。企業は利潤を最大化するという前提のもとに弾力性は推定されているのだが、それが私には疑わしい。企業は利潤以外にもいろいろ大事なものを持っているので、どの程度、利潤最大化の仮定が現実的なのか、私にはわからない(ので、案外現実的な仮定なのかもしれないが)。正社員と非正社員のあいだにある程度代替性があるという主な主張は直感的にありそうな話で、特に異論はないのだが、例によって「代替性があるから、近年正社員と非正社員が置き換えられて、非正社員数の比率が高まった」、という主張へと議論が飛躍していくのにはついていけない。仮に代替性があるのが原因ならば、以下の様な仮説が考えられる。

  • 代替の弾力性は歴史的にあまり変化しておらず、非正社員の相対賃金が下落したから置き換えが進み、非正社員数の比率が高まったという可能性がまず考えられる。しかし、そのようなデータは示されていない。そもそも代替性は時系列で変化するという前提である。実際、代替の弾力性は2005年から2006年にかけて半分近くに下落しているのだが、私の常識では到底信じられない大きな変化である。代替性はふつう生産技術によって決定されると言われているようなので、それが 1年間のあいだにあれほど劇的に変化するとは思えない。仮にそれほど激しく代替の弾力性が変化するのならば、たった 2時点の推定値から過去の非正規雇用増加の原因を推測するのには無理があろう。
  • 第二に、非正社員の相対賃金は概ね安定しているが、生産技術に変化があり、生産関数のパラメータの値が変化したせいで利潤を最大化する非正社員数の比率が高まったとも考えられる。しかし、上で述べたように、このことを示す証拠も示されていない。
分析結果は非常に興味深くいろいろ勉強になったが、クロスセクショナルな代替性の分析結果で時系列的な変化を説明するのはやはり無理があろう。

ところで、この代替性の分析では、非正社員の相対賃金はシステム外在的に決まる、外生変数として扱われているのだが、主流派経済学では労働力需要と賃金は相互依存的に決まる(つまりどちらも内生変数)とされていると思う。2つの理論は矛盾なく一つの枠組みの中に収まるものなのだろうか。収まるのかもしれないが、専門家がどう考えているのか興味深い。

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