Theoretical Sociology

太郎丸博のブログです。研究ノートや雑感などを掲載しています。(このページは太郎丸が自主的に運営しています。京都大学の公式ページではありません。)
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「パートタイム雇用の拡大はフルタイムの雇用を減らしているのか」(石原 2003)

石原 真三子, 2003, 「パートタイム雇用の拡大はフルタイムの雇用を減らしているのか」『日本労働研究雑誌』45 (9)日本労働研究機構: 4-16.
どのような企業でフルタイム雇用が減少しているのか分析した論文。非正規雇用が増加して正規雇用が減少するといった現象は時系列データで見るとある程度は確認できるので、正規雇用が非正規雇用に置き換えられた(非正規雇用が解雇されてその代わりに非正規雇用が採用された)ことが、非正規雇用増加/正規雇用減少の原因と捉えられることは多い。しかし、アグリゲート・データで非正規雇用の増加と正規雇用の減少が観察されるからといって、個々の企業で上記のような解雇と採用がなされているとは限らない。正規労働者しか雇っていない会社は少なくないので、そういう企業で雇用が減少し、非正規労働者をたくさん雇っていた別の企業がさらにたくさん非正規労働者を増やしたということかもしれない。この場合、上記のような置き換えが起きているというわけではない。

そこで、1991〜2000年の雇用動向調査のデータを使って、どのような企業でフルタイム雇用が減少/増加しているのか分析している。企業単位のデータなので、雇用が増えた企業での増えた雇用数と、雇用が減った企業での減った雇用数をそれぞれ別個に集計することが可能であり、前者を雇用創出数、後者を雇用喪失数と呼んでおく。雇用創出数、雇用喪失数を前年の雇用総数で割った値はそれぞれ雇用創出率、雇用喪失率と呼ばれている。時系列で見ると、とうぜん雇用創出率が高い時期は、雇用喪失率は低い。問題はパートとフルタイムに分けた場合、パートの雇用創出数とフルタイムの雇用喪失数が相関するかどうかだが、なぜかそういう分析はまったくなされていない。そして、

  • パートの雇用が創出されフルタイムの雇用が喪失した企業の比率が全企業の 4〜6% 程度であること、
  • フルタイム雇用の喪失数のうち約半分程度がパートを雇っていない企業で起きていること、
が強調されている。

探索的な分析なので、ケチのつけようはいくらでもあると思うが、フルタイムとパートタイムが同一企業内で単純に置き換えられたというケースは、必ずしも多くはないという指摘は覚えておいていいように思う。ただし、石原自身も指摘しているようにフルタイム=正規雇用、パートタイム=非正規雇用ではないので、正規/非正規というカテゴリで分析すれば、もっと違った結果になる可能性はある。また、後半は雇用創出があったかなかったか、といったカテゴリカルな分析がなされており、創出数/率、喪失数/率、といった情報はしばしば捨象されているので、誤った印象を読者に与えている可能性はある。フルタイム雇用喪失のうち半分がパートを雇っていない企業だという指摘も、全企業のうち46〜52% 程度はパートを雇っていないのだから、フルタイム雇用喪失は、パートを雇っている企業でも雇っていない企業でも同程度の確率で生じている、といった解釈も示しておくのが適切であろう。

さらに言えば、私の実感としては、同一企業内で正規雇用は減少していないが、実質的には置き換えが進んでいるようなケースは結構あるのではないかと思う。例えば、ある企業が新しく店舗を増やす際に、これまでは各店舗に二人正社員を配置していたが、新店舗には既存店舗から一人正社員を移動させ、既存店舗には正社員の増員を行わず、非正社員にその代わりをさせるようなケースである。とはいえ、繰り返しになるが、単純に内部ででフルタイム解雇&パートタイム採用が増えた企業は意外と少ないというポイントは正しいと思われる。

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