Theoretical Sociology

太郎丸博のブログです。研究ノートや雑感などを掲載しています。(このページは太郎丸が自主的に運営しています。京都大学の公式ページではありません。)
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「企業業績の不安定性と非正規労働: 企業パネルデータによる分析」(森川 2010)

森川 正之, 2010, 「企業業績の不安定性と非正規労働: 企業パネルデータによる分析」 RIETI Discussion Paper Series 10-J-023.
非正規雇用率と企業の繁忙の変化について分析した論文。売上や生産量の変化が大きい企業ほど、それに応じて従業員数を変化させる誘引が強い。それゆえ、解雇や採用のコストが比較的低い非正規雇用へのニーズが強まると考えられる。特に派遣や臨時雇用のように、あらかじめ雇用期間を明確に定めた雇用は雇い止めが簡単なので、売上や生産量の変化が大きい企業からのニーズが大きいと考えられる。逆に言えば、安定した企業では派遣や臨時雇用へのニーズが低いし、変化が小さいにもかかわらず臨時雇用や派遣を雇うことは、かえって生産性を下げると考えられる(言い換えれば変化が大きい企業は臨時雇用や派遣を雇ったほうが生産性が高い)。このような仮説は常識的に理解可能であるが、きちんとこれらの仮説を検証した論文は見たことがない。この論文ではこれらの仮説を検証している。

データは経済産業省「企業活動基本調査」の個票データ(1994〜2006 年)で、派遣労働者については2000年以降のデータが用いられている。「パート」とか「正社員」といった用語が用いられているが、これらは労働時間で客観的に分類されており、パートと呼称されていても正社員と同じ時間働いている人は「正社員」のほうにカテゴライズされてしまっている点に注意。臨時・日雇いも雇用期間が一ヶ月以内の者を指しているので、それ以上はカウントされていない点にも注意。せっかくのパネル・データなのだが、なぜか固定効果モデルやランダム効果モデルは用いられておらず、Pooled OLS がなされている。

雇用創出率や雇用喪失率がまず分析されているが、興味深かったのは、雇用数(の対数)の変化の分析である。差分をとって相関係数を計算しているので、固定効果モデルの推定とおなじになるはずである。フルタイマーとパートタイマーの変化は弱い負の相関 (-0.049〜 -0.091)で、一方が増えると他方が減る、つまり、代替関係がほんの少しだけあることが示唆されている。臨時・日雇いとフルタイマーの数の変化の相関は -0.02〜0.01 でほとんどゼロという印象(統計的に有意かどうかは不明)なのだが、派遣とフルタイマーの数の相関はプラスで、0.071〜0.349 である。

パート率、派遣社員率、臨時雇用率を従属変数として Pooled OLS で回帰分析すると、売上の変化の激しさ(ヴォラティリティ)は、パート率には影響しないが、派遣と臨時雇用の比率を高める効果があり、派遣のほうが効果が大きい。企業の生産性を従属変数として Pooled OLS で回帰分析すると、ヴォラティリティと三つの非正規比率変数の交互作用効果が正の有意な値を示しており、ボラティリティの高い企業ではパート率、派遣社員率、臨時雇用率が高いほど生産性が高いという結果である。ただし、なぜか三つの非正規比率の変数は同時にモデルに投入されておらず、別々に推定されているので、結果の解釈は微妙である(同時に投入してくれよ)。

ディスカッション・ペーパーなので、分析は雑な感じであるが、サンプルサイズが 10 万ぐらいあるので、たぶんもっと洗練された分析をしても結論は同じであろう。ヴォラティリティが高いほうが非正規の採用は合理的というのは、納得できるのだが、ヴォラティリティが中央値未満だと、臨時・日雇いを増やすとかえって生産性が低いという結果が出ていた。むやみに非正規雇用を増やすことはかえって企業の生産性を下げるという説もあるが、そのような議論にとっては追い風の結果である。産業の効果は統制されているが、どの程度細かく分類しているのかはよくわからないので、もう少し詳しく知りたいところである。

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