Theoretical Sociology

太郎丸博のブログです。研究ノートや雑感などを掲載しています。(このページは太郎丸が自主的に運営しています。京都大学の公式ページではありません。)
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「正規従業員の雇用と非正規労働の増加:1990年代の大型小売業を対象に」(宮本・中田 2002)

宮本 大・中田 喜文, 2002, 「正規従業員の雇用と非正規労働の増加:1990年代の大型小売業を対象に」玄田 有史・中田 喜文 (編)『リストラと転職のメカニズム』東洋経済新報社, pp.81-102.
1000人以上の正規従業員を雇っている主要な百貨店とスーパー21社を対象として、正規従業員の増減を分析した論文。正規従業員が削減されたかどうかを示すダミー変数を以下の諸変数に回帰させてプロビット分析している。
  1. 正規従業員の賃金の変化
  2. 非正規従業員の賃金の変化
  3. 非正規従業員比率の変化(一期前)
  4. 売上高成長率
  5. 景気後退期ダミー
データは 1987〜1999 年の 13 年分の上記 21 社のパネル・データであるが、プロビット分析の際に、単純なプール・データで分析がなされているのか、それとも固定効果モデルの類が用いられているのかは不明。分析の結果、正規従業員の賃金が増加すると、正規従業員は削減されやすくなるという傾向が示されているが、なぜか非正規従業員の賃金にはあまり反応していない(非正規の賃金は、賃金センサスの産業平均を用いているので、推定値はゆがんでいる可能性が高い)。非正規従業員比率の変化も 1987〜1993 年のスーパー以外は有意な効果を持たない。ただし、5%以上の正規従業員削減ダミーを被説明変数にした場合は、非正規従業員比率の変化は負の有意な効果(つまり、非正規従業員比率が一期前に増えると、正社員が 5% 以上も削減されることは起きにくい)がある。

宮本・中田は正規従業員と非正規従業員が代替的なのか補完的なのか、といった問題設定をとっているわけではなく、どういう要因が正規従業員削減に結びつくのか、という問いを主要な研究課題にしている。結論的には売上の減少と正規従業員の賃金の高騰が主要な原因であるという、常識的に納得できる結論に落ち着いている。一期前の非正規の比率が高いと大規模削減は起きにくいという結果は、必ずしも両者が補完的であるという証拠にはならず、単に正規の削減と非正規の増員が同時になされているからかもしれないし、因果の向きが逆だからなのかもしれない。また、コブダグラス型の生産関数を仮定しているので、非正規雇用の賃金が下がれば正規雇用を雇うインセンティブが増えるはずなのだが、ほとんど有意になっていない点は興味深い。また事前に調整係数(最適な正規従業員数の増減率と実際の増減率の比率)の推定がなされており、最近になるほど調整係数が小さくなっている(つまり最適な増減率よりも実際の増減率のほうが小さくなっている)点も興味深く、これ以上の調整はコストが掛かり過ぎることを示唆していると解釈されている。あるいはそもそも最適な増減率の推定が間違っているのかもしれないが、それいをいいだすときりがないかもしれない。

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